今年のVtuberのオリジナル曲100ぐらい振り返っていく⑧『Vtuber楽曲大賞あったけど続くよ編』

 まだ3月に見たオリ曲の振り返り終わってないの恐ろしいですよね。今回は久しぶりに企業、個人ごちゃまぜです。

33. ミルクティ / 富士葵

 作詞作曲:富士葵のパワーすごい。
 この曲を聴きながら暖を取れる今年の冬、最高か? 歌詞も夏の『天体観測』、冬の『ミルクティ』と言った感じでスバラ。

 この曲ものすごく『富士葵』ですよね。あたたかくて、やさしい曲調と詩。ここまで自分のイメージに沿う曲かつ直接的なワードを出さず、しかも季節感も演出する。凄い……。
 
 すごく歌詞によるイメージの誘導が上手いんですよね。『ミルクティー』とか『魔法瓶』とか日常にある、身近な言葉を入れて距離をぐっと詰めてきたと思ったら、『遙か』から突然、宇宙にイメージを広げることでバラードでありながら動きが生まれてますよね。サビでは『過去』と『未来』で別軸での動きを取り入れることで飽きさせませんよね。富士葵さんの伸びやかな声と相まって、ぐんっと世界が広がります。このリスナーにイメージさせる画の流れが非常に丁寧で富士葵さんらしいなと思いました。
 
 さて、ここからいつもの妄想が入り交じるタイムです。

 1番は「男の子側からの歌詞で2番は女の子側からの歌詞」っていうのも面白いと思うんですけど、1番は小さかった時の頃の歌詞で、2番は大人になったときの歌詞だと思うんですよ。というのもですね。1番は『2人で星を見にいこう』とか『きみの家まであと5分』とかから分かるように、これから2人で星を見に行くんだろうなってことが分かりますよね。

で、次が大事なんですけど『ぼくには少し甘いんだけど』って歌詞。君がミルクティーが好きなので、2人で飲もうと甘めのミルクティーを持っていくわけですよ。かわいいですね!?でも、2番は『あなたには少し甘いんだけど』になってるんですよ。これって1番の時に君に飲ませたら「おいしい。ちょっと甘いけど」みたいなやり取りしたからわかるってことですよね?しかも、2番に『あの丘を登ったら私の1番好きな場所』ですって!!!!!ヤダー!!!!!あんたら2人のほうが甘々よ!!!!!!!!!!
 
 失礼しました。ココロのオカマが出てしまいました。
 まぁとにかく二人称から『きみ』から『あなた』に変わっていることからしても1番と2番の間には少年少女が大人になるくらいの時間が流れていることが推察できます。
 
 しかし、2番冒頭『今夜あなたはどこにいて』から分かる通り、時の流れは2人を1人と1人にしてしまいます。あぁ、無情。それでも『私』は『あなた』を想って空を見上げるわけです。オリオン座っていうのも冬の夜空でひときわ明るく輝く星なんですよね。練り込まれたワードチョイスですよ。素晴らしいですね。これ間違いなく『あなた』の方も同じ星を見上げてますよね。そうだといいな。

 そしてですね。この1番と2番をまとめ上げ、曲としてもオチをつける『またいつか あなたとふたりで』ですよ。綺麗すぎて拍手したくなりますよね。今年の冬は暖房いりませんわ。ココロぽっかぽかですわ。富士葵さん、ありがとう……


34. Hello My Stage! / Alt!! (アルト)

 大勝利曲。スリーピースもいいけどこれも鉄板感すごい。3人の声の色のバランスが最高に映える。アイマスとか好きな人この曲めちゃくちゃ刺さりそう、私は刺さりっぱなし。あと関係性のオタクも死ぬ。

 公開当時、遠坂ユラさんが無期限活動休止に入っていた中でこうやって3人が歌っている声を聴けたことは本当に救いでした。きっと戻ってくると信じて待つことが出来たのはこの曲の力があったと思います。

 一周年記念ライブの『スリーピース』『Hello My Stage!』はもうボッロボロに泣いてましたね。誰かが脚本書いてるんじゃないかってくらい完璧な流れで、でも本当に大変な時期を乗り越えてのこのライブだったので本当に感動させてもらいました。ありがとうございます。

 イントロからもう最高に好きなんですけど今聴くと『ねえ、この日を指折り数えて待ってたよ』でもうどうしようもなく泣けますよね。だめです……涙腺がよわい…… この曲に限らないんですけどVtuberの楽曲の醍醐味として活動を続けることで何重にも意味が積み重なっていくことがあると思います。古参に優しくないとかいわれますけどこの気持ちを味わえるだけで十分お釣りが来ると思います。この先も、忘れられないような日を心に刻みつけながらAlt!!の3人を含めパレプロさんの活躍を見守りたいと思います。


35. 形而境界のモノローグ / fulfill (水科葵、桃丸ねくと)

 ジェムカン二曲目ですが、これもMVから何から何までが強すぎます……。

 この曲、結構クセが強い方に分類されると思うんですけど、音ゲーとかやってるとたまらない曲だと思います。アニメの『WIXOSS』シリーズのOPとかの雰囲気も近いかなーと思ってます。あと、所謂スルメ曲なので聞けば聞くほどハマリますね。

 映像とかもエフェクトがダンスに対応してるとか、衣装自体のエフェクトも意味分からんくらいかっこいいし、三角形の面が動くエフェクトとか「どうなってんだ……』としか言えないですよ。歌詞とリンクするようにステージがチェンジするのも凄いです。随分と当たり前みたいな顔して変わるじゃん……

 カメラもぶっとんでいいですよね。ダンスを見せるカメラと顔を見せるカメラとエフェクトだったり舞台を見せるカメラの3種類がシームレスに無理なくつながってるのすごすぎますからね?そもそもこれだけ2人も動くしカメラも動いてたら目がおっつかないんですよ???なんでこんだけカメラ動かしてるのに疲れないんでしょうね……。こんなん出してくるジェムカン、おそろしい……みんな全MVチェックするんだぞ……


36. 狼狽 / MonsterZ MATE

 アンジョーさんソロ曲で狼の歌で狼狽ってもう曲が始まる前からカンペキすぎるのズル。MZMズルい曲ばっか出してんな???

 音だけ聴いてるといつもの動画では考えられないほどかっこいいアンジョーさんなんですけど、よく歌詞を聴くとアレ?いつものアンジョーさんじゃね?となる曲。最後の『何故?』なんてほんと最初とギャップありすぎて風邪ひけます。

 あと、イスや舞台セットはあるもののほぼ立ち位置を動かずにこれだけ見せられるアンジョーさんカッコよすぎます。バルスパワーもありますが、舞台やってるだけあります。入り込むと指先まで魂入ってますよね。

 もちろん歌声にも隅々まで神経が行き届いています。音の高低からエッジ混ぜてみたり、がならせてみたりと業もきっちりこなしてくる辺り『ただ』声の高い男にはたどり着けない領域ですよね。これが『アンジョー』という男か…… というかこの曲と『Bite me.』を同じ年に出してくるMZM怖すぎるだろ…… エロゲの話をしてる動画よりエロいお兄さん動画の方が多くなっちゃう……


37. 蒼に躊躇う / 花鋏キョウ

 花鋏キョウさん、待望のオリ曲。私はめちゃくちゃ楽しみにしてた。

 曲調がものすごくこれまで積み上げてきた『花鋏キョウ』って感じで素晴らしいですよね。蒼っていうすごく澄んだ色を取り上げておきながら、歌詞の内容はけっこう激しい恋愛をしてるという。以前の歌ってみたで宇多田ヒカルさんの『誓い』という歌を歌われていたことがあるんですが、雰囲気ばっちり合っていたのでこういう曲がハマるんでしょうね。

 花鋏キョウさんはほんとに歌一本って感じのチャンネルなのでこれからのオリ曲でどんな色を出してくるかすごく楽しみですよね。個人的には『flos』もハマってたのでコッチも欲しいですし、男性Voの曲も沢山歌っておられるのでゴリゴリのロックサウンドなんかも聴けちゃうんでしょうか。今後の活躍も楽しみです。


38. 雛鳥 / 花譜

 花譜さんの曲については以前『不可解』ライブレビュー(?)としてまとめて読んだんですが、その時は極めて不可解な読み方をしたのでもっと地を這うような読み方をしたいと思います。

 この曲タイミング的にも色んな意味での『卒業ソング』だと思ってます。この曲を節目として高校生になりますし、MVの中でも東京のシーンが増えますし、歌詞の内容も東京に来てから、活動し始めてからの葛藤なのかなという歌詞に変化していくんですよね。

 で、例によりVとは離れて読んでみようと思います。花譜というVから一旦離れて歌詞の中の女の子に目線を合わせます。難しいですね。歳が離れ……つらい。

 まず登場するのは

 ・『あなた』だったり『君』だったりする奴。
 ・『私』

 ですね。『私』の視点からの歌なので『私』にとっての『君』や『私』と『君』の距離感や変化を見ていくのが面白そうです。ではAメロから。

 『あなたのぬくもりを覚えている~あなたのおかげで許せる気がした』

 なんだこの羨ましい奴、と思ってしまうのはさておき。恋仲とまでは言わないですが、『私』からしたら憧れのような存在が『君』なのかなと。で、『覚えている』というフレーズから、現在『君』は『私』の側に居ないことも分かります。学生時代の大人の言う『綺麗事』、その息苦しさの中で『あなた』だけは『私』にはちょっと自由に見えたんでしょうかね。
 2番でも『夢を追うって言っておいて~』の下りでもやはり『君』が先に卒業して、普通科高校に進む流れとは別の流れに乗ったのかなと想像してしまいます。

 ここまでは『私』から『君』の距離が遠くなったイメージが強いです。しかし、『あの日出会った時確かに~』から急に『私』の方がぐんと前に出ます。サビの『涙は飲み込んで大人になるの』だったり、Cメロの『君より高く飛んで~』なんかは『君』を意識しつつも前に進もうとする意思が見えます。で、ここの『前に向かい方』が個性の現れるところだと思うんです。そう、『それでおしまいにしよう』なんですよね。『また会おうね』の歌じゃなくて本当に『さよなら』の歌なんです。そして、ラスサビで『さよならだよ全部 愛おしくても』ですよ。この『愛おしくても』の前の無音がより力強く前に進む『私』をイメージさせます。すごく好き。

 サビの歌詞を追うとよく分かるんですが、春から夏の終りまで時間が流れているんですよね。『霞』は春の季語ですし、二番目のサビでは『夏で』になっていますし、ラスサビには『蝉』が出てきて、今までは出てきた『君がいない夏』というフレーズもなくなっています。この時間の流れも『私』と『君』の決別に一役かっていますよね。とんでもない作りこみだなと思います。

 今回もVから離れて読んでみましたが、本当にVというより『花譜』で世界観をつくっていく上手さが素晴らしいですよね。なんだか良くわからない存在ではなく、どこにでもいるような『私』として世界に存在させながら、魅力的にみせる手腕には拍手を贈りたいですね。毎曲本当に楽しませていただいています。ありがとうございました。


振り返ってみて

 オール企業勢でしたが、それぞれ強みがバラバラでしたね。だからこそこの業界で生き残っているんだと思うんですが。一口にVと言ってもそれぞれの物語があるので、それぞれの読み方を模索しながら読む側も器用に読んでいくことが楽しむ秘訣かなと思います。

 Vというクリエイターが見えている環境ですが、やはり作品を主たる言葉として読みそれ以外を遮断して楽しむというのも一つの楽しみのような気がします。まぁ配信を見てよりつよくパーソナルな部分に触れるというのも楽しいんですが、それぞれの距離感にそれぞれの楽しみ方があるなと。このスイッチングについては読む側の業だと思うので修練を積みたいと思う次第です。

 あ、そいういえばVtuber楽曲大賞ありましたね!!私が振り返った曲も沢山ランクインしていましたが、クラブシーンでの曲が多くランクインしていたような気がしますね。やはり、ステージを用意しやすいのでクラブ音楽はしばらく衰え知らずだと思いますね。むしろクラブ音楽なかったらと思うと恐ろしいですね。歌謡曲ライクなオリジナル曲も十分戦える曲が出ているので大衆音楽としても広まって欲しいですね。

 今回はこのへんで。次回は4月~5月くらいの曲を振り返ります。お付き合いありがとうございました。

 





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