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Coinboardのクローズとその経緯について


弊社で運営しているCoinboardをクローズすることを決定しました。

撤退についてはずいぶん前に決定していたのですが、取引所への通貨新規上場への対応などのメンテナンスのみを行い、クローズは先送りにしていました。

クローズに至るまでの経緯を簡単に説明させていただこうとこのnoteを書き始めたのですが、せっかくなのでCoinboardのスタートから振り返ってみました。少し長くなってしまったので、クローズについてだけ知りたい方は本記事後半から御覧ください。なお、クローズ日程に関してはまた後日お伝えしますが、6月後半を予定しています。

Coinboard開発経緯


Coinboardは暗号通貨のポートフォリオチェックツールです。Coinboardを利用すれば取引所APIと連携することで複数の取引所の資産状況を一括で確認することができます。

僕が会社としてブロックチェーン及び暗号通貨に張ることを決めたのが2017年6月です。そのころはアルトコインバブルの真っ最中であり、暗号通貨の種類は増え続け、熱心な投資家は国内外の複数の取引所を使い分けている状況でした。相場変動が激しいので頻繁に資産状況を管理したい一方、頻繁にすべての取引所にログインするのは面倒であり、どこにいくら保管しているか正確に把握するのが難しいという課題がありました。この課題を解決しようとCoinboardの開発を開始し、2017年10月にリリースしました。

リリース後

リリース後、ユーザー数やリテンションレート、滞在時間、PVなどの各数値は非常に好調でした。1日に30回以上閲覧してくださっているユーザーさんや何度も熱心に改善点を送ってくださるユーザーさんもいて、自社プロダクトを熱心に使ってくれるユーザーさんの存在を実感でき、非常に嬉しかったです。

ただ、これがプロダクトだけの力だったかというとそうではなく、上がり続ける暗号通貨価格に強く支えられていました。当時の各数値はまさに暗号通貨投資に対する熱狂を表していたように思います。資産が増えれば資産状況を確認したくなるし、減れば確認したくなくなるものです。2018年春以降は相場の下落とともにアクティブユーザー数は同じようなカーブを描いて減少していきました。

当初の事業計画

アルトコインが増えていく中、将来的に決済手段として使う場合にユーザーは暗号通貨の種類を意識せずに使えるようになるべきという考えのもと、Coinboardを取引所だけでなくウォレットも対応させてユーザーを増やしつつ、中長期的にはShapeShiftChangellyのような両替所(ある暗号通貨を送ると同額の別の暗号通貨を指定したアドレスに送り返してくれるサービス)をやっていく事業計画を立てていました。そして、この事業計画のもと2018年3月に1億円のシリーズAファイナンスをしました。

ただ、2018年夏時点でこの事業計画はほぼ不可能であることは明らかでした。相場回復までにかなり時間がかかりそうであること、当初想定していたマネタイズ手段がほぼすべてなくなった(なくなった、リーガルリスクが高くなった、ほぼ収益が上がらない状況になった等)こと、規制強化によってポートフォリオ管理サービスをスタート地点として仮想通貨交換業を取得して両替所をやっていくことが非常にシビアになったことなどが理由です。

明らかに業界予測や事業計画が甘かったのは僕の力不足でした。ただ、「完全にバブルだから甘く見るな」と当時の自分に言っても何か対処できていたかというとかなり怪しいのではないかというのが正直な気持ちです。僕も暗号通貨がバブルという認識がなかったわけではないですが、相場の影響を過小評価し、プロダクトの力を過大評価してしまっていたように思います。

2018年夏以降、アプリを作りながら、新規事業を模索する日が続きました。非常に中途半端な状態のまま、2018年10月頃に撤退を決め、アプリ開発は途中でストップしました。2018年末〜2019年5月現在はブロックチェーン関連の受託開発を行っています。

クローズ理由

ようやく本題です。すでに少しお話してしまいましたが、Coinboardでの資金調達は両替所をやることを大前提としていたため、両替所実現がかなり厳しいと判断したこともCoinboard撤退理由の1つです。これに関しては自身の業界予想や法規制に対する認識が甘かったことに尽きます。そして内部要因として、自身のプロダクト運営力不足が原因で競合プロダクトに非常に大きな遅れを取ってしまったというのがもう1つの撤退理由です。この2つについて振り返ろうと思います。

当初の認識の誤り、甘さ

Coinboardは長期的には投資家以外も複数種類の暗号通貨を保有することを前提として作られていました。短期的には投資目的での保有、中長期的にはdAppsの利用のためという文脈でポートフォリオ管理や両替所が事業計画に含まれていました。ただ、両替所といってもユーザー自身が両替機能を利用するというよりも、様々なシステムの裏側に両替所が組み込まれることを想定しています。例えば、LTCをたくさん持っているが決済ではBTCしか受け付けてもらえないとき、取引所で交換してから決済するよりも決済時に自動でLTCをBTCに交換して決済してくれたほうが決済者は便利ですよね。

両替所を事業として行うには、技術発展、暗号通貨やブロックチェーンの普及速度、法規制やAMLなど様々なことを考える必要があります。正直なところ、諸々の認識が甘かったのですが、法規制とAMLに関してはあまりにも無知でした。

現在、日本における暗号資産交換業者は完全に金融事業者の位置づけになったと言えます。簡単に資産を送れる性質上、AML/CFT(資金洗浄およびテロ資金供与の対策)が必須になるのですが、AMLの観点から元々のShapeShiftのようなKYCなしの両替所は少なくとも国内では運営できません(ちなみに、ShapeShiftはKYCを段階的に導入することを決定しました)。両替のシステムを作ってもKYC済みのアドレスもしくは取引所を介する送金にしか両替のシステムを組み込むことはできず、両替所の用途はかなり限られてきます。

今後、KyberNetworkやUniswap、Bancorといったオーダーブックが必要ないDEXが様々なdAppsに組み込まれていくと思いますが、これらDEXの組み込みに関しても暗号資産交換の媒介ということで日本国内では暗号資産交換業の登録の対象になると認識しています。最近FinCENが出していたレポートでは「money transmitter」かどうかが規制対象となるかどうかの焦点となっており、運営は取引をマッチングするのみで送金に関わらないのであればmoney transmitterの定義には当てはまらないと書かれています。スマートコントラクトをデプロイした事業者を運営者と位置づけるなら、depositが不要な多くのDEXはmoney transmitterの定義に当てはまらないように思います(デポジットしてトークン発行をする形で別のチェーンのトークンを交換可能なWavesやBinance Dexは当てはまる気がします)。

ただ、現在のようにそれぞれのdAppにユーティリティトークンやガバナンストークンが発行されることが今後も続くのであれば両替所の働きをするシステムやプロトコルが暗号通貨普及の上で必須であり、規制がないからといってAML/CFTに何も取り組まなくて良いというわけでもないと考えています。これらのDEXに対する規制が国際的にどうなっていくか、今後も注目したいです。

プロダクト運営力不足

非常に初歩的で恥ずかしい話ではあるのですが、プロダクトをリリースすると何が起こるのか、いつまでに採用すればよいのか、代表者が目の前の仕事で忙殺されると何が起こるのかわかっていませんでした。

私のみのワンオペ状態でCoinboardをリリースし、予想以上に伸び、CSやインフラ対応(これは僕自身のインフラ知識不足だったのですが)に追われ、そんな中でファイナンスを並行し....  短期的な数字を追って海外の人気取引所への対応を行ったことも今思えば悪手でした。中途半端なリソース配分で採用を行ってもうまくいくはずもなく、ほぼワンオペのまま半年が経過し、もたもたしているうちに競合サービスに圧倒的な差をつけられていました。

そもそも、取引所のAPIやブロックチェーン上でのデータは誰でも利用することができるものだったので、他のサービスと比べても実装や改善のスピード勝負であるという認識がありました。その認識があるにもかかわらずリリース後に長期間モタモタしてしまったことはかなりまずかったと反省しています。

両替所の実現が難しいとわかったあとも、Coinboardのプロダクトの方向性としては相場やニュースを含む暗号通貨の総合サービスとして伸ばしていくという道もありました。ただ、現在のマネタイズ手段を考慮すると相場環境が復活するまでひたすら赤字を掘って機能追加・改善を図ることになり、資金的にかなり厳しいと考えていました。先程話したように両替所をやる前提だったことやそのような状況で圧倒的な差の付いているポートフォリオ管理及び暗号通貨の総合サービスとして全てをかけられる自信を持てず、撤退を決めました。

ちょうど暗号通貨が回復の兆しを見せているタイミングではありますが、これ以上中途半端な形で維持すべきでないと判断し、このタイミングでクローズすることにしました。

最後に

ずっとCoinboardを使い続けてくださっていたユーザーの皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。そして、撤退を決めた後も中途半端な形で運営を継続していたことはユーザーの皆様への誠実さに欠けていました。申し訳ありませんでした。

Coinboardに関してお問い合わせがある方は info@logica-inc.co.jp までご連絡ください。クローズ日程については決まり次第ご報告させていただきます。

今後についてですが、Coinboardをクローズしても引き続きブロックチェーンや暗号通貨の領域で頑張っていきます。最近作ったコーポレートサイトに少し書いているのですが、どういったことを会社や僕個人として取り組みたいのか、なぜブロックチェーンや暗号通貨が好きなのかといったことをnoteに書けたらと思っています。

引き続きよろしくお願いいたします。

株式会社LOGICA 代表取締役 松永大








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Masaru Matsunaga

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コメント1件

日本はちょっと仮想通貨は厳しくなりましたね。バイナンスのCZのようにマルタでの復活を期待してます^ ^
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