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アイドルが売れるためには 〜フィジカルとは身体言語である

前回の記事で、売れてるアイドルには理由がある、という話をした。今回はその中の1つ、【フィジカルを鍛えている】という話をしていこう。

黙って立っているだけでも分かる可愛さなら黙ってたって売れる。原宿の1つも歩けば声をかけられるだろう。だが、そうじゃないから、売れないのだ。フィジカルについて触れたのは大きく分けて2つの理由がある。

1.自分の体で表現をすることが出来るか

多くのアイドルがまずここでつまづく。振り付けをテンポに合わせて真似をするだけで終わっている。そんなこと凡人でも出来る時代が来ている。自分の動きの中で、可愛いを表現する時に腰の捻りや首の角度がどうなっていたら可愛いか、を突き詰めるためには自分の身体感覚を掴んでいなければならない。

演劇なら、題に沿った即興をすることで、自分の動きが表現として周りに伝わるかということを繰り返し答え合わせをして、身体と表現を結びつけていくが、こういうトレーニングをせずに踊ったところでそれは何も伝わらないのだ。

例えば、ダンスでいえば、ジャズダンスやWAACKINGでは女性的な身のこなしというのが技術として存在している。アイドルダンスにも同じように技術としての可愛らしさ、少女性があるにも関わらず、アイドルの可愛いは本人の持つ天性のものへの依存と考えられているように思う。

もちろん、曲中の感情というのは可愛いだけじゃない。勇ましさやかっこよさはもちろんだし、欅坂46の楽曲ならやるせなさや憤りのような複雑な感情表現を必要とする。そこに至るにはどうしたらそれを体の動き、コレオグラフで表現出来るのかということまで落とし込む必要がある。カウントに合わせて手や足を動かして、笑ってるだけのアイドルはただの有象無象に過ぎない。

例に出していうならば、乃木坂46といえば、大人っぽさや女性っぽさというのが印象的かと思う。割と初期の頃から普遍的なアイドル性、可愛さではなく、清楚さのようなところに主眼を置いたコレオになっていたが、特に特徴的なのは「インフルエンサー」かと思う。高速ダンスと囃されるこの曲だが、あの腕の動きはWAACKINGの技術がベースとなっている。

WAACKINGはゲイカルチャーの中で生まれ、当時、カイリー・ミノーグのような女性アーティストの曲中のポーズが分析され、より女性的に見えるダンスとして進化していったジャンルである。つまり、あのダンスは女性らしさを表現するためのコレオだったのである。

2.自分の体にあるエネルギーを高めて、使っていく。

踊るにしろ、歌うにしろ、重要なことは間違えないことよりも来たお客さんにどう思ってもらうかである。楽しそう=笑ってる、元気=飛び跳ねてる、というのは単純な図式でしかない。前述のどう動くのか、というのは、肉体の再現性の話だ。こちらは身体と精神の結びつきの話をしていく。

まず、基本的な概念として、何かを表現する、何かを受け取る、ということは【エネルギーの受け渡し】が発生していると考えてほしい。それが作用して、感情として楽しい、好きというものが芽生えると考えると、単純に顔がいいから推してもらえるというわけではないことが分かるだろう。

踊るにしても、振りが小さく、俯きがちで視線も定まらないような感じで、みなさん楽しんでますかと言われても、お前がまず楽しめてるのか?と不安になるはずだ。自分の中の”楽しい”という【エネルギー】が大きくなっていなければ、相手に【エネルギー】を渡したところで”楽しい”とは思ってもらえない、というわけだ。

歌で言うなら、腹式で歌うとかいうのも身体性を伴う話になるが、重要なのは【エネルギー】を伝えることである。それらの体を使って歌うということは、すなわち体の中のエネルギーを存分に使うための技術に他ならない。喉でしか歌っていない歌は音にはなっていても、自分の持っているエネルギーが100%届いているわけではない。

もっと細かく言うのであれば、煽る時もそうだ。なんとなくぼやっと腕を振り上げているだけの子がたまにいるが、あれはただの合図に過ぎない。腕を振り上げるという行為をして盛り上がってほしい、というのであれば、自分も【エネルギー】を高めて、相手にそれをぶつける必要がある。もしかしたら、ステージから前のめりになって腕を突き上げるかもしれないし、「かかってこいや」のような勇ましく敵対的な強い言葉を感情的に発することで、観客側の感情を揺さぶろうとするのかもしれない。それも【エネルギー】なのである。

では、【エネルギー】をどう高めていくのか、といえば、端的な話をするなら体力に置き換えるのが一番早い。我武者らに踊ればいいみたいな粗野な話をしてるのではないし、消極的なダンスと静かに踊る表現は別ものだ。同じ15分の持ち時間でも何も意識せずに流して踊る15分と、15分で動けなくなるぐらい集中して【エネルギー】を使う15分は全く異なる。その時に必要なのは持久力となる。

格闘家のトレーニングに置き換えると、試合時間が1ラウンド10分だとすれば、30分間休まずに攻め続けるような内容をインターバル5分で複数セット行う。これは10分を楽に戦うための持久力をつけるトレーニングだからだ。ダンスレッスンは振りの確認をするための練習だけではない、本番での持久力をつける練習でもある。毎日お仕事が入っていて、本番を繰り返しているうちに持久力がつくなんていうのは虫のいい話に過ぎない。

昨年、モーニング娘。がロッキンオンジャパンに出演した際に炎天下の中、ほぼMC無しで全力で踊り続け”体力オバケ”と話題になったが、本人達はその後のインタビューでも、「普段から2時間半とかのライブをやっているので、そこは気になりませんでした」と語っている。これは普段からやっている全国ツアーやハロコン、ツアーリハで追い込んでるからこそ、野外の1時間のライブを全力で駆け抜けれたというわけだ。格闘家のトレーニングと全く同じ理論なのである。

よく体力をつけるために走るという話があるが、走る持久力とステージで踊る持久力は厳密にはイコールではない。使う筋肉が違うし、運動強度も異なる。体力に自信が無いなら、限界までぶっ続けで踊る方が効率がいいし、その先を目指すなら、加圧トレーニングで高負荷状態を保ち、乳酸耐性の強い筋肉を作る事で踊っても疲れずにフルパワーが出せる持久力を鍛えるという考えも出来るが、そんなことやってるのは多分アプガくらいだろう。


天晴れ!原宿を見て、理由を思いついたという話をしたが、彼女達のパフォーマンスは止まっているところがまず無い。BPMの速い曲で、絶えずフォーメーションが変わり、メンバーがサークルで回るというような動きもある。しかも、これを20分程度のライブでやるならまだ分かるが、ワンマンの2時間近いライブでも動きを落とさずに出来るということは、若いからというだけではない。

コレオの細かい部分も、激しいだけではなく、めまぐるしく様々な表現を折り込みながら、観客に自分達よりも盛り上がれるのかと身体表現し、【エネルギー】をぶつけ合うようなパフォーマンスになっている、というところに半ば特化しているというところが、非常に強いと感じたのだ。


売れたいのであれば、ステージで見せる表現にこだわり、全力で立つべきなのである。

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lods

アイドルノススメ ~分断の時代~

アイドル冬の時代からグループアイドルの時代、日本の音楽史の変遷の中でアイドルというものが確立されていきます。様々な視点からアイドルという事象を掘り下げます。
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