梔子
腐った根を張る枯れ枝に
色褪せた糸を括りつけて
あの子は首を吊った
遺書はない
乾いた唇を固く結び
すべてを飲み干して息を止める
内臓をどす黒く染め上げて
繰り返す思考に目が冴える深夜
消えればわかるだろうか
君は
思い知るだろうか
後ろめたさに影を踏まれて
わたしを抱いて生きてくれよ
わたしを
忘れないでくれよ
古びた井戸の水面に
一片の紫苑を浮かばせて
わたしは首を振った
嘘はない
綴じた瞼をそっとほどいて
すべてを吐き出して息をする
唇にほのかな紅をさして
花降る曇りに夢を見た夜明け
微笑むあなたの傍らで
いつまで微睡んでいられるだろう
眠るあの子に花を手向けて
あなたを抱いてうたを紡ぐよ
死人に口なし
詩人に梔子
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?