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貝と蜃気楼の『落日』#2022年VTuber楽曲10選


 『地球最後の日に君となにをするか』という問に対して、私は答えを出せるだろうか。夏休みの宿題ですらなおざりにするというのに。

 ライブでも聴いた、ということもあり、強く印象に残っています 。去年に好きな曲を出したアーティストが、次の年も私の好きな曲を出すなんてことは、職業で音楽をやっている人以外に期待するものでもないと思っています。そんなスタンスでいろいろな人の曲を聴いているので、「貝と蜃気楼」の結成という大きな変化があったにもかかわらず、また私が好きな曲が出てきたことに驚きました。

 隕石と線香花火、茹だるような暑さとアイスの冷たさ、そして融ける僕と冷たい君に落ちる星と昇るスイ。対照的なモチーフだったり隠喩を見つけるのが好きなので小宵さんの詞は元の掌編『火球』も併せて大好物です。

 対照的な言葉がちりばめられていますが、「僕」の態度は煮え切らないところもいいですね。夏休みの宿題よろしく答えを出せないまま、タイムリミットは来てしまい、スイは黄昏星をあとにする。

 私が好きになる曲の共通項として他にも、「MVが脳内で勝手に作られる」というのが挙げられます。
 『落日』で言えば、落ちる対象の巨大さ故に、落下運動が観測手からゆっくりに見えることで、逆に観測手側の時間が引き伸ばされ、究極的には静止する時間的なイメージがあります。
 また、夕日が影を濃くするように、最後の一日であることが、日常の影をくっきりと浮かび上がらせる、というような映像のイメージもあります。

 君に僕を覚えていてほしいという願いで、この曲は終わります。
 もちろん、アルバム『七日目の街』の最後の曲ということを踏まえての意味もあるとは思いますが、あえて額面通り「聞いている人だけがこの物語を覚えていられる」「覚えていてくれ」という作り手からの祈りだと受け取るのも面白いのかなと思います。ある夏の、アルバムの、この曲の終わりに、ただ自分という存在を覚えていてほしいと願うこと。夏が終わっても、夕日が沈んでも、イヤホンを外したあともこの曲のことを覚えていること。

 年が明けて、2023年になりましたが去年の曲を忘れないように、覚えていることを確かめるようにnoteで振り返っていきたいと思います。
 曲によって文章のテンションは変わるとは思いますが、お付き合いよろしくお願いします。

 


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