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里歩がAEWonTNTに登場、加速する世界戦略

(17:00 追記 台湾での試合の模様を追記)

"俺はナイアが好きだけど、Rihoが勝つのを望んでいるんだ!"

Youtubeのコメントにはこんな言葉が並んでいる。

AEWのYoutubeチャンネルにてウィークリー番組の放映開始に向けて、選手を掘り下げていくシリーズAEWonTNTに里歩が登場した。初回放送ではナイアローズと初代AEW女子王座を巡って決定戦を行うことが決まっており、それに向けてのインタビューとなった。

全編日本語での受け答えだが、きちんと英訳が入っており、海外の人でも理解が出来るようになっているし、アメリカで戦う不安、体の大きさ、キャリアについて丁寧に語る様を冷静でカッコイと評価されている模様だ。

対戦相手であるナイアに対しても常に”ナイアさん”と呼んでいる事に対しても、相手へのリスペクトを欠かさないその姿勢が非常に共感を得ている。

新日本プロレスでThe ELITEを見ていた人にはお馴染みかもしれないが、彼等は毎週、自分達で撮影編集した動画をYoutubeで公開している。実はこれが彼等の日常とリングの上をリンクしていく新たな構造として非常に機能してきたのだ。

 

【Vlogとプロモーションの狭間】

世界中を飛び回るThe ELITEはその旅の合間の軽快なヤングバックスとCodyの掛け合いや、精神を追い込まれていくアダム・ペイジなど自分達の様子だけでなく、今はAEWで共に活動するSCUやMJFなど周囲のレスラーも登場させて、彼等が今どうやって過ごしているのかを現代的なスピードで見せてきた。

TwitterやFACEBOOKのテキストベースよりも情報が多く、インスタグラムよりも映像に凝った、非常に構成美のある映像を作り続けてきたと言える。

新日本プロレスワールドやWWEユニバースの中の興行を中心に置いた映像ではとても追いつかないリアルな様を、選手達が自分達で見せていくというのはまさしくインディペンデントだった。

かつてのECWのように映像制作会社がコンテンツとしてプロレスを始めるのと比べても、デジタル技術の発達によって高精彩、高音質な動画が手軽に撮れるようになった一面はあり、これらの動画は一眼レフだけでなくiPhoneのカメラや時にはビデオチャットの動画でも撮影される。

新日本ファンがこの素早さを実感したのは、ケニーと飯伏を巡る展開だ。ついに二人が長い別れから手を取り合った数時間後、その夜のホテル、ヤングバックス達がいる部屋を訪れる飯伏という映像が公開されたのだ。

当時、Bullet Clubのボスだったケニー達、The ELITEに加わるのかと憶測が憶測を呼ぶニュースは一気に世界中の話題をかっさらったし、この動画がきっかけにBullet Clubの内紛へと繋がる重大な瞬間だったわけだが、これを新日本プロレスワールドで流すのではなく、自分達の動画として公開したという事がテレビ局との関係、団体の関係を超えていく新たな時代のレスラーのやり方を示していた。

 

【AEWで洗練された映像美】

変わらずBring The Eliteも更新されているのだが、このヤングバックスの映像メディアに対する立ち位置をアップデートしたのが、AEWのチャンネルで公開されている映像である。

ここまで何度か開催されている興行ごとにシリーズを変えながら、選手の因縁や最新の情報公開などを振り返るという手法自体は、WWEネットワークでも行われてきたし、他のスポーツではもはや当たり前になっている。

しかし、特筆すべきは、インタビューしている時の映像も背景のボケ味がしっかり出ていたり、映像のプレビューの挟み込みもBeing The Eliteでは出来ていなかった作り込んだ映像編集というのを意識している。

単純にAEW自体に資金力があるというのは確かだが、水準として映像を見せる上でこれくらいのものを見せなければ、チープに見えてしまうというライン引きがしっかりしている気がする。これは決してリッチな映像作品ではない、ということを認識しなければいけないのではないか。

ここまでに出ている情報でAEWは試合の中にAIで分析したデータを用いた演出をすると言われている。サッカーだったりeスポーツの最新演出方法として、試合の中のボールキープ率やデス数などが常に更新されていくのが当たり前になり始めている。AEWはプロレスの見方として、WWEとは異なるスポーツ・エンターテイメントの手法を映像でも提示しようとしているわけだ。

 

【世界を飛び回る里歩】

この3連休で彼女は台湾、東京、福岡昼夜という連戦をこなした。さすが”世界のRiho”というところだが、台湾で行われたOWEではケニー・オメガとの久しぶりのタッグ結成となり大きな話題となった。

ケニーも話すように、実は日本で初めて組んだタッグパートナーは飯伏ではなく、当時中学生の里歩であり、以降も幾度となくタッグ王座に挑戦したりなど愛着のあるパートナーである。11月のDDT参戦はAEW、OWEでの活動を経ての逆輸入タッグと言えるだろう。しかも、この台湾戦では里歩のフェイバリットカラーに合わせた白とピンクというケニーのコスチュームでは非常に珍しいカラーに両者のイニシャルが入ったスペシャルな衣装が、可愛いと評判になっている。

一路、東京へと戻ってきたらこんな姿に。

DDTの先輩であり、我闘雲舞でも散々世話になってきた高梨将弘の自主興行で色んなことが起こった結果、リングに張り巡らされたセロテープに絡まり失神である。この後、DDTエースの竹下幸之助の強烈極まりないザーヒー(走り込んでの膝攻撃)まで食らっており、ハードな一夜となった。

月曜は福岡へ移動し、スターダム昼夜二連戦。岩谷麻優、星輝ありさなど言わばスターダムにおける正規軍とも言えるSTARSの面々と組んでの試合だったが、星輝はワンダーオブスターダム王者、里歩はハイスピード王者と団体の顔とも言うべき王者が組んだのに相応しい戦いを見せた。

スターダム参戦以降、明確にどこのユニットに参加するとは言っていないが、彼女のもつ華々しさと厳しさはSTARSによく似合うのではないだろうか。

 

昨日、SareeeのWWE挑戦を取り上げたが、世界に置ける女子プロレスの状況は日一日と変化している。その記事でもAEWとの関係に触れたが、AEWが中国OWEとの提携を正式に発表したことで、東アジアを中心としたマーケットをOWEがカバーして、北米をAEWが、南米はAAAという形で一社独占ではなく全く新しいコネクションによって力が広がり始めていることは意識しなければならない。

同時に、センダイガールズプロレスリングの"横綱"里村明衣子が英国最大の団体プログレスレスリングで女子王座を獲得した。プログレスは2011年に旗揚げした団体だが、日本のストロングスタイルに憧れたオーナーが旗揚げし、ウィル・オスプレイがデビューしたのがこのプログレスである。またマーティー・スカルやWWEUKチャンピオンになったタイラー・ベイトが所属。里村が巻いた女子王座の初代チャンピオンはスターダムやWWEUKでもお馴染みのトニー・ストームである。

このように、WWE、AEW以外のところでも非常に女子プロレスの熱が上がっているし、同時多発的にニュースが発生している。この流れに乗って、かつてのブル中野のような世界レベルの女子レスラーが登場するのは間近なのではないだろうか。

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