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「総選挙なきAKB 衰退の過程か」という記事を読んで思ったこと

まずはこの記事を必読してから、読んでいただきたい。

記事内には様々な要因が内混ぜに書かれているが、どうも芯を捉えていないような気がするのだ。特に、劇場への回帰という締めくくりに関しては疑問がある。


【そもそもAKBが衰退していないと思っているのか】

記事の中で、総選挙による総投票数が増加した2013年について触れられている。前田敦子が前年に卒業、指原莉乃がこの年、初めての1位を取った年なのだが、確かに総選挙の得票数で見るとこの年以降票数は伸びながらも、視聴率は下がったというのは事実だ。

しかし、2013年というのは、乃木坂46の躍進の年である。シングルでいえば、「君の名は希望」「ガールズルール」「バレッタ」と続く訳だが、君の名は希望が総売上枚数31万枚に対し、バレッタは51万枚ととてつもなく伸びている。加えるなら、翌年2014年にリリースした「気づいたら片思い」は54万枚だが18回ランクインし、HKT48の「メロンジュース」の17回ランクインを塗り替えているし、SKE48は2013年1月に「チョコの奴隷」で67万枚を売っているが反比例するように、2014年3月にリリースした「未来とは?」は50万枚に留まっている。つまり、着々と乃木坂46に玉座を奪われつつあった、というわけだ。


【総選挙が無くなっても、ビジネスモデルに変更はない理由】

総選挙というのは一際華々しく見える事は間違いない。記事内で示された数字を見れば、総選挙に対する求心力が下がっていることは見てとれるが、総選挙というのはCDを売るための1つの戦略でしかないとも言える。

なぜならば、AKBのCDシングル売上枚数は総選挙の投票券が入っていなかったとしても1300万枚程度の売上げがあり、実はこの数字は昨年11月にリリースされた乃木坂46の22枚目シングル「帰り道は遠回りしたくなる」の累計枚数と差がない。

ではなぜこの枚数が未だに売れるのかといえば、AKB48のシングルというのは、AKB48、いわゆる本店のメンバーだけではなく、地方グループのメンバーも参加する握手会の握手券が同封されている。単純にその子がAKBの選抜に入るかどうかではなく、地方にグループが増えれば増える程、メンバーが増えれば増える程AKB48の握手会=CDの売上げは担保されるといっても過言ではなく構造になっているのだ。

例えば、地方グループとしては、瀬戸内海を中心としたSTU48が今一番新しいグループなのだが、最初に31名がデビューしている。これまで大阪NMB48、福岡HKT48に挟まれる形で空洞となっていた地域で、テレビや地域密着のイベントなどでファンを掴み、STUとしてのCDがリリースされるまではAKBの握手会しか握手などの接触する場所はない。それに今はグループとしてのシングルを出しているが、ファンになってしまえば、握手がしたいがためにAKBのシングルも買うというのが常になり、結局、売り支える形となっている。

 

【衰退と捉えるべきは、影響力の部分】

CDセールスの部分では確かに大きな差はないのだが、問題視すべきはそれ以外の影響力の部分だ。

LINEリサーチが行った調査によると、女性グループの支持は乃木坂46が1位となっている。AKB48は7位まで後退する。

さらに、これを10代まで絞ると、男性は10位にかろうじて入るも、女性のランキングからは消えてしまう。代わりにどちらも入ってくるのが、欅坂46(男性2位、女性1位)となる。男性のランキングには欅坂から派生したけやき坂46(現日向坂46)が8位に入るなど、情勢が変わっているのが分かる。さらに、女性のランキングで顕著なのは、K-POPの影響だ。3位にTWICEが入ってるのに加え、6位にBLACKPINK、8位にIZ*ONE、9位にRed Velvetが並ぶ。

30代以上を見ると、男女共にAKB48が入ってくるも、5位以下とあまり揮わない状況だ。

乃木坂46は、CMの本数はもちろんだが、ファッション雑誌の専属モデルや女性誌への掲載など、従来のアイドルよりも綺麗でオシャレなイメージブランドの構築というものが成功していると見られ、女性からの評価が高いのと同時に、あらゆる年代の男性から選ばれているのが分かる。

欅坂46は10、20代からの評価が男女共に非常に高い。乃木坂46ともまた異なるアイドル像を「サイレントマジョリティー」など楽曲で強烈にイメージ付けたところが影響している。

こういうトレンドランキングというのは、雑誌での起用、プロモーションにおいて、どのタレントを使うのかという際に非常に大きな影響を与えやすい。つまり、AKB48のメディア戦略における必要性は今やほぼ無いといっても過言ではないと言える。


【K-POPというクロフネ】

先に上げたように、10代女子はK-POPに対する関心が非常に高い。これは様々なK-POP、韓国文化に関する記事でも書かれているが、彼女達は世界的な最先端の流行として、韓国を捉えている。

事実、今やBTSやBLACKPINKはアメリカではビルボードに当たり前のように名前が載るし、その勢いは東南アジア、ヨーロッパ、南米と様々な大陸で同時多発的に発生しているものだ。むしろ、日本国内全体がこのトレンドを捉えていないとも言える。

AKB48にとっては、PRODUCE48という形で合同オーディションを行ったわけだが、記事内にもあるように複数のメンバーが卒業し、韓国へと渡る事となった。実際、このオーディションに参加した多くのメンバーに新しく韓国のファンがついたのは事実だ。しかし、韓国行きを考えさせた環境に問題を感じるのだ。

 

【続ける劇場公演の先が見えない】

かつては研究生から昇格したものの選抜に入れないようなメンバーだとしても、何かしらの芸能事務所が拾ってくれるような構造になっていたのだが、その流れが止まるのが高橋朱里がデビューした12期の代だ。

2011年デビューの12期はその後、アリーナやドーム公演を続けて開催する華やかなAKBを知る一方で、毎日繰り返される劇場公演を支え、選抜メンバーとしてなかなか上に上がれなかったメンバーが非常に多い。

そして、この風潮は今より強まっているとも言える。記事内で選抜メンバーのグループごとの比率が出ていたが、AKB48の比率が高まっているのは、別働隊とも言うべきチーム8のメンバーがカウントされているからだ。AKB48として入った子にとってはとてつもなく狭い門となっている。

当然、劇場公演にしか出ていないメンバーにメディア露出のタイミングはほぼ無く、売れるきっかけもなければ、卒業しても芸能の仕事を続けていく確証もない。そういう状況下で、より高いスキルを求められながらも、世界で活躍する機会がある韓国の事務所から声がかかれば、そちらを選択するのは自明の理ではないか。事実、現段階で韓国に渡っているメンバーはPRODUCE48で視聴者の反響が大きかったメンバーばかりだ。本人も何か手応えがあったのだろう。

同時に、今、AKB48の劇場でのパフォーマンスが良いとは言えない。ダンスレッスンなども研究生として入ってきたばかりの時にやった基礎だけで、自分達で振り起こし(以前のダンスレッスンなどの映像からどう踊っているかを推測する)をして公演を行うことがほとんどだと言う。スタッフ筋でも何をどうしたらいいのか分からない状態という声もあるほどだ。

また、秋元康自身の興味にも疑問がある。48坂道グループが増えるだけでなく、ラストアイドルなど様々な形態のグループに拡げており、もはや新しい公演を書く状況にないとまで言われている。実際、HKT48の新公演を指原莉乃が書くことが決まっているという状況である。

 

【活かさず殺さず、このまま続く】

結局のところ、指原莉乃が抜けたところでCDの売上げが下がっていないということは、握手券は変わらず売れているわけだから、CDがストリーミングに移り変わろうとも握手券を買うためのCDは売れ続けるだろう。(そもそも音楽買うためにCD買ってる人間がAKBのヲタクに今、いるのか)

ビジネスとして見れば、乃木坂や欅坂、K-POPの多くのグループの影響力に対しては不利ではあるが、CDセールス以外にも様々な形で課金する要素を作っている。SHOWROOMでのイベントなどは最たるものだ。

しかも、海外グループの発足は非常に大きく、今までグループアイドルの存在しない国で新しいムーブメントを次々と起こしている。インドのデリー、ムンバイでも成功を収めれば、いくらAKBの数字が落ちようとグループでの効果は高まっていくばかりである。


果たして、この状況の先がライブアイドルの回帰と言えるのだろうか。握手会というビジネスモデルさえも機能不全に陥るならそう言いえるだろうが、ブランドとしてのAKB48はアイドルになりたい子にとってはまだまだ意味があるようだ。

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