春などこなくていい

洗濯物を干していると、先日まではすぐに足先が氷のように冷えていたのに今はもうその億劫さがない。南向きの物干し場は、一日中よく日が当たる。雲一つない。快晴の陽を浴びていると、汗すらにじむような気がする。じわり、と、内臓の裏の方が暑さを感じで、それが、にじむ感じ。きっともっと暖かくなったら、その暑さは本当に汗として私の分泌腺から表面に現れる。そういうことが、ひどく恐ろしくて、春は嫌いだ。汗をかく前の、内臓の奥のざわめきが嫌いだ。春など、こなくていい。暖かな冬が続けばよいのに。

思うことは、たくさんある。吐き出したい言葉もある。あるのに、内臓の奥でずっとざわめいている。春の、暖かでもっとも美しいその日差しが、私を苛んでやまない。
こんなに美しく日が照り、生命が動きだすこの季節に、私だけが置き去りになって自分を慰めることにばかり必死になっている。かわいそうな私。一人、生きづらさを抱えて。美しい季節になっても、私は何も、楽しくない。

春など、こなくていい。こんな八つ当たりの言葉しかはけない。今は、もう、私のための言葉など、どこにもない。