丸山ワクチンは本人同意不要なの?

はじめに(必ずご確認ください)

丸山ワクチンは卵巣がんには未承認です。
現在治験として提供されていますがその有効性や安全性に関しては明らかになっていません。
私自身は丸山ワクチンを勧めることは絶対ありません。
(たぶん他のがんに関しても現状は卵巣がんと同様と思います。)

スポーツ新聞に丸山ワクチンに関するニュース

デイリースポーツに「大腸がん闘病中の大島康徳氏 丸山ワクチンを入手「あとは私の決断だけ」」というニュースが掲載されました。

この記事を読み私は自分個人のTwitterに以下のようなつぶやきをしました。

治験って十分な説明を行った上での自発的同意が必要で、この大島さんはブログ書けるんだから代諾者が必要な状態ではなく自分で同意できると思うんだが。
本人同意する前に治験薬渡すっておかしいでしょ?
厚労省、この記事見過ごすの?
(誤解を避けるため現在削除しています)

丸山ワクチンに期待するご家族からの問い合わせ

その投稿をご覧になった卵巣がん患者さんのご家族から以下の問い合わせがきました。

私の家族は現在再々再発の治療中で標準治療とされる治療が効いていません。
色々な患者さんのブログを読んで自分は丸山ワクチンに期待をしても良いのではないかと思っていますが、主治医に提案しても効果がないと一蹴されます。
新聞記事を読み家族が丸山ワクチンをもらってくることができるのであればそれにかけたいといま思って日本医科大学に問い合わせをしようとしているところです。
(個人が特定されないよう配慮し修正しています。)

私からはご家族に下記の返信をいたしました。

お問い合わせありがとうございます。
Twitterに書いたとおり「本当に本人同意なく薬剤提供がされているとなれば」とんでもないことになります。厚生労働省に確認をしますので今しばらくお待ちいただいてよろしいでしょうか?
いずれにしろご患者様ご自身がどうしたいかも大切にお考えをいただけましたら幸いでございます。

厚生労働省に問い合わせる

まずは臨床研究に関することを取り扱っている「医政局 研究開発振興課 治験推進室」に電話しました。
電話で担当してくださった方は優しく「特定の薬剤に関する治験のお話ですので医薬・生活衛生局 審査管理課の担当になります」と教えてくださいました。
窓口間違えたのに丁寧にお話を聞いていただき恐縮です。

教えていただいたとおり「医薬・生活衛生局 審査管理課」にお電話をしました。

すごいどうでもいい話ではありますが、10年ほど前に治験推進室とも審査管理課ともお仕事をさせていただいたことがありました。
担当者さんは入れ替わりすでに知らない方になっていたこと、患者会ごときに対してものすごく丁寧な対応をいずれの課でもしていただけたことは時間の流れを感じました。
(患者会を始めた頃は厚生労働省を歩いているだけで虫けらを見るような目で見てくる役人もそれなりにいました。)

この記事だけでは「本当のところ」はわからない

審査管理課の担当者とお話をしたところ結論としてはこの記事だけでは「本当のところ」はわからないということになりました。

丸山ワクチンを治験薬として提供されるには、
● 患者さんの主治医が丸山ワクチンを勧めたい
● 患者さん自身が丸山ワクチンを使いたい
という双方の意思の確認をしたうえで、主治医が治験登録書に患者さんのこれまでの病歴を書く必要があります。
そして患者さん自身の承諾書と併せて日本医科大学に提出する必要があります。

これをもしも患者さんご自身の承諾が無しに
● 主治医が患者さんの承諾無しに病歴を日本医科大学に提供する
● 主治医や家族が患者さんの同意無しに承諾書を作る
なんてことをやってしまったら「医師の倫理観はどうなっている」ということになります。

なので、丸山ワクチンを治験薬として提供を受ける手続きを考えるのであれば、冒頭の私のTwitterの投稿のように「丸山ワクチンを提供している日本医科大学が提供したことを問題」と考えるよりも、提供を求めた側の手続きがどうだったのかが気になります。

もちろんのことながら、そういったことは詳しく書かれているわけでもなく「ご本人の同意無しに治験薬が手元にあるという事態がどうして起きたのか」についてはわからないということになりました。

もしかしたら丸山ワクチンについて説明を受ける過程で「薬剤を提供してもらうだけはしてもらってあとで決めよう」という程度の思いでご本人が承諾している可能性だってありますから。
(スポーツ新聞の記者さんがそこまで深く踏み込んで聞き出すわけもないでしょうし。)

治験の参加は基本的に「本人の自発的同意」が必要です

お問い合わせがあった家族が本人の同意なく治験薬をもらうことについては「手続き上できないはずである」ことは確認がとれましたので、お問い合わせに丁寧にご返信させていただきました。
「丸山ワクチンはどうだろう」と検討されるなかには、治療に苦慮していたり主治医の説明にモヤっとされたりという事情もあると思いますので、その辺も伺ったうえで私なりにいくつかのご提案もさせていただきました。

みなさんは「ヘルシンキ宣言」というものをご存知ですか?
「ヘルシンキ宣言」は世界医師会が人を対象とする医学研究に携わる人々(医師およびそれ以外の者)への指針として示している「人間を対象とする医学系研究の倫理的原則」です。
日本で医学研究に携わる私のような一般の立場も人間(私は倫理審査など勤めています)は「ヘルシンキ宣言」と治験を実施する際に守るべきルールを定めた「GCP(Good Clinical Practice)」だけは繰り返し読んでいてもらいたいと思います。

ヘルシンキ宣言では

25. 医学研究の被験者としてインフォームド・コンセントを与える能力がある個人の参加は自発的でなければならない。家族または地域社会のリーダーに助言を求めることが適切な場合もあるが、インフォームド・コンセントを与える能力がある個人を本人の自主的な承諾なしに研究に参加させてはならない。

とされており本人の「自主的な承諾(自発的な同意)」が大原則とされています。
もちろん、本人が意思表示をできない(例えば患者が幼い子どもである、危篤状態であるなど)場合など自発的な同意が取ることが困難な場合には代諾者の同意をとることもできます。

医学的研究は「未来により良い医療を提供するため」の大切な研究でありますが、そのために目の前の研究協力者(同意する前の説明を受ける候補者も含む)がどうなってもいいわけではありません。
研究協力者のプライバシーを守ること。
研究協力者がその時点での最善の治療(もしくは同等と思われる治験薬等の提供)が受けられること。
研究協力者に研究の目的等を十分説明をした上で自発的な意思を尊重すること。
など研究に携わるものは研究に協力してくださる協力者を守る責務もあるのです
だから私は今回このnoteを書きました。

決して、大島康徳さんやその家族のお考えを責めるつもりの記事ではないということを最後に申し添えておきます。

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片木 美穂

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