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ダイアンとソウル

『ダイアンのよなよな...』という大阪のラジオを毎週聴いている。聴いているといつも思うこのなんとも言えない2人の会話のニュアンス。諦めたような気持ち吐息交じりで発する「ゆうたぞ...」とか「するからなァ...」というこのダイアン特有の言い回し。これはなんだろうとネットを検索したがその特異性について書いている人はだれもいなかった。見つからなかった。


有田ジェネレーションでダイアン二人が無茶ぶりのラップ対決をしていた動画をみて腹を抱えるほど笑った。と同時に津田がどんどんリズムに乗ってくるのに感動した。なにかラップの最初の発生はこんな感じだったんではないかと思った。ラップのことはよくわからないが、コメント欄によると「ビートアプローチ」というらしい。それが津田は上手いと。なかでも非常に興味深いコメントを見つけた。

ツッコミに「音程」「音域」という概念を持ち込んだ男。

ある日暇でジャズについてしらべていた。ほぼ日刊イトイ新聞の中にあった「はじめてのジャズ」というトークライブの書き起こし。糸井重里とタモリと山下洋輔のトークライブ。
そのなかでジャズの用語である「スウィング感」というものについての引用。

このタモリのラーメン屋の店主のエピソードを用いた「スウィング」の説明はヨルタモリで甲本ヒロトだったかな?がゲストだった時にしていた気がする。そのときは真似するタモリの映像もあってなるほどジャズはよくわからんけどこういう粋な感じかと思ったものだった。ここで糸井重里が言った「スウィングって、どことなくほくそ笑んでる感じ」というのがいちばんしっくりきた。

またちがう機会があって、友達から「じゃがたらの「タンゴ」みたいな暗いファンクを教えてくれないか」と問われた。おれが知りたいよ、と思った。ファンク、ダンスミュージックとなると基本明るく弾けた感じになるのだが、じゃがたらのように暗く閉塞感のあるファンクを演奏するバンドというのはなかなか見つからない。じゃがたらはおれが人生でいちばん好きなバンドであり、この「じゃがたらみたいな暗いファンク」というお題にはおれもこれまで10年以上取りかかってきた。じゃがたらを知ってハマったのは小学生の時であるから、これほんとに10年の歴史である。

いちばんわかりやすいので言えば、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの『暴動』というアルバムだろう。これはおれはポッドキャスト向井という、最近再結成したナンバーガールのフロントマン向井秀徳がやっていたいまはもうなくなってしまったコンテンツのなかで知った。「はじめて聴いたとき、ステレオが壊れたのかと思った」というエピソードが楽しい。非常にくぐもった、閉塞感のある小さなファンクなのだ。スライは、フジファブリックの志村が、ユニコーンの奥田民生が好きだったと雑誌で読んで買っておおいに影響を受けたとかも言ってた、どの世代にもエバーグリーンなバンドである。

♪Family Afair/Sly&the family stone

♪Playa Playa/ディアンジェロ



もうひとつはディアンジェロの『Voodoo』というアルバム。これも大ヒットしたアルバムで、異様な閉じ込められた雰囲気で、『暴動』と二つ並べて語られることもあったりする。

だがしかし、おれはこの二枚のアルバムとも大好きで何百回も聴いたが、じゃがたらのあのドロドロしていながらどこか綺麗な、すっごい黄色いうんこの表面のテカリみたいな異様なポップ感というのとは同じに語れないアルバムである。それだったら岡村靖幸とか銀杏BOYZのほうが精神性的には似ていると思う。いや閉塞感、暗いファンクという点ではおのおのとんでもなく素晴らしいアルバムではあるが。それでもういまはネットの時代であるからと思ってきのう仕事中ヒマだったのでたくさん調べてみた。ソウル&ファンク大辞典、というサイト。どう調べるかというと、もう片っ端上から下に順に見ていくという地道な努力である。真面目なソウルファンクを調べてもなんか仕方がないので、「アウトサイダー」というカテゴリーを70年代から順に調べて聴いていった。

♪トリーボ・マッサーイの“Estrelando Embaixador”


いまのところいちばん、じゃがたらや!と思ったのはこのアルバムである。いやかなり近い。ブラジリアン・ファンク。峯田和伸もブラジルのジョージ・ベンというアーティストをいつか勧めていたことがあったが、なるほどと思った。ブラジルのこのちょっと日本的な感性に近い湿ったメロディというのはあると思う。

それでいろんな知らないソウル、ファンクを聴くことが楽しくなって「アウトサイダー欄」以外もいろいろと聞いた。

♪Begginig of the end/Funky Nassau


♪ギル・スコット・ヘーロン


もうお気づきになっただろう。上が津田で下が西澤である。ダイアンはルーツはソウルでした。やっと腑に落ちた。彼らは黒人音楽、スウィングをツッコミに導入したのです。一大発見である。こんなことはいまのところおれしか書いていないのではないか。今一度、ダイアンの二人の掛け合いを日本語ではないと思って音楽として聴いてみてください。きっと黒人のラジオに聞こえてくることでしょう。

とくに五分あたりから津田のスウィング、ソウル感が如実に現れる。吐息交じりの「ほくそ笑んだ」ツッコミ。なぜ教養のない、おそらくソウルもファンクもそれほど趣味ではない二人がこんな概念を持つことができたのか、奇跡だと思うのだが、なんかわかって感動しました。


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