週刊プロレスは初心者のためのメディアではない

前回の記事で書いた男色ディーノvs佐々木大輔の一戦が、唯一の週刊専門誌である週刊プロレスの表紙になった。しかもあろうことか、ディーノは完全に前だけを隠した後ろ姿、対する佐々木はタイツの下に履いたガーターベルトという性癖を剥き出しにした写真であった。

DDTを古くから見ている人の多くは、男色ディーノが全裸で戦うことの意味に疑問を持たなかった(むしろ、最近離れてた人もさすがに食いついたよう)のだが、それがプロレスなのか?紙面を賑わせたいだけじゃないのかという反論も出た。

その中で気になったのが、同日全日本プロレスで行われた横浜文化体育館大会が非常に良かったのに、という意見だ。メインは三冠ヘビー級タイトルマッチ、今や誰もが認める全日のエース宮原が王道トーナメントを制し、ゼウスの持つ王座に挑戦するという、よく出来たマッチアップであった。ゼウスも宮原も元々全日出身ではないが故にファンから認めてもらうために、時間をかけてその信頼をつかみ取ってきたもの同士だけに、この一戦に思い入れの強いファンも多かっただろうし、試合もパワーのゼウス、テクニックと気力の宮原と互いのスタイルが交錯する良い試合だった。

確かに、いい試合だった。しかし、入場者数は団体発表1999人。一方、DDT両国は6259人、しかも、ネットでの中継はYoutube、AbemaTV、自社のDDTUniverseに、CSでのサムライの中継もあった。つまりこれらを合わせた時にこの数字の倍では効かない人が見ていたと考えられる。

質の高いプロレスをする、無駄口を叩かないというのは馬場さんの時代からの流れではある。しかし、この多くの選択肢が存在する現代において、その人の時間を奪う為のコンテンツになりえるのはどちらだろうか。

例えばこれがソーシャルゲームだとしたら、話題性とキャラクター、ポップさがまず先に来る。その後、ストーリーのバックグラウンドやゲームシステムの奥深さが来る。今の全日に前提部分は存在しているだろうか。

ましてや、あの一戦をもって、これがプロレスかを問うて、全日本の一戦を引き合いに出すとして、週刊プロレスが初心者が目につくメディアで質の高いプロレスを知ってもらう必要があるとするのは、あまりにも時代にそぐわないのではないか。

もし初心者に見られたいなら、公式動画の質を高めて、せめてW-1程度にナビゲーターがいて、ストーリーが追えるようにするべきだ。そもそもユニット抗争もそれぞれのユニットが何を目的にしているかも分かりにくい。王道トーナメントは広くプロレスを見てる人間が見れば、割ととんでもないメンツが集まって、とんでもないド級の争いをしているが、話題になりにくい。

週刊プロレスなんてマニアのものだ。コンビニでも店長が好まない限り置かなくなった(最近なぜかうちの近所でホビージャパンをまた置くようになってどうした?と思ってるが、週プロは入ってこない)ネットで情報を得る方が早くもなったし、動画で見た方が分かりやすいこともある。なんだったら海外情報も翻訳出来てよっぽど早い。ローマン・レインズが白血病を克服してまたリングに戻ってくる事を願ってる。

こうやって、プロレスを文章にして書くぐらい、ほんとはプロレスメディアが好きだ。自分のプロレス観において、プロレスと文章の関係性は相当に深い。時にはライターのエゴがプロレスの歴史に大きく影響を与えることだって、我々は目の当たりにしてきたし、一枚の写真に思いを馳せたことだってある。

だからこそ、求められてるものをきちんと出すことに意味があると思うのだ。DDTは数字でそれを証明している。大会場を埋めたら何をしてもいいのか、いや、それがプロレスなのかどうかという問い掛けこそがあのメインのテーマの一つだった。だから、同日に全日が素晴らしいメインをやったならなおの事、あの表紙を飾らせる以上にならなければいけなかったのではないか。そんな謎掛けはマニアのものだ。

なら、週刊プロレスは大手を振って、紙面の中でそれを煽るべきだろう。多分、秋山社長に渋い顔をされるのだ。だが、それでいい。うっかり週刊プロレスなんてものを手に取った初心者がこんな話をしてるなんてと目を丸くするような紙面を作ればいい。そんな役割をニコニコ動画系の某コラムに取られてるから、紙面が弱いのだ。

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lods

プロレスラブの行方

10年以上見続けてきたプロレス。何故か暗黒時代と呼ばれた頃にハマってしまい、古い試合から世界中のレスリングを追いかけるように。”物語”を中心にプロレスの面白さとそこから得れる着想について触れていきます。
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