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終戦記念日の靖国神社を訪れる。

2019年8月15日(木)終戦記念日

今日15日は終戦記念日。

昨晩、14日の夜に1人の留学生から連絡を受ける。

「明日、靖国神社に行ってみたいのですが、」

ちょうど時間もあったし、当留学生は今月末には帰国の予定もあり、最後の思い出作りにもということで一緒に行くことにした。


彼は韓国からの学生であり、昨今の情勢のことを考慮して、

本当に終戦記念日の靖国神社に行くのか、他の日でもいいのではないか?ヘイトされるかもしれない、気分を害すかもしれない、不測の事態が起きたときに、私が当留学生を守りきれるかどうかわからない。なにが起こるかは想像がつかない。

そんな注意事項を事前に伝えていた。

そんな私の不安をよそに、彼は「終戦記念日だから行くのです」「日本人は興味ないかもしれないけど、見てみたいのです」「そんなに日本語も上手じゃないからなにか言われてもわからないから問題ないよ」とのこと。

*彼は謙遜してそういうことを言うが、日本の大学で国際政治情勢についての議論をできるくらいには日本語はできる。[謙遜する]ことができるくらいだからそういうことだ。


いざ行かん。曇天の終戦記念日、靖国神社へ。

午前11時ごろ。九段下駅の改札を出たところから、[出口1靖国神社方面]に向かって人の流れは出来上がっていた。流されるまま、エスカレーターで地上へ。

出口を出たところから、幸福の科学、竹島を守る会的なもの、法輪功、キリスト系の何か、御霊の何か、、、いろんなカルト的なものと右派的なものがチラシを無差別に配りまくっていた。歴史の教科書を修正したいかたたちは机と幟を出していた。


そして、信号を渡ってまず見えるのが、こちら。

「日本は侵略・犯罪国家ではないぞ」と主張するかたたち。

この歩道橋の上にもちらほら人がいた。

鳥居をくぐってずんずん進んでいく。

終戦記念日の靖国神社にいる人で、どうやらとても有名な方々。詳しくは調べていないが、「終戦記念日」「靖国神社」で検索をかけるとこのかた達の写真が真っ先に出てくる。

様々な団体の人たちが集会をやっていたり、フォーラムの案内の配布をしていたり、カンパを募っていたりしていた。著書についての宣伝の演説をしている人もいた。

参道に入ると、参拝者が列をなしていた。

日章旗と日本国旗を掲げた人たちを横目に列を進む。黒のスーツで、旗を持って立ち続けていた。熱中症にはくれぐれも、と思う。

雨が降ったり止んだりで不安定な天気だった。

靖国神社を取り囲むようにして警察車両は配備され、警察官やSP、私服警官などがいた。反社会的な稼業を営んでいるかたがたもきっといる。黒のスーツを着た人や胸にバッジをつけた人たち、特攻服を着た人たち、軍服の人たち、いろいろだった。一般参拝者は観光客や私のようなミーハーな人、祈りに来た人、その界隈の今日この日に参拝するのが使命な人など、参拝者もいろいろだった。

神社内では全国戦没者慰霊式典の様子がBGMとして流されており、参拝者の列に並んでいるときにちょうど[国歌斉唱]とアナウンスされた。

[国歌斉唱]の掛け声とともに、参拝者の多くが国家を声高らかに歌い出す。


私たちが参拝者の列の最前列に着いたのが11時55分。12時からは黙祷だった。5分程度神社内をぐるりと回る。

ぐるりと回っているところで、少し前まではざわざわした観光地と同じ雰囲気だったのだが、だんだん静かになり始め、人々は自分の今立っている場所に立ち止まりだす。時計を見ると、11時59分。

先に歩いていた留学生を引き止め、ちょっと立ち止まることを提案する。

〔今思えば別に立ち止まらなくてもよかったのだろう。集団の力だ。ここでウロウロしていると変に目立ってしまいそうだったが、気にすることでもなかったのかもしれない。〕


ともあれ、さっきまで並んでいた列の途中に紛れこみ立ち止まる。[1分間の黙祷]。その後[天皇のお言葉]が放送される。


[天皇のお言葉]が終わると、どこからともなく、

「天皇陛下、万歳!!!!!!!」

の叫び声が。

そして、人々がつられて万歳三唱する。


ここが一番のハイライトで、いちばん怖かった瞬間だった。

誰が言ったかわからない言葉に、みんなが反応して、同じ動作をする。同じ動作ができるのだ。同じ間合いで。国歌斉唱もそうだが、見ず知らずの人たちとのその場での集団の力が凄まじい。歌わない人はいないし、歌えないと疎外感を感じてしまうような雰囲気だった。


留学生が「これがフィナーレですか?」と聞く。万歳三唱したから多分これで終わりだということを告げ、私たちの靖国神社内を散策して今回の訪問は終わった。

ついでに隣の遊就館のエントランスに行った。


感想としては、街頭のものものについては誰がなにに対して声を上げているのか正直よくわからない。何かを演説している人の声がスピーカーからガンガン流され、チラシ配りの人は何かを言いながらこちらに近寄ってくる、情報量が多すぎて大混乱である。

また、街宣車やヘイトスピーチのデモなどにあふれているのかと思っていたが、そうでもなかった。街宣車は時々大きな音を鳴らしながら出現するが、スピーカーをオフにしているものもあった。ただ走っているだけというやつだ。ヘイトスピーチのデモには遭遇しなかった。

もちろん留学生に対してのなにか物騒なことも特になかった。これに関しては、良かったが、やや拍子抜けした。ビビっていたのはどうやらこちら側だったようだ。


気にかかったこととしてはまず、本の宣伝の演説をしている男性の発言だ。

その男性らは、天皇賛美系の内容の本を売っているようだった。男性は「ちょっとの思想の違いは気にしないで、同じ国の国民としてまとまりましょう!」という旨の発言をしていた。

思想の違い、というのはちょっとでも許せないものなのだ。だから、そこを気にしないで、というのは論外なのではないかと思ってしまった。また、それを「国民」の枠組みに抑え込むみたいなのもどうかと思った。「多様性」を謳っている「国際的な国」とはかけ離れているように感じられた。


次に、参拝者らはなにに対して祈っているのかがわからなかった。

自民党の稲田朋美氏は「令和の新しい時代を迎え、改めてわが国の平和と繁栄が祖国のために命をささげたご英霊のおかげであると感謝と敬意を表します」と記者団に答える*

超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」はスーツやモーングなどフォーマルな服装で参拝する**。

軍服を着たりしている人たちはほとんどコスプレ状態だ。

印象としては、初詣と変わらない。季節のイベントへ参加しているくらいの感じだろうか。とすると、私のように適当に散策している人たちが一番真っ当なのではないかとさえ思えてしまう。


上から順に、軍隊の服を着た人、文藝春秋のカメラマン、日章旗のかかれたTシャツを着た白人男性、韓国の放送局のカメラマン。


最後に留学生に「どうだった?」と感想を聞いてみる。

「日本の人たちは軍隊が好きなんですね。」という。私は、今日ここに集まっている人たちは特にそういう人たちであることを留意点として伝える。

彼は続けて、「軍隊に行ったことがないからそういうようになる」という。

これは「日本に徴兵制を!」ということを言っているわけではもちろんない。

戦争をすることはよくないことで、繰り返してはいけない。歴史は反省しないといけない。軍隊は賛美するようなものではない。ということだ。

至極真っ当だった。


終戦記念日くらい、先の大戦のことを考えてみるのもいい。

戦争は良くない。誰も幸せにはならない。戦前の日本に戻ってしまってはいけない。歴史は何度も何度も振り返り反省しなければいけない。真摯に受け止め反省することができなくなったとき、この国は滅びるだろう。


*写真は全て筆者撮影

===参考までに===

>靖国神社HP

>稲田朋美氏の記者団への発言*

>「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」


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