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日本の政治経済の現状の理解に役立った「サッチャー時代のイギリス その政治、経済、教育」森嶋通夫著


「サッチャー時代のイギリス その政治、経済、教育」森嶋通夫著

88年発刊の本だが、今の日本の政治や行政の方向性が、当時のサッチャー時代の英国と余りにダブることに驚く。30〜40年前のやり方を敷衍しているのが日本の現状。しかし社会の行き詰まりが顕在化している。ここは皆で知恵を出し合って次のフェーズへ移行するべき時期ではないかと思う。

以下書籍内で興味を惹きピックアップした内容。

(以下引用)
反シュンペーター
(「資本主義が成熟していくと企業が官僚主義化し社会主義的になってく」へのアンチ/引用者注)

肥大した福祉国家の解体ないしは縮小させ競争社会を復活させるのが彼女の目的であり、「ビクトリア時代」に帰れというスローガンの中身である。

いかに経済中心の政治が間違っているか。純粋利潤原理の国が純粋共産主義の国と同様に恐ろしい証拠になるであろう。

このような義務感(利潤の一部を税金として社会に還元していく事/引用者注)は「利潤の原理」の強調と共に薄れていく。それと同時に金持側は「税金を納めてやった」という気になり、彼らはあたかも自分たちが政府の株主であるかのように考え出す。このような金持の潜在的気分を煽り立てるのが、サッチャーの「納税者の理論」である。(中略)大金持ちは大株主だから大金持ほど発言権が大きいことにもなる。この理論は政府を金持階級の御用政府にする哲学である。

彼女(サッチャー/引用者注)によれば次の選挙が来るまでは自分の意志が「国民の意志」なのであり、世論や有識者の批判にひるんではならないし、ひるむ必要もない。次の選挙が来るまでは自分の信念を貫けばよく、選挙に際しては、国民が自分から去らないように彼らの歓心を買うが、必要とあらば、合法的買収をふんだんに行えばよいのである。

(奨学金)凍結という名の、福祉国家の解体である。

(引用以上)

サッチャーの方向性が、日本で現在最も力を持つとされる省庁=財務省の方針を実現するのに有効では。また小泉政権以降の清和会政治がまさに「次の選挙が来るまでは自分の意志が「国民の意志」」。
しかしマクロで日本経済を俯瞰するとこの方向は、一部の勝者を除き日本社会を息苦しくさせ、さらなる衰退化を加速していくだろうと予想できる。

ということで日本の現状を理解するのに、おおいに役立つ一冊でした。


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