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【意味不明小説】いばら、の、しれん

 とんと昔のお話。あるとき、かつて東京と呼ばれていた地域にプチマッチョが現れたそうな。プチマッチョは、気に食わない人やモノを自慢の筋肉でプチッと潰してしまうことから、プチマッチョと呼ばれるようになったそうな。プチマッチョの弟であるゴリマッチョは、気に入った人やモノを口の中に入れてゴリッとすることからゴリマッチョと呼ばれるようになったという説は否定されて久しい。プチマッチョを加工してプッチンするタイプのプリンみたいなプチプチシートを作るとプッチンプチプチプチマッチョプリンシートになるそうな。
 さてそんなプチマッチョはひょんなことから子どもわくわく料理教室に通うことになったそうな。そこで知り合った剽軽ひょうきんで脳筋な老人は、公金を送金して増員した農民を強引に動員したことに良心を痛め、抗菌の雑巾を暴飲した放任な両親を病院送りにしたそうな。一方で合金性の同人誌の更新日に更年期の老紳士が聴診器を盲信した結果、要人の党員もが浪人となる大惨事となったそうな。そんなこんなで料理教室は核戦争に様変わりし、老人は武器を売って得た巨額の富で戦争孤児のための施設を建ててノーベル平和賞を受賞したそうな。果たして老人はプチッとされたそうな。
 それから数世紀後のこと。日本中の目がプチマッチョとプチエンジェルの歴史的一戦に注がれる中、大相撲で優勝を目前にしていた平幕力士の空気が突如シューッという音ともに抜けていき、それを見ていたその力士の母親が悲鳴をあげながら地中深くに沈んでいったそうな。街で七色に光るゲーミング郵便ポストを見かけても餌をあげてはいけないのはこのためであり、焼肉に杏仁豆腐が付いてくる合理的な理由があるのなら是非とも教えて欲しいものである。ところで見事勝利をおさめたプチマッチョには入湯税一年分が贈られたそうな。税務署はプチッとされたそうな。
 晩年、プチマッチョは選挙ポスターの裏にありったけの手打ちそばを植えたそうな。その日からプチマッチョの家では夜な夜な女のすすり泣くような声が聞こえるようになったそうな。プチマッチョはその声をダミーヘッドマイクで録音して「幽霊の啜り泣きASMR」として各種サイトで販売したそうな。果たしてそれは全く売れず、腹を立てたプチマッチョによって福井県はプチッとされたそうな。
 かつて「異臭のするレインボーブリッジ」の愛称で親しまれた刑務所の近くに拠点を置いている水呑百姓みずのみびゃくしょう達の間で語り継がれている逸話には、こんな話もある。あるときプチマッチョは常温プラズマとの融合に失敗して栗きんとん恐怖症になったそうな。日頃プチマッチョをこころよく思っていなかった連中は、ここぞとばかりに栗きんとんを抱えてプチマッチョの家に押しかけたそうな。ちょうどそのとき、プチマッチョの家の前では除草剤違法撒布の全国大会が行われており、中古車販売店が決勝に進出したところであったそうな。栗きんとんは除草剤との化学反応で大爆発を起こし、大会に参加していた22人が口内炎を噛む重傷を負ったそうな。デカい電動機はプチッとされたそうな。
 ところでプチマッチョは子ども達から謎の人気があったそうな。とりわけ放課後に遊びに行く場所の少ない田舎の子ども達にとっては、プチマッチョの家は格好の遊び場で、帰りに何人か減っていてもさほど気にしなかったそうな。さて、とある暑い夏の日のこと。子ども達はいつものようにプチマッチョの家を目指して、アイスキャンデーを食べつつ畦道を延々と歩いていたそうな。すると道のずっと向こうから、何やら甲高い、気味の悪い声が聞こえてきたそうな。それは全速力でこちらに向かってくるプチマッチョがあげていた奇声だったそうな。何故か青白い、全くの無表情で奇声をあげながらこちらに向かってくるプチマッチョを見て、子ども達は本能的に「殺される」と悟ったそうな。子ども達はもと来た道を全速力で走って逃げたそうな。命からがら民家に逃げ込み、助けてと叫びながら懸命に玄関を叩いたそうな。すると玄関の戸がなんとも卑猥な音を立てて開き、中から頭の禿げ上がった初老の紳士が現れた。遠藤さんだ……。


「これはこれは少年少女諸君。まずはワシの昔話を聞きなさい」


 古代の日本の豪族の墓である古墳が、地底都市アガルタへ通じる道への扉の鍵穴であることは今更言うまでもないが、他方、ガソリンスタンドに設置されている静電気除去パッドが未だなお原理不明のオーパーツであるという事実がマレーシア政府の最重要機密として厳重に秘匿されているということを知った人間がどのような末路を辿るかについて詳細に記した歴史書が偽書であると看破した反指向性レーザー生物学の教授が実は架空の人物であると社説で訴えた新聞社の副社長が既に東京湾の底だという都市伝説には一定の信頼性があると評価した欧米人の正体こそ、かつてアダムとイブに禁断の果実を食べるようそそのかしたヘビの末裔とは縁もゆかりもない地に住んでいる人々から崇め奉られている現人神あらひとがみにタメ口を叩いて処刑された女の忘形見わすれがたみを井戸に放り込んで足早に去って行った狩人が連れていた犬の初恋になんら興味を示さなかった職業軍人がふと空を見上げた瞬間に輝いていた星に名前を付ける権利を巡って火花を散らしあった兄弟が最後には固い握手を交わす物語に号泣する日本人のあまりの多さに憂いた賢者が死の間際に残した辞世の句を笹にしたためて川に流したエセ関西弁の料理研究家と懇意にしていた隻眼の女に近々実家の柚子を着払いで送るという手紙を寄越したラテン系の無頼漢であるという事実は、意外にもあまり知られていない。少なくとも、散財が前提の終末旅行にまで収支報告書の提出を義務付けるレベルの堅物を相手にするにはあまりも心許ない薄っぺらな装甲に身を包んだ槍投げのスペシャリストからすれば、映画上映前の携帯電話の電源の切り忘れすら長い長い人生の甘美な味を一撃の下に粉砕し得る狂気的なスパイスとして端倪たんげいすべからざるものがあると見做すのはむしろ当然のことであり、より一般化するとすれば、段ボール製の百葉箱の前で悪魔と契りを交わすこと以上の怠惰を知る1980年台の女子高生がどら焼きを食べる際にのみ使っていた青銅製のナイフにしか欲情しない女を乗せると必ず墜落するヘリコプターへの搭乗券で紙ヒコーキを折って太平洋を渡った国連大使の真似事をしたために全身寄生虫まみれになった脱税王の遺産の隠し場所を記した手記を小学校卒業記念のタイムカプセルに入れた様子がYouTubeで全世界配信されていたことなど知る由もないイギリス国教会の牧師が最期に食べていた肉じゃがに大量のグルタミン酸ナトリウムが混入していた件をもみ消すために奔走したことになっている歴史上の人物を答えよというクイズに万が一答えられなかった場合に備えて対策を練ろうと仲間を集めたにも関わらず結局徹夜でダルマ落としにいそしんでしまう事象の解明に学術的な視点で迫ろうと企画した国営放送の某番組スタッフの名前で予約された本のタイトルに見覚えがないといえば嘘になる程度の教養をお持ちの方であればいとも容易たやすく見破れるであろうセワシと偽セワシの一騎打ちに財産をオールインしたヤクザを街で見かけたような気がしてくるという奇妙な催眠にかけられた憐れなフクロモモンガが歩んだ悲惨な運命に想いを馳せている暇があるなら勉強しろと再三言われた末に指パッチンができなくなった妹に宛てた手紙が検閲で真っ黒にされたことに腹を立てた富豪にやっとの思いで常識を叩き込んだハスキーボイスの年増女がかつて雑誌に寄稿した自作ポエムの一つを宇宙に発信しようと思いついた時点で有罪となる国に生まれなくて良かったと心の底から安堵する余裕を与えないことこそ武の極みであると信じてやまないイマジナリーフレンドに愛想を尽かす展開がテンプレートになりつつある昨今に危機感を覚えた人々で構成される巨大組織が今まさに産声をあげようとしている刹那に便意を催す総入れ歯の男子大学生だけは家に入れてはいけないという風習の残る山間やまあいの集落に2週間ほど滞在した経験のある人が対象の短期バイトに参加するための第二の条件を義務教育で教えるべきであるとの声明を発表する前夜にドーバー海峡で座礁した遊覧船の乗組員が後生大事に抱えていたホットプレートの製造元への問い合わせを断念せざるを得ないほどの吐き気と戦っている最中にもアフリカでは1分間に60秒が経過していることを知ってもらうための手段として発煙筒を選んだのはジャパニーズ・ニンジャの生き残り以外にあり得ないと断じた男に贈られる予定だったトロフィーに許可なくパスコードロックを設定した罪で服役しているエンジニアにすら慈悲を与えると噂される村娘に匹敵するほどの度胸がなければ帝国復活の悲願は果たせないと諭した恩師に少しでも報いる気持ちがあったのなら絶対に起こさなかったであろう歴史的事件の最初の目撃者となった人物の伯父がいつも咥えていたキセルに稀代の名工のサインが刻まれていたかどうかはさておき、数人の常連が支えている場末の寂れた喫茶店が舞台のアニメ映画で主役の声優に抜擢されたタレントの不倫をすっぱ抜いた週刊誌の編集長の息子が営むラーメン屋で盗み聞きした会話が頭にこびり付いて離れなくなってしまったと嘆くレズビアンのカップルに呪術を伝授した怪人と戦う運命さだめにある戦隊ヒーローのグッズを求めて遥々リオデジャネイロから飛んできたギフテッドの少年を長年蝕んでいる病気が国指定の難病になるまでの軌跡を4K映像に収めた超貴重なドキュメンタリー番組の裏番組より視聴率の低かった低俗なバラエティーのプロデューサーでさえ服用を避ける風邪薬の箱のデザインを担当した人気クリエイターの行きつけの美容院に飾られている観葉植物に痰を吐いたクソジジイにしてはやけにこなれた包丁さばきであることに気づくのがあと5分遅れていたら産業革命など夢のまた夢であったことは確かである。ラピスラズリに代わる青の顔料を僅か1週間で発明した割に長生きできなかった男の居間の掘り炬燵に染み付いたカビ臭さをおかずにご飯2合を平らげた幕下力士と同じ髪型にしてくれと懇願してきた黒ギャルの歯形が20年前の未解決事件の現場に残された歯形と一致したという衝撃のニュースを聞きつけた探偵達を尻目に甲州街道を急ぐゲルマン人の一行が唯一見落とした致命的なミスの後始末を任された弁護士の肩がフケで真っ白になっていることさえ言い出せなかったかつての私にサヨナラを言って、前を向いて、逃げ出さずに歩いて行こう。きっとキミも踏み出せるはず。さあ怖がらずに、手を繋いで、私と一緒に来るはずだった男とは似ても似つかない男が家の前に突っ立っている状況で警察を呼ばない選択肢があると思っている一部の若者達はシンクに溜まった汚れをガリガリくんの当たり棒でこそぎ落とそうとすることに異常な拒否反応を示すことが認められており、入場者特典でもれなく貰えるハンドタオルを湯船に沈めて空飛ぶ絨毯ごっこに興じる48歳児を温かく見守ることに決めた老婆が若かりし日に街で聞いた歌にはこんな一節があった。

ハンドミキサー 空回り
洗濯物も 生乾き
船の上から 見晴らせば
多分あれかな マウナケア
さほど惹かれぬ 社長の座
所詮はただの 砂糖水
ゲババスッパパ ホーホケキョ

恋の行き先 アンタレス
星を抜き差し 3ヶ月
味が出るとは 言うけれど
ウジが湧くとは 思うまい
形あるもの みな壊れ
かくなる上は 子守唄
ジョロリチョロチョロ ホーホケキョ

老婆はすっかり嬉しくなり、その場で踊り出した。踊って踊って、そしてそのまま、帰らぬ人となった。


BAD END

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