主治医に「必ず再発します」と言われました

再発の不安、常にありますよね

「卵巣がんの初回化学療法を終えて寛解したとしても再発の不安が頭から消えない」そんな声を良く聞きます。
予後の検診前になると腫瘍マーカーが上がっている夢を見る。
再発していたらどうしようと思うと検診前になると不安定になる。
そんな患者さんもおられると思います。

主治医から「必ず再発します」と言われる患者さんも・・・

Aさんは漿液性がんステージ3C、術前化学療法を受けたあとに手術をし、その後、術後化学療法を受けられました。
治療を終えてホッとしたAさんに主治医がこういったそうです。
「抗がん剤が効いてよかったですね。」
「でも必ず再発しますから、それまでは楽しく生活してください。」
Aさんはパニックになり病院から私に電話をかけてこられました。
(個人が特定されないようAさんという仮名にし一般化しています。)

卵巣がん治療ガイドライン2015年版には

再発の時期は治療後2年以内が多く、特に進行癌(Ⅲ期、Ⅳ期)では、2年以内には約55%が、5年以内には70%以上が再発するとされている。
(卵巣がん治療ガイドライン2015年版;130p;日本婦人科腫瘍学会編;金原出版)


「必ず再発する」と言われたらあなたは何%の確率で再発すると思いますか?私は100%と受け止めました。Aさんも同じでした。
でもどこにも100%再発するという記載はありません。
私がAさんならば「100%という論文もってこいや!」と叫んでいたかもしれません(良い子は真似しないでください)。

このガイドラインの根拠となるデータは
Int J Gynaecol Obstet. 2006 Nov;95 Suppl 1:S161-92.
Carcinoma of the ovary. FIGO 26th Annual Report on the Results of Treatment in Gynecological Cancer.

という論文です。

この論文は2006年11月に発表されたものです。
この論文の元となる調査は海外でのもので日本ではありません
ガイドラインには卵巣がんの再発として書かれており組織型ごとではありません
2006年ごろの標準治療である初回化学療法はパクリタキセル(タキソール)とカルボプラチンの併用療法で日本でも同様であったと思います。
このnoteを書いている日付は2019年4月25日でこの論文発表から12年以上時間が経過しています。

いま、日本で行われている初回化学療法は
1)パクリタキセルとカルボプラチンを3週ごと6クール
2)パクリタキセル毎週投与とカルボプラチンを3週ごと6クール
3)パクリタキセルとカルボプラチンを3週ごと6クールにアバスチン3週ごと21クール

だとおもいます。

ガイドラインなので科学的根拠があるデータを引用するしかないためにこの論文を引用しているだけで、冷静に読んでもらえれば「参考にはなるけど、私がこうなると当てはめる必要はないかな」と思ってもらえるのではないでしょうか。

呪いの言葉に惑わされないで

私たちは社会の中に生きていて誰とも接することなく生きていくことはできません。
「人の言葉で励まされる」こともあれば「人の言葉で傷つき悲しむことも」あります。
私たちも人を励ましたり傷つけ悲しませていることがあるかもしれません。
そんななかで「あなたはこうなる」という見えない未来への呪いのような言葉ってどうしても無視できない不安になる言葉です。

今回のように「必ず再発する」とか「あなたに抗がん剤が効かない」「若いがん患者はがんの進行が早い」などなど。
そのときは
「必ずそうだと言えますか?」
「必ずというのは100%そうだということですか?」
「その根拠となる論文を示してください」

といってみてもいいかもしれません。
そうすると「100%とはいってない」とかごにょごにょ逃げると思うんですね。

それでも「必ず」というならば、今はスマートフォンにボイスレコーダー機能が付いているものが多くありますし、ボイスレコーダー機能がどこにあるかわからないときは動画を取る機能もありますので「必ずそうなることを家族に理解してもらわないといけないから」などとしてその言葉を記録させてもらいましょう。
(でも呪いの言葉を動画で見直すのも精神的苦痛になりますので無理なさらないように)

なかなか周囲の言葉の根拠となるものを調べることは難しいかもしれません。そしてその言葉を重く受け止めてしまうのも当然です。
でも「必ず・・・なる」といえることなんて人生にそうそうないとも思います。
「必ず・・・なる」という呪いの言葉をいわれたときには「いつなるのか」「どこでなるのか」「その結果どうなるのか」と「その根拠」の説明できなければ呪いの言葉と判断し、参考程度という受け止めでいいと思います

まとめ

Ⅲ期・Ⅳ期の進行した卵巣がんが100パーセント再発するなんて科学的根拠はいまのところありません
(本文には書きませんでしたが卵巣がん3期Cで16年再発せずにお元気な患者さんに勉強会でお話いただいたこともあります)
呪いの言葉を投げかけられると無視することは難しい、でも根拠を確認できないものに関しては参考程度の受け止めで呪われないように気をつけてください。

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片木 美穂

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