「考える葦」 (ブレーズ・パスカル『パンセ』より)

「人間は一本の葦にすぎない、自然の中でもいちばん弱いものだ。だが、それは考える葦である。これを押しつぶすには、全宇宙はなにも武装する必要はない。一吹きの蒸気、一滴の水でも、これを殺すに十分である。しかし、宇宙が人間を押しつぶしても、人間はなお、殺すものより尊いであろう。人間は、自分が死ぬこと、宇宙が自分よりもまさっていることを知っているからである。宇宙はそんなことを何も知らない。
だから、わたしたちの尊厳のすべては、考えることのうちにある。まさにここから、わたしたちは立ち上がらなければならないのであって、空間や時間からではない。わたしたちには、それらをみたすことはできないのだから。だから、正しく考えるようにつとめようではないか。ここに、道徳の原理がある。」
「わたしの尊厳の拠り所となるのは、この空間ではない。そうではなく、わたしが、自分の思考を正しくみちびくことができるからである。いくら多くの土地を所有したところで、わたしにはなんのプラスにもならないであろう。空間的に見れば、宇宙はわたしを一点のように包みこみ、呑みこんでしまう。思考によって、わたしは宇宙を包みこむ。」
                    ブレーズ・パスカル『パンセ』 (田辺保 訳 角川文庫)より

キリスト者パスカルが伝えたかったのであろう、人間の尊厳である「正しく考えること」について・・・
人間は、正しく考える前に、パスカルが伝えたかったことを正しく受け取るようつとめてもいない。名言と言いながら・・・
人間は、自らその尊厳を踏みにじってよいものだろうか・・・考えたい。

パスカル【パンセ】から

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