あせも

小さなころからあせもがよくできる子どもだった。背中がいつもかゆくて、汗をかくたびにかゆくて、お風呂に入るとよくしみた。母には、お風呂にしっかりはいればあせもはよくなるんだ、と言われて、もともとお風呂が嫌いだったから、お風呂につかるという行為がもっと憎々しく思えた。お風呂につかるとまた汗をかいて、また背中がかゆい。いい加減にしろ、と思いながら、扇風機にあたっていた。寝汗もすごいから、といって、私が寝ている間に母がタオルを背中に差し込んでくれていた。朝起きると、不思議な感じだったが、タオルケットと背中のタオル、パイル地に挟まれているのは悪い気分ではなかったと思う。

先日友人の結婚式があったから沖縄に行ってきた。中学生の頃にいったきりだから、実に十五年ぶりになる。そして、初めての一人旅だった。
沖縄はリゾート地で、人も優しくて、なんて言う。でも、旅行に行くと、その先々での評価は、個人の感想でしかないのだなと思う。どこだっていつもそう思う。自分が楽しかったか楽しくなかったかであって、その土地がリゾート地でも人が優しくても、そういう思い出はあまり残らない。私にとって、十五年ぶりの沖縄は、海はきれいだがリゾート地ではないし、人が優しい以前に外国人だらけの場所だった。海風で建物や物のいたみが激しくて、青い海よりも青い木々がうっそうとしていて、人があまりいなくて、みんな日に焼けて、寂しそうな顔をしているところだ。歴史がそうさせる、というほどは詳しくないけれど、そういう雰囲気を感じ取る人はいるのだろうと思う。そして、暑かった。

そうして沖縄で汗をかきすぎて、首筋にあせもができた。帰ってきてからも治らない。もうずっとあせもなんかできていなかったのに、ここ数年、本当にここ二、三年だけ汗をかく季節になると首筋に赤くただれが起こる。汗をかくと首のしわが湿るからかものすごくかゆい。母のように掻くな、といさめる人もいないので、赤くなってしまうのは恥ずかしいという自分の羞恥心だけで我慢する。我慢するが、一人旅だったのでひどくかきむしってしまった。髪の毛が当たらないようにくくっていても、なお、かゆい。アパートに帰った私の首をみて、夫は小さく悲鳴をあげていた。
あせもができる夏の野菜はあせもによい、にがうりはことさら、と、苦手なにがうりを食べさせられていたのを思い出して、沖縄ではゴーヤーチャンプルーを食べた。私と同じように一人で沖縄を旅したことのある夫は、本場のにがうりは苦くないから食べてこい、と自信満々に言っていた。実際、地元で食べるよりも苦くなく、柔らかかった。でも、苦味はあった。これならあせもを治すためだから食え、と言われても食べ続けられるな、という苦味だった。でも、地元に戻ってからは一度もにがうりは食べていない。

職場でもつい首を掻いてしまい、バイトさんに痛そうだね、と言われる。かゆいんですよ、と半笑いをうかべながら、沖縄で食べたにがうりのほんのりした苦さと母が背中にいれてくれたタオルの感触を思い出す。
これからくる夏を、思う。

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みなもとはなえ

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自分へ送る日々の備忘録(その2)
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