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カワイイガールオルタナティブの感想を書いてたらめちゃくちゃ気持ち悪い長文が書き上がったものを特に理由なく1年寝かせたものになります。

 樫野創音さんの2ndアルバム『カワイイガールオルタナティブ』を聴いての感想書きなぐりです。ライナーノーツ未読の状態での感想とライナーノーツ読後の感想が混ざり合っています。ハイパー自分語りモリモリと想像で書いているので許して。許されたい、許されたくないe. p. / memex

僕を殺して

 ジャケが軒間さんの時点で鬱屈とした一言では表せないような、カテゴライズして箱に詰めることが適わなかったような感情をぶちこんだようなアルバムなんだろうなと思ってました。
『僕』を『殺して』みたいな、タイトルからして尖り散らしたのが一曲目ってコレは聴く方も削れるなと身構えながら聴き始めました。

 一曲目であることと、タイトルから連想して激しめなのかなと思ったら意外とボーカルの雰囲気はおとなしい。安全安心とか言ってるし。なんてちょっと油断したら、ジャケの流血しながら「にへら」と笑ってる樫野創音さんと目が合うじゃないですか。ゾッとしました。聴いてる人間を否応なしに傷ついた樫野創音の前に立たせるえげつなさ、これがどういうアルバムなのか「分からせる」一曲目じゃん、と樫野さんの殺る気をバチバチと感じました。

 アルバムと絡めて考えると前述した通りのことを考えたんですが、曲単体でもやっぱり『君』のポジに立って聴いてしまいますね。特に『何もしなくても施されて』のところは刺されました。あんまりVの界隈とだけ関連付けて解釈して、『この曲はこういう曲だ!!』っていうのは好きではないですが、表現する側に立っていると自覚していながら何も出来ていないのに褒められたり、与えられたら苦しいだろうなとは想像しました。

 これはVの界隈でよく言われてるファンがVが活動していることそのものへの感謝とかリアクションが手厚いというのが逆に心に来るパターンなのかなと。ライブ配信メインだと、商品と提供する側が一致してるのでズレがないんですが、クリエイタータイプは作品を出すことによって対価を得るという頭なので作品を通さない褒めに慣れていないというかズレを感じてしまう人が多いような気がします。そういえば、作品をスルーして自分の挙動に注目が集まるのが煩わしくてVを名乗るのやめた方を何人か見たような気もします。

 いい悪いの話ではないと思うし、それを怠惰だと表現するのも樫野さんはストイックだなと言ってしまえばそうなんですが。私個人としてはこんなに感情を煮詰めた作品があるなら、こちらもがっちり迎え撃ってやろうじゃあないかという。

 ちょっと脱線しましたが、更に脱線して『青』という色についての私見。青って「無邪気」とか「無垢」とか「若さ」みたいな表現で使われたりして「僕らはまだなにものではない」みたいな文脈で良く聞くんですけど、この曲中だと「無垢ゆえの刺々しさとか愚かしさ」みたいな感じに描いてるように見受けられました。過去の青い自分を振り返って自嘲する、酷かったと思っているような詞ですかね。

 青、という色、実際の所は「何かを表現したい」と思ったときには「自分は透明だ」という意味での「青」は使えないと思うんですよね。透明を表現するためにはやっぱり他の色を見せないとなんにも伝わらないと思いますし、表現したいという気持ちを持っている時点で無色透明のわけないでしょうし。ただのスッカスカの白紙を見せられても「……いや、なに????」ってなると思うんです。

 ただの白紙だとしても「この白紙を提示してきた人」が見えたりとか、「白紙を提示してきた理由」を見る側が了解しないと何も見えてこないと思うんです。そんな考えなので、「僕を殺して」という鮮烈で激しくて攻撃的だけど、ベクトルとしては自分にしか矢印が向いていないというぐちゃぐちゃした色の中に「青」を散りばめてくるのすごくすごく好きです。傍から見てる人間がいたら、そんなに自分を壊すのに一生懸命になるな!!!!!!となりますが。

Star

 軽快に始まって正直な所、ほっとしました。僕を殺しての調子で続いたら持たないなと思っていたので。Starだから憧れについて歌ってるのかなと思って聴き始めました。

 と思ったらなんかラップしだして混乱しました。ヘイ、ヨーじゃないんだよ。こっちはさっき殺してくれって言われて参ってるんだYo。

 憧れについて歌ってるのかなと思ったら全然違って、同じ星空にいる星に向かっての檄文というかお手紙、みたいなニュアンスでしょうか。

 こういう立ち位置を決めるのが難しいというか曖昧にしている歌の解釈するのが苦手です。というか歌詞の方も、通り一遍の解釈をさせないためにわざとやってると思うので苦手もクソもないんですが。アザミさんとかそうですよね。

 「絶対成功できる!!」とかいう文句に踊らせられたかもしれないけど、あの星には手は届かないと分かってしまった後、どうしよっか、っていうテーマがあってその先の曲なのかなと。このテーマ、それこそ正解をだすというか納得するのものすごく難しい。自分が納得してる方法を相手に話してもほとんどの場合、実感が伴わないので納得できないんですよね。出来てもほんの一瞬。

 この方向で詞を書くと書いてる本人の説得力とか実績とかがモロにでちゃうので曲というよりかは役割としては自己啓発本とかに寄っちゃう気がしてあんまり好きじゃないんですよ。でも、樫野さんの距離のとり方はなんとも言えない感じなので嫌い、までいかない。

 ラップパートは割と俗っぽいこと言ってるんですけど、他では自分もまだ星を目指すこと諦めきれてないし、自分の光が誰かに届くと信じてると思ってるのがわかるし、実際に樫野さんの詞はこうやって私に届いてるので「そんなの叶いっこないよ」と突き放せないこの……感じ。スゲ~やりたいとはいいながらなんもクリエイティブじゃないというか発信してない自分は耳が痛いというか、受け取って良いのかこのメッセージ、という所在なさ。錆びついた扉ほんの少し開けたらきれいな星ばっかで眩しいですほんと。

通り雨

 Starより樫野さん自身の視点から歌われてる歌ですね。こっちのほうがテーマとしては憧れに近いでしょうか。『追いかけた姿はまだ 到底届かない』はテーマにがっちり絡んでるのでわかりやすいんですけど、ソレ以外が結構言い換えとか表層から思考を飛ばしてるので読みづらい感じ。

 「雨」から。街に雨が降っていて大人と子供が出ているので、自分以外にも雨が降っているけれど、大人と子供で「雨」についてのリアクション、向かい方が違うっていうところがポイントでしょうか。ゾイドのOPの最初の歌詞すき。

 1番は「雨なんか気にせず憧れに向かって走れ」って感じでしょうか。2番がちょっとクセがあって傘をさすんじゃなくて地下街に行っちゃうんですよね。これを憧れに向かって走ることをやめた、と解釈してしまいたいところですが、とりあえずは「雨」を避けたという所にとどめて考えてみる。

 で、最後のサビ。詞として「空は晴れ」ってあるんですけど、この意味のとり方が難しくて。『空は晴れて、輝く色とりどりの世界で君に出会えるよ きっと』と広くとると、『きっと』という希望的観測が「空が晴れて」にも掛かってくるので、まだ街には雨が降り続いてることになるんですよね。たぶん、こっちのほうが追いかけた姿が見えないこととも違和感なくつながるのでおそらくまだ雨は降ってるんですよね。

 じゃあ「雨」ってなんのモチーフなんだろうって考えると「世間」とかが一番しっくりくるのかなと。もちろん他の憧れに向かうために直接邪魔してくるわけではないけれど煩わしく思ってしまうものが「雨」なのかなと。大人になるにつれて「雨に濡れながら走ること」を他人に見られることが耐えられなくなった。だから人によっては困ったような顔で濡れない場所へ消えていくのかなと。地下街を通って憧れに向かうなら「消える」という表現はしないでしょうし。

 雨に濡れることよりもずぶ濡れの人を笑う根性が自分の中にあるのがホント嫌になるんですが。自己防衛に余念がない。自分が雨の中を走れなかった、走る度胸がなかったらから濡れている人を鼻で笑う、けどどうしょうもなく妬ましい。それで雨が上がったら、雨が降っていなかったら俺だって走れるのになんてまた雨のせいにしてるんですが。なんか湿っぽくなってきましたね。地下街にいながらにして雨の中ひた走る人を素直に応援するのも中々に難しいです。

 なかなかにBadになってきましたね……

 通り雨のMV出たときにあんまり向き合ってなかったのがよくわかりました。歌詞見ながら曲聴くのしんどいけどコレがイチバン楽しい……。

ナイトフライト

 ナイトフライトはMVがあるのでそちらの印象が強いですね。曲だけ、このアルバムの中での立ち位置はどうなんだろうと楽しみですね。ポジのイメージが強いので前の曲よりしんどくならないと思って聴き始めました。

 この曲は問題提起に対してぶつかっていくというよりは、雰囲気を味わうのがたのしいかなと思うので語彙をフニャフニャにしていきます。

 構成からしてカチッとしてないというかABサビの構成じゃない曲あんまりなじみがないのでふわふわした印象を受けました。「夜を照らす」のところなんか多分終止じゃない形で「朝が来るまで」につなげてるの感じですかね。「飛べるかな」とか眠れない夜のなんとも言えない高揚感を感じました。私も飛びたい。

 好きなフレーズ選手権やります。『きっと君も眠れなくて 悪い子になった』、好き。転校してきた美人はクラスの人気者だけど誰も居ない夜の街を散歩するのが趣味であることを知ってるのは僕だけなんだ、みたいな気持ち悪さというか秘密の共有というかそういうのが煮詰まってる気がする。

 アルバムの位置的にもMV公開のときにも盛り上がった曲なので、お客的には「おいしいとわかってるヤツ」的な立ち位置がドンピシャハマってるなと思いました。ウマい。

 自分語りパートです。最近夜ふかしが出来ない生活をしているので、あの深夜の全能感と朝を迎えて絶望するあの流れがほんとに愛おしいです。でも、まぁ最高のミュージックがあれば昼間でも無敵になれるのでほんと最高の音楽って最高だなと。

白くて柔らかな

 イントロのあったかい感じが好き。けど使われなかった塔の上がわからんすぎてムズスギちゃん。布団とかストーブとかお気に入りとかのワードから猫かな????と思いましたが果たして。

 特にテーマというか落ちというか着地点がないので思い出しているようなイメージなんでしょうかね。というか生まれ変わったらとか、10年とかいう時間の流れ方からして亡くなってますかねこれ。それでなんかこうあったかいけど切ないんでしょうか。

 ねこねこにゃんにゃんかわいきもの

パレード

 イントロ大好き太郎。シャドウも好きなので私はこの感じが好きなんだなって分からせられてますね。歌詞の雰囲気も抜群に好き。『誰もが驚くようなパレードを』ももちろん好きですけど『輝く足音の最後尾』とかパレードを想像させてからのワードとしてあまりにも良すぎる。

 印象は樫野さんの活動してる中で考えたことをテーマにした曲なのかなと。そういう想いをTwitterでつぶやいて終わりじゃなくて、作品としての表現で見れるの嬉しい。白くて柔らかな、からの流れなので若干死の匂いもしますが、目をつぶって思い出しながら前を向いて歩いてるみたいなイメージなので鬱々とはしてないのが好きです。

 Cメロからラスサビがたまらなく好きなんですけど(ここのベースも好き)、この『ごめんね』を誰に言ってるんだろうとか考えるだけでご飯三杯いけます。わたしの妄想だとこの『ごめんね』は多分相手に直接言えなかったごめんねもあったんだろうな……届かなかったごめんね、それでも樫野創音は行進を続ける……え!!エモじゃん!!勝手な解釈でエモになってしまったわね……。たくさんの友達に周りを囲まれた樫野さんから少し距離をおいた最後尾にいる行進を始めた理由をくれた『あなた』の存在。気になる。いや、どなたかは存じ上げないけれどありがとうございます。おかげで樫野創音さんに出会えました。パレード参加してぇ。


Change

 低音樫野さんレアな気がしますね。ギターも他の曲となんか違う気がする。元号なんて最初に出てくるからちょっとポップな歌詞(平成ペイン、令和etc)なのかなと油断してたら急に手首切り出してびっくりしました。アルバムをBOOTHで買うとわかるんですけど『Change 』の歌詞のところにジャケ写貼ってるんですよね。こわい。

 この歌のこわいポイント、変わることに執着しすぎてどう変わりたいかが一切歌われてない所ですよね。妄執というか今のままじゃダメだって言ってどんどん負のスパイラルに入っていってる感じがすごくリアルでキツいです。きっと周りの人は「そのままの君でいいよ」って言ってるんでしょうけど全然良い意味で取れないんですよねこういう時って……。

 あとから考えると自分でも呆れちゃうくらい卑屈になって、なんでもない他人の発言を捻じ曲げて自分を傷つけるのほんとタチ悪いです。更に進むと他人を試しだしたりね。このループに入ると友達作れなくなるのでほんと気をつけたい。

 この歌詞で『あの子』になってるところがなんというか一線ある感じがしていいですよね。線を超えるギリギリまで行ってたかもしれないけど、こらえてまだ「あの子」って言えるくらいの距離感を保っている。ここがもし過去に切ってたら「あの頃」になるかもしれないわけですし。少なくとも今は「つまらない」とか「価値のない」とか言えるようになってるわけですし。良かったよかった。

 何回か聴いてるとこの「変わらなくちゃ」のニュアンスの付け方めちゃめちゃ難しかっただろうなと思ってきました。さっき書いたようにこの自分が今のままじゃいけないと思っての「変わらなくちゃ」と周りからの重圧によっての「変わらなくちゃ」ともはや思考停止の「変わらなくちゃ」が渾然一体となってる感じ、すご。

ノットオルタナディブガール

 アルバム通して聴いてからのこの曲、無限にいろんなこと考えてしまって文章がまとまらない。いや、コレ以前もまとまってないんだけど。

 変わりたいと思ってたけど、自分は誰かじゃなくて替えの効かない存在だっていうことを認知できてるのが何よりの変化だなと想います。このガールが『Change』のあの子だったり、ジャケの子だったりして欲しい気持ち。笑って欲しいとか言わないし、そのままでいいよとも言えないけど。

 聴いてる私がもう大人なので、この子にかける言葉を持たないんですよね。うっせぇわを大人が考察しても、その構造がすでに断絶された所以になってるのと同じで、どうやってもから回ってしまいそうな怖さがあります。

 同じような悪夢を見て、スターに憧れていたのに、忘れたつもりもないのに悪気もなく「青いねw」みたいに言ってる記憶があるのでしんどい。



20221109追記

ずっとしまってたけど3rdアルバムばかよかったし、上げるか!!と思いあげます。なんじゃそりゃそりゃ。

 アイキャッチは蝦夷リスさんに描いてもらったよ。


 

 

 

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