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SEAdLINNNG、髪切りマッチは大事にして欲しい、と思う話

中島安里紗が彩羽匠を破り、BEYOND THE SEA王者となった。そこへ高橋奈七永が挑戦を表明。何を賭けるかと迫った中島に対し、奈七永は髪を賭けると発言。23日の川口大会で中島が奈七永に破れたことで、互いに敗北した場合、断髪を行う敗者髪切りマッチとして11月2日のカルッツかわさき大会が行われることが決定した。(ベルトが賭けられるかは、10.6新宿FACEで王座戦、中島vs笹村あやめの結果次第)

 

【ストーリー展開が速過ぎないか】

根本的にSEAdLINNNGのストーリーは所属選手3人を中心としたイザコザで出来ている。個性が強過ぎる3人が互いの主張をぶつけていくのが延々と続いているのだが、今回の挑戦表明、髪切りの決定までの時間があまりにも短いと感じたのである。

およそ1〜2ヶ月スパンで王座戦を転がしていくわけで、そこに向けてどう盛り上がりを作るのかは重要な話になる。そういう意味でインパクトのある話題をつくることは重要だが、団体規模、会場規模を考えて、髪切りマッチを行うのに妥当性を感じないのだ。

この半年、この両者の直接的なイザコザはあまりなく、会見で発言していた奈七永のところにキレた中島が乗り込んできたり、ラスエゴ結成のきっかけになった下品発言をしたぐらいで、表立った遺恨がない。

むしろ噛み付くべきなのは、今年に入ってからアクトレスガールズとの試合を延々と組まれてアンダードッグをやっていた中島の方で、奈七永の言う「中島が持っているとSEAdLINNNGが小さくなる」というのは客観的事実に基づいていない。

ましてや、この後、王座戦が行われるのにも関わらず、髪切りマッチという大ネタを先に出してしまうのは疑問なのである。

 

【髪切りマッチの重み】

女子プロレスにおいて髪切りマッチというのは一世一代の大勝負の印象がある。髪というのは女性の命でもあるわけで、その重みには変えられないものがあるからだ。それでも2010年辺りに様々な団体で髪切りマッチが乱発されて批判されたこともあった。

団体が違えば関係ないという意見も多いだろうし、事実、今のプロレス業界において複数の団体を追うというのはあまりないことだというのも承知の上なのだが、今年の髪切りマッチといえば、AAAの最大興行トリプレマニアで行われたブルー・デモン・Jr vs ドクトル・ワグナー・Jrの一戦は外せない。

レジェンドレスラー二人がマスクと髪の毛を互いに賭けた一戦、両者の息子達もセコンドについての凄惨な遺恨清算マッチの最後はコンクリート片での殴打で、ワグナーが敗北、髪の毛を失うこととなった。

メキシコにおいて髪の毛を失うということは、かつて犯罪者の目印だったという歴史があり、それを輸入する形で女子プロレスの髪切りマッチというのは日本の女子プロレスの歴史に組み込まれるようになったわけだ。

また女子で言えば、5月31日に行われたCMLLでのアマポーラ vs 小林香萌の一戦が印象的だ。

緑など印象的な髪色をしてきた小林が坊主にされるのは衝撃的だったが、日本に戻ってきてからも少しだけ伸ばした形をキープしており、精悍さは増した印象がある。

高橋と中島の髪切りマッチに批判があるわけではない、両者のこれまでの歴史を紐解いても、髪切りをしたことがないし、中島の茶髪を振り乱して戦う姿というのはデビュー以降、彼女の生意気さ、世代、キャラクターを象徴していると思う。高橋にとってもリスクがないわけではない。

だからこそ、もっと時間をかけて遺恨を作って、もうこれじゃないと解決出来ないようなシチュエーションがあってこその髪切りマッチではないだろうか。

例えば、先述したブルー・デモンとワグナーの一戦も、この1年に幾度もビックマッチで対戦を繰り返してきた結果としてトリプレマニアでの髪切りマッチとなったのだ。

本来、この二人がシングルでやるというだけでも十分お客さんが集まるべきだ。全女の最後の遺伝子とJの遺伝子を継ぐ者、互いに時代が違えばエースと呼ばれた両者。今は若い選手が時代の先端をなどと言われているが、キャリア的なことを考えても、この二人がトップに立つべきなのは間違いが無い。なのに、ただのシングル戦も飛ばして髪切りマッチをやるのは勿体なくないか。

 

【SEAdLINNNGが小さくなる】

高橋の発言を追うと、自分がベルトを持っていた方が団体の勢いが増す、という内容の話をよくする。正直、全女崩壊後、様々な場所を渡り歩いた結果、この団体が4年もったということは賞賛すべきことだとは思う。

今年の前半、後楽園ホールの動員が少し下がったものの、再び持ち直しているのも事実だ。それにラウェイなど様々な方向で外に向けて活動をしている自負もあるだろう。動画の配信も他団体とは違う観点で会見なども動画で見せるなど細かい配慮がされている部分は感じる。(南月の働きもあるだろうが)

しかし、所属の、まだ防衛戦もしていない王者に向かって、「小さくなる」という発言はまだ何も見せていない人間に対しての説得力がない。いや、自分が普段からやっていることが広くて大きいということを指しての指摘だろうが、ユニット単位で見た時にラスエゴの多様さ、他団体での動きの広さ然り、下田だけではなく中島の先輩である阿部幸江も下田と組むのを羨ましがるなど話題性を持っている。

中島が一貫して王座にこだわるものの、それを持って、業界に轟かせる様というのもなかなか見れていないのも事実ではあるし、なにせこの二人、見ているもの、考えているものが違い過ぎて、意見が合致したのを見たことがない。これがうまく上昇気流にのれば、もっと話題性があるのにともどかしい気持ちでいっぱいになるのである。

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