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わたしが同人誌作りを始めた理由

前回や前々回の記事でも同人誌の話を書いたけれども、あらためて。わたしは趣味で同人誌を作り続けて、21年ぐらい。得意とか、めっちゃ向いてるとかではないけど、なんだかんだ産みの苦しみに襲われながらも続けている。

わたし個人のことは興味のない人がほとんどだろうけど、今日はそうやって同人誌を作り続けているわたしが、どうして同人誌を作ろうと思ったか、作っているのか、どんな要素が楽しいと思ってやってるのか、書きたいと思う。

わたしは、装丁がやりたくて同人誌を作っている。

装丁というのは、簡単に言うと本の見た目だ。表紙にはどんな紙を使っていて、どんなデザインにして、それなら、どんな加工をして…
中身の本文のインクは?紙は?という、作品の内容自体というよりは外側のデザインや、見た目の部分に関わるところだ。


わたしが初めて同人誌に触れたのは、たまたま子供の時に訪れた古本屋さんでだった。
親が親の友達に会いにいくために県外まで連れて行かれて、その親の友達にも子供がいて、その子とわたしは友達だったのだけど、その子に連れて行ってもらって時間を潰した先の古本屋だ。

普通の古本屋だったように思うが、そこにたまたま、なぜか大手さんの同人誌がおいてあった。幽☆遊☆白書の同人誌だったのだけど…。
そのとき同人誌のどの字も知らないわたしだったが、幽☆遊☆白書のアニメは毎週見ていた。(今みたいにインターネットはおろか、一般家庭にパソコンすら普及していない時代だったので、二次創作という物自体知らなかった)

なんかいつものと絵が違うな…と思ったけど、こっちのほうが好きかも。と思って手にとった本。
大手さんの本なので内容は当たり前のように上手だし、おそらく当時ちょっとバブルもかぶっていたのだと思う。
多色刷り本文(※漫画が、黒一色ではなく、インクを二色以上使って刷ること)や、ページのコーナーごとにインクや紙が変えてあったりとめっちゃ豪華な本だった。地味に思えて、今だとなかなか本文にまで気を回した本、少ないと思う。

子供の頃の私にはとても高価な本で、たしか古本なのに900円していたと思うのだが、あの時、親にどういったのか全然思い出せないが、どうしてもどうしても手に入れたかったわたしは親にめちゃくちゃ頼み込んでお金をもらったのだろう、それを手に入れた。
その本、多分今もまだ大事にとってあるはず。

以上の出来事が私と同人誌の出会いだ。

漫画の中身はもちろん面白かったが、表紙は変形カバーがついていて、ふんわりとした色合いはおそらく多分ただの4色刷りフルカラーじゃないだろうなと思うし、本文の紙替え、インク替え、しかも分厚くて何度も何度もその本を大事に読んだ。

とにかく、「本ってこんなに自由に作れるんだ」と衝撃を受け、次に「これってどうしたらできるの?自分もやりたい」と思って、同人誌という文化にたどり着いたのだった。
その頃は普通に、クラスに一人はいる漫画を描くのが好きな少女だったので、自分も描いたものをこうやってまとめたい、と強く感じたのだと思う。

その後、もっと同人誌を知りたいと思ってアニメイトなどに通い出すことになる。アニメイトで取り扱っている同人誌は当然大手さんのものばかりなので、これまた装丁が派手だ。とにかくすごい装丁のものばかりを見ることになる。

中学生になると、知り合ったお姉さんと一緒に地元の同人誌即売会に出るようになった。(当時は交流ノートや雑誌の文通募集などで知り合うことができた)

たまたまその頃知り合った人の中に、もともと印刷屋で仕事をしていた人がおり、まだ若かったわたしは、即売会で手に入れた印刷屋さんのパンフや資料、その印刷屋の人から与えられる情報をぐんぐんと吸収し、手元にある大好きな大手さんたちの本と取り寄せた印刷屋さんの資料を見比べては、「これはこの紙」「これはこういう印刷形態かあ」「こういう加工ができるんだ!」と日々ニマニマしていた。今でもいろんな印刷屋さんの資料を集めてはニヤニヤしている。

今思うと、こういうのを努力や、がんばってやることと思わずにやるのって、なかなか素質あるんじゃ?と思わなくない。(でもどうやったら仕事にできるのかとかわからなくて結局今も自分で同人誌をちまちま作っているんですが…)


そうして、様々な装丁の知識を手に入れながらも、自分で自由にできるお金を手に入れて同人誌に本腰を入れだした私は壁にぶつかることになった。
憧れている大手さんのような、とびきり特殊な装丁をやろうと思うと、めちゃお金がかかる。目玉が飛び出るような値段だ。
売れないと、なかなか手が出しづらい。
(通常、同人誌の印刷は、部数をすればするほど一冊あたりにかかる単価が安くなるため。なのでたくさん作ってたくさん頒布できる見込みのある人は資金が回収しやすいのだ)

いや、お金さえ払えば誰でもできるのはできる。作るだけは作れる。

でも10万円とかそんなレベルでおさまらないのだ。数十万円とかする。わたしは富豪でもなんでもないし、自分でお金稼ぎを始めてから、給料も平均よりあるかないかぐらいの平凡な人生を過ごしているからなかなかそんなお金も出せない。

装丁をやりたくて同人を始めた私は、結局この壁を越えることができなかった。
やりたいけど、売れない。売れないからできない。おれにもっと力があれば……何度思ったことか…笑

今思うとまあ言い訳かな、という気もするのだけど、中身を良くするための努力をする才能もお金も、ないものはどうしようもない、という気もする。装丁も、まあ自分のできる範囲で遊んでいると思うし、それはそれで健康かも。


最近はオンデマンド印刷が流行りだして印刷もとびきりきれいになり、プリントオンさんのような、部数が少なくても大手さん顔負けの装丁が安価で自由にできるような印刷屋さんが出てきたりと、素晴らしい環境になっている。

いい作品を作る人が多いのだけど、今とにかく本にできたらいい、となにの飾りもない普通の印刷で「とりあえず印刷しちゃう」本が多くてああ~~~~もったいない~~~!!!!!と思っている。同人誌は、作品のイメージ自体を紙や特殊加工でも伝えられるのがいいところだ。加工をすると〆切が早くなるので、それが一番大変だし、とにかくイベントに本が間に合うのが正義なのはわかるのだが……。

もし、装丁やりたいけど全然わからなくて、この作品のイメージにあう紙とかなにかオススメない?とかそういうのがあればぜひツイッターでもいいので連絡して欲しい。
ゴリゴリの装丁とかじゃなくて、このセットの範囲内でできるのがいいんだけど…みたいなのでも大丈夫。

一時期は、装丁やらせてほしすぎて、周囲の小説同人を作っている人たちに、表紙を描くからといって装丁もやらせてもらっていたことがある。そういうのは今も全然やりたいので、心当たりの人は連絡してください。


自分もここ最近腑抜けていて、締め切りに追われてとりあえず印刷しとこ、みたいな本ばかり出していてちょっと違うんじゃないの?という気持ちになっている。
次の本はちゃんと、遊びたいところだ。

今こうして文章化していて改めて感じたけど、やっぱりわたしは「自分の漫画をアウトプットして作品としてまとめたい」のではなくて「同人誌で、装丁がやりたいから」と同人誌を作っているんだ。
なのでわたしにとっては、漫画を描くフェーズはあくまでおまけというか、そこがないと本にできないからとりあえずやってるのだ。
小説でなくて漫画なのは多分、最初に見た同人誌が漫画同人誌だったし、たまたま子供の時に漫画を描くのが好きな少女だったから、ひとまず取っている手段がそれというだけだろう。

同人誌の魅力の一つ、装丁。これはpixivやインターネットに掲載するときには絶対に味わえない、本ならではの要素だ。
ぜひここにも注目してもらえたらな、と思う。

今回のカバー写真は、わたしが普段ニヤニヤと見ている「箔押し見本」だ。
箔押しのプロフェッショナル、コスモテック社から取り寄せたもの。
このお店の箔押しに対する情熱がめちゃくちゃやばすぎて、リスペクトしている。

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