卵巣がんになったら「減量」が必要ですか?

主治医から減量をいわれました

卵巣がん治療後に少し体重が増えてしまったという患者さん。
主治医から「減量」するように言われたそうです。
「減量」といわれても運動習慣がある人ばかりではないし、食事はおいしく食べたい、スイーツを食べない生活なんてありえない、空腹は辛い・・・なかなか難しいですよね。
「納得がいかねば減量する気なんて起きない。」
そのとおりだと思います。

卵巣がんの原因のひとつに「肥満」がある

その患者さんがやりとりのなかで「肥満になったら卵巣がんが再発するということなのでしょうか?」と尋ねられました。
実は同じような質問をなんども受けたことがあります。

私が卵巣がんに罹患した2004年に発行された卵巣がん治療ガイドラインでは年間の卵巣がんの罹患者数をおよそ6,000人(死亡者およそ4,000人)となっているのに対し、がん情報サービス最新がん統計によると2014年の罹患者数が10,011人(死亡者が2017年に4,745人)となっており、患者が増えた背景には食の欧米化(肥満)があるのではないかと言われています。

がん情報サービス科学的根拠に基づくがん予防でも食生活のみなおしや適度な運動の大切さが記載されています。
しかし「肥満」の人が必ずしも卵巣がんを発症するわけではありません。
また「痩せ」の人が卵巣がんにならないわけでもありません。
卵巣がんに罹患する背景には様々なことが原因として絡み合って罹患します。

卵巣がんの一番のリスクは「女性であること」です。そして「排卵」。
卵巣がんは生物学的に男性である人には発症はしません。
つまり女性であることが一番のリスクです。
また排卵回数が多いとリスクが上がるといわれています。
海外では卵巣がんのリスクを軽減したい未発症者に対して排卵をとめるためにピルを処方されることもあります。(妊娠したくなったらピルをやめ妊娠に備えます)

「これが原因でがんに罹患する」とわかっているがんはまだまだ少ないです。
卵巣がんも遺伝など一部判明していることはありますがさまざまな要因から罹患するといわれています。

卵巣がん罹患後に減量を求められる理由

もし主治医から卵巣がんに罹患し治療をしたのちに減量を求められた場合は理由を聞いてみるのが一番ではないでしょうか?
もちろんみなさんがご存知のとおり、健康な人であっても肥満はよくありません。
糖尿病や高血圧、高脂血症などが起きやすく心臓への負担や血管がつまったり、場合によってはそれにより死亡するリスクも増加します。
そんなことはわかっていても、太ってしまう人はいるんです。
私もそうです。

ただこの患者さんの主治医が減量を提案したのは「これが理由ではないか」と思いつくことはいくつかあります。

糖尿病や高血圧等のリスクを減らす
ベバシズマブ(アバスチン) を代表とする抗がん剤の一部は副作用に高血圧があるため「コントロール不良の高血圧」の患者さんには投与できません。
高血圧も悪化させるといざというときに治療の選択肢が減るということになります。
糖尿病も感染症など合併症を起こしやすいことがわかっており、過去には重度の糖尿病のため卵巣がんの手術がすぐにはできないという患者さんの相談も受けたことがあります。
また肥満により手術時に気道閉塞のリスクも増えます、睡眠時無呼吸症候群になるかもしれません。
また私が昨日受講した講座では産婦人科の先生が皮下脂肪が多いと手術がとてもたいへんであることをお話されていました。
手術時間が長いとそれだけ麻酔の時間も長くなりますし体の負担も増えます。
いざというときに、糖尿病や高血圧で適切な医療機会を奪われることはもったいないですし、そもそも体の負担になるわけですから痩せましょうと指導されたのかもしれません。

リンパ浮腫発症のリスクを減らす
下半身のリンパ節を切除している場合、下半身の負担が増えるとリンパ浮腫発症のリスクがあがります。
リンパ浮腫は発症したらケアがとてもたいへんです。
あまり知られていませんが蚊に刺されることもリスクになりますので、夏の間はズボンを履く、虫除け対策をしっかりするなどしてください。

卵巣がんの手術を経験された患者さんの中には手術中の血栓予防などのために弾性ストッキングを着用された方もおられるかと思います。
年に何度か「弾性ストッキングがLサイズまでしか売っておらず困っている」という相談があります。
15年前に私が手術した際は、たまたま近所の薬局が3Lサイズを取り扱っており事なきを得ましたが、そのストッキングは患者さんにお貸ししたら私の手元に戻ってきませんでした。
病院や近隣の薬局で弾性ストッキングのサイズがなく入手困難だった患者さんにはご相談できるお店を紹介できますが、それでもサイズの限界があります。

つまり生きているうえで太っていて良いことってあまりないんですよね。
ただ痩せすぎもよくないのは昨今のモデルさんやスポーツ選手の抱える問題で報道されているとおりです。

実は私も・・・

ご存知かもしれませんが私は重度の肥満です。
これまでほとんど血液検査で注意を受けたことがなく「元気なデブ」であることに胡座をかいていました。
しかしここしばらく体調がよくないと自覚していたにも関わらず「40代になったし」「忙しいから疲れているのよね」と言い訳ばかりしていました。

昨年10月、婦人科の主治医が血液検査をしたところ「ヘモグロビンa1c」という糖尿病の指標になる値が上限6.2なのに対して12.8という異常値でした。
私がショックだったのはその血液検査の値を見ただけで婦人科の主治医が「この値だと卵巣がんが再発してても何もできないから」としてその日の診察が終わりになったことです。
患者会をしていたから糖尿や高血圧のリスクはわかっていたのに・・・。

その後、内分泌代謝科で詳しく調べたところ「2型糖尿病」「高血圧」「高コレステロール」「高度肥満」などなど生活習慣病のオンパレードで震え上がりました。

その後、真面目に運動療法や食事療法もがんばったこともあり、糖尿病に関しては正常値になりキープできています。
しかし安心はできません。
みなさんもご存知だと思いますが一度糖尿病になってしまうと一生付き合わなくてはなりません。

高血圧症に関しては減量してもコントロールが効かず、検査の結果「原発性アルデストロン症」という病気が見つかりました。
こちらも私の場合は手術が適応ではなく薬物治療を長い間することになりました。

食事や塩分をこれからずっと制限していかねばならないのかと思うとしばらくは悲しくて落ち込みました。
(栄養士さんや卵巣がん治療に携わられているいろんな先生方のアドバイスもあり、今は節制をすることを楽しんでいます。)
せっかくがんが治ったのに肥満で心不全などを起こして突然死するなんて残念ですものね。
少し雑多になりましたが肥満ってあまりいことがないことはわかっていただけたのではないかと思います。

まとめ

主治医から減量を指導された場合には「どうして減量が必要なのか」理由を確認することにより「減量をする意味を理解し納得できる」のではないか。

抗がん剤のなかにはコントロール不良の高血圧などになってしまうと治療の選択ができなくなるものもある。

肥満によりリンパ浮腫などのリスクも上昇する。

ヘルスケアの観点からも肥満にメリットはない。

一緒に減量がんばりましょう。

注:上記記事は上皮性卵巣がんについて記載しており、小児が罹患する卵巣がんは排卵や生活習慣が原因となったわけではありません。

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片木 美穂

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