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差し迫ったG1最終決戦と思ったこと

この三連休で今年のG1 CLIMAXが終了する。過去最大人数、さらにアメリカで始まるという新たな試みのシリーズだったわけだが、この各ブロックの代表が決まる段階で非常にもつれて来た。

Aブロックは、飯伏、オカダの直接対決で、飯伏が勝てば同点、勝利をしているため飯伏が決勝進出となる。Bブロックは後藤、モクスリー、内藤、ジェイが同点で並んでいる。モクスリーが決勝に上がるには、後藤が敗北、内藤がジェイに勝利、自身も勝利する必要がある。(後藤が勝った場合、モクスリーは後藤に直接負けてるので決勝に行けない。内藤には勝利しているので、内藤が勝ったとしても、自分も勝っていれば自分が決勝に行ける)ここで、モクスリーがジュースとの一戦というのも面白い。敗退の決まっているジュースだが、前回の王座戦の借りを返せるのかという視点もある。

もし、飯伏がここでオカダを打ち破り、ジェイ辺りと決勝をやれば、新日本の新しい風景が見えて来るかもしれない。ここで空気読まずに優勝してしまう後藤というのも面白いが。

しかしだ、こう星取表を見ていると、少し残念に思う気持ちもある。現在の新日本の状況を考えると、外国人選手が増えている事は間違いない。本体にも鈴木軍にもBullet Clubにも大勢の外国人選手がいる。星取りで見た時にこの段階で決勝進出に絡んでいない選手が非常に多い事が気になっている。

新日本という会社の中で見た時に、どういう役割が求められているかという話でしかないのかも知れないが、選手の役割が固定されているのが透けてしまうと、マッチメイクにおけるダイナミズムを失いかねない。

例えば、ランス・アーチャーは今回シングルでどのような暴れっぷりを見せるのかと期待されていたが、結果全体で最下位の4点に留まっている。個々の試合では激しい試合を見せてはくれたが、レスラーとしての価値を考えた時にこの点は果たして妥当と言えるだろうか。

Aブロックは、オスプレイ、ファレ、ザックも同様に決勝戦線から離脱している。オスプレイは階級を越えて挑戦するといって6点である。こうなってくるとNAVER王座でヘビー級と対戦したりということの妥当性や説得力という話に繋がりかねない。

Bブロックはジュースやジェフ・コブが6点という状況だ。ROHと掛け持ちしたりなど様々な状況はあるが、矢野よりも低いというのが妥当なのか疑問がある。

世界中からコンタクトがあるだろうし、会社としての方針もあっての星取りではあるのだが、これをしている限り、もっと大きな規模でのプロレス、北米進出のみならずヨーロッパ、オーストラリア、東南アジア諸国など様々なところでの展開を考えた時に、彼等が本当に感情移入してくれるのだろうか。

何か必要以上に日本人vs外国人という形になるのを恐れてはいないだろうか。むしろ、プロレスの歴史において、日本に限らず他の国でもそういう図式は鉄板の1つだ。IWGPヘビーをかけて、オカダがさらにでかいランスと本気の試合をするのだって十分に面白いと思うのだが。

 

【シーズン中に感じたこと】

・ファレの逆さ押さえ込みはオールドスクールか

棚橋とファレの攻防は様々な形で変化し続けて来た。でかい相手も転がしてしまえば変わらないと、丸め込みや場外カウントなど様々な攻略方法を棚橋が考えるというG1の1つの見所でもある。

それも棚橋はヘビー級としては身長が低く、体のサイズのハンデを乗り越えるために作戦としてそれをするという建前があるわけだ。かつては色々なことが出来ることをヘビーっぽくない、女々しい、重さがないと言われたが、それはまさしく棚橋がストロングスタイルを破壊し、自分の道を作って来た証明でもある。

しかし、今年の一戦、なんと最後はファレが棚橋を逆さ押さえ込みで丸め込んで勝利したのだ。これには棚橋も呆然としていたし、ファレについていたオーエンズは作戦勝ちだとはしゃいでいた。

好意的に見るのであれば、ファレは今、地元ニュージーランドでファレ道場を開き、新たなヤングライオンを育てており、実際日本にも既に数人セコンド業務などを行っている。そういう活動の中で、オールドスクールなレスリングの重要性を見出した上での丸め込みというのであれば、してやられた、という気持ちだ。ファレはラグビーの世界からプロレスに入り、道場で指導を受けた人間だからこそ、やろうと思えば出来るというのも確かだ。

だが、プロレスのサイコロジーを考えると、棚橋が使う丸め込みとファレが使う丸め込みは話が違う。ファレの大きさ、キャラクター、強さを考えたら、丸め込みという選択肢は真っ先に外れるものだ。例えば、これで逆さ押さえ込みで動揺させ、前後不覚になったところへのラリアットで決まるなら申し分ない。今のWWEだったら、間違いなくありえない決まり方なのだ。ファレの持つ強さを演出出来ていない証拠とも言える。一体、誰がこんなフィニッシュにOKを出したのだろう。


・ザック・セイバーJr.のバックステージコメントのウィット

最近、ザックのバックステージコメントや調印式などでのコメントが非常にウィットに富んでいるということに気付き始めてる人は多いのではないか。

イギリス首相にボリス・ジョンソンがなった事に対し、対戦相手そっちのけでキレ倒す画像がTwitterでも話題になっているが、同じように人物、アーティスト、楽曲など様々なものを引用して、相手をせせら笑ったり、自分の感情を表現してみせている。

これはHIPHOPでいうならば、ネームドロップという技術なのだが、言わばうまいことを言う、というものである。〜はまるで○○だ、という具合に特定の名前を入れる事で、それが分かる人にとっては強い共感を得る事が出来るのだ。

また、ブリティッシュ・コメディの要素も強い。イギリスのコメディというのは言わばブラック・ユーモアの祖とも言える。シュールで毒気も強く、シニカルな笑いだ。まさしく試合後のバックステージで自国の首相が信じられない奴になって、椅子を投げて暴れるなんて常人には理解の出来ない行動だが、それを面白がる要素というのはイギリス人だからというのに他ならない。

世界の様々なプロレスの話を記事にすることが多いが、このコメント力、語彙力、構成で日本は正直相当遅れている。棚橋、内藤は長けているが、他の選手は映像としてわざわざチェックする必要までない。新日の場合、バックステージコメントは新日本プロレスワールドで視聴されるわけだが、そこまで映像コンテンツとなっているという意識の問題なのではないだろうか。

やはりここは外国人選手は上手い。Bullet Club、特にG.O.Dの二人が揃った時に相手を罵るにしても様々なバリエーションを見せる。あるいは、昨年のG1シリーズ中、ジュースとフィンレーが小さなトロフィーを持ち出して、俺達はCブロックを争っていると勝手に言い張り、バックステージで彼等なりのストーリーを盛り上げた。

海外のように試合の合間にスキットが流れる訳ではないが、このバックステージでのコメントというのが、自分を売るための1つの手段なのだ。YOSHI-HASHIにはそろそろ新しいコメントを考えていただきたい。

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