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里歩 Queen of Asia王座防衛!フィリピンの夜を沸かせる

PWR、Philipine Wrestling Revolutionにとって偉大な一夜を里歩は己の勝利で彩ってみせた。自身が持つQueen of Asia王座をかけて、フェイタル4ウェイマッチ、4人が同時に戦うという難しいルールで、団体初の女子だけのメインマッチを堂々締めてみせたのだ。

東南アジアにおけるプロレスの状況というのは、日本国内にもあまり深く入ってきていないのが現状だが、PWRについては度々目にする機会があった。

最初期は89年に設立、しかしまもなく休業した。2012年に今度はFacebookを通じて有志がレスリング会社の設立に動き出す。2013年に入り、日本のプロモーターを通じて、元WWEスターであるTajiriとフィリピン人の母を持つハーフの朱里が興行に参加し、今、PWRで活躍する選手の中には彼等の試合を見てレスラーというものに憧れたという人間が多くいるという。

2012年というタイミングはまさにWWEが最も盛り上がった"アティテュード"時代の終わり頃であり、全世界で放送されたWWEの影響によりそれに憧れたプロレス未開の地で見よう見まねながらも、自分達もやってみようという人間が増えた時代だ。PWRは何人かのレスラーをアメリカから招いて、実際のトレーニングを重ねた。初年2014年は2度、15年は6度のイベント開催を重ね、少しずつ動員を伸ばし、現在では50人近いレスラーを抱える団体となっている。

里歩が防衛したQueen of Asia王座というのは、SPWというシンガポールの団体がおそらく管理しているベルトであり、国境を跨いで、まさしくアジアを駆け巡るベルトと言えるだろう。里歩は昨年シンガポールベスト女性レスラーにも選ばれており、東南アジアにおける女性レスラーの象徴とも呼べる存在といって過言ではないはずだ。

現在、フィリピンは経済成長の真っ直中であり、米中貿易摩擦のような不安要素もあるが、イギリスの分析機関の発表でも2019年以降今後10年の成長率で見た時にインドに次ぐ成長率を期待されている国家でもある。そういう土地で、女子レスラーが注目される土壌が生まれようとしているのである。

過去の試合映像を見ると、非常に観客の熱が高く、選手の動きに熱狂をしてくるのが伝わってくる。一方、選手のコスチュームなどは日本でいうならば新木場1stリングで見るレベルの程よい力抜け感もあり、まだまだ良くなる要素を感じさせる。個人的にはかつてのDDTを思い出させる空気感だった。

先日、タイに渡ったDDT高木社長がタイでの興行可能性について触れていた。タイは里歩が所属していた我闘雲舞が積極的にプロレスの掘り起こしを行っていたし、今はAEWとDDTの同時契約をしている中澤マイケルがトレーナーとして仕事をしており、様々な繋がりもあることから、ビジネスチャンスを感じたらしい。

さらに、昨日マザーズ上場を果たした新日本プロレスの親会社であるブシロード木谷取締役は昨年3月まで3年半近くシンガポールへと移住し、ブシロードの持つ様々なコンテンツの拡販の可能性を探っていたし、WWEは今年のシンガポール公演の際に在住の選手に対し、入団審査テストを行っている事が明らかになっている。この前の記事でも書いた大きな団体による覇権争いの火はゆっくりと東南アジアにも広がっているのだ。

もし、ここでDDTが興行を行うのであれば、スターダムに続き、東京女子プロレスへの継続参戦も発表された里歩を据えて、まだ彼等が見た事のないプロレスを提供出来れば、大きなイニシアチブを取れる可能性がある。"世界のRiho"がまさしく世界を動かす鍵となる日が近付いている。

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