そんなあなたを、責めたりしないよ 少なくともわたしは

「それって彼が好きなんじゃなくて結婚したいだけなんじゃないの?」
「君は俺が好きなんじゃなくてただ結婚したいだけなんだろ。」

こういうことを言っている人のことも言われている人のことも知っている。

何故だかこのような話を聞くと、そうだよなあ、やっぱり…、と言われた側は罪悪感を持つことになる。無意識のうちにこの言葉を受け入れて、こんな思想を持つ自分だからいけないのだ、とどこかで罪悪感を持ってしまう。

ふと、この言葉にまつわる話題を最近耳にして思う。

この言葉を、したり顔の女友達(たいていが既婚者で、ほんの少しの棘とか優越感をふくませた)や恋人(彼女の不安や泣き言にうんざりだ、あるいは自信を喪失している彼)から投げかけられるあなたは、その時点で「ただ結婚だけがしたいだけの人」ではない。

何故ならば「ただ結婚だけがしたい人」は、最短ルートを決める。最短ルートで、最も自分が高く売れる方法(とても下品な表現でごめんなさい)を考えて行動している。

それはそれで、その選択をした人の自由であり、その人の人生なので何ら問題はない。だから「ただ結婚だけをする」ために、妥協(この言葉もあまりいい使い方ではないけれど)するのかもしれない。自分の中、あるいは世間的に見た条件だけでふるいにかけ、自由恋愛などを挟まない方法を選択するのが最も合理的なのだから。

冒頭のセリフを吐かれた彼女は、あなたは、きっと自分を責めるだろう。本当に彼のことを愛していれば、彼の本当の幸せを願えるはずなのに、自分は、自分の安定や安心を欲しいと思ってしまっている、だから結婚したいと思ってしまっている。条件だけで割り切って人を選ぶことができればどんなに幸せであろうか、それでも、条件や理屈では割り切れない部分で彼を好きになった。好きになったことと、彼に結婚を急かすことは矛盾しないはずなのに。それらはどちらも真実で、好きだからこそ、大切だからこそ、一緒にいたいのに。

だから冒頭のセリフを吐く人は、よく考えて欲しい。そんなこと、彼女だって分かってるんだよ。だから罪悪感を持ってしまうのだし。

「結婚だけがすべてじゃないよ」
「いろんな生き方があるよ」
「本当に彼の幸せを祈ってあげなよ」

精一杯考えて、言っていいことと言っていけないことの取捨選択に毎日ぐらぐらして、それでも毎日起きて、寝て、働いて、彼に会う日は可愛い自分になれるように努力して。不安と不満を伝えることと、なんとなく彼の機嫌を取ることを天秤にかけるように生活して。

彼女はそんなに無理なことを言っているのだろうか?彼女はそんなに横柄で、わがままで、責められるようなことを言っているのだろうか?わたしにはそう思えない。

あ、だからあれも嫌だな。職業をどうこう言うわけではないけど、婚活にしろ妊活にしろ就活にしろ、大きな決断や決意や転換を前に、不安や心配や悲しみを抱えやすい人たちに対して、それらを意図的にゆさぶることで何かを得ようとする人たち。

人のマイナスな感情をいたずらに刺激して儲けたお金に、何も感じなくなってしまうような人間にはなりたくない。

「彼と結婚するためには○○してはいけない」あるいは「○○する」とか、そういう無数のテクニック。真摯に受け止め過ぎてしまう人ほど、そういうものを鵜呑みにしてしまうから。それでまた言いたいことも言えず、傷ついたりぐらぐらしたりしてしまう。「○○才から女性の市場価値は暴落します」とか。もうそういうの、言うのやめよう。人の不安を煽って、恐怖心で誰かをコントロールするなんて、そんなの正しくない。

だけど「人はそれぞれ、千差万別の価値がある」なんていう言葉があなたにとって意味がないことも、響かないことも納得しないことも、分かるよ。でも、でも、わたしは言いたい。あなたの価値が暴落する瞬間なんて、まっすぐに、時々サボりながら、生きてる間に絶対にないんだ、と。

結婚がしたければ、条件だけで互いに合致する相手と流れ作業のようにしか進めてはいけないのだろうか。惹かれた同士の自然恋愛で、自分のライフプランとかそんなものを考えて婚姻関係を望むことは、そんなに大罪なのだろうか。

少なくともわたしはそうは、思わないよ。

あなたは一生懸命やっているし、一生懸命生きている。可愛くするのだって、お金も時間もかかることを知っている。あなたがもしも「ただ結婚したいだけの人」だったら、今のあなたとは違った選択をしているはずだから。周りにいるだいたい多くの人たちがしている(ように見える)幸せ(のように見える)生活が欲しいと思うあなたの欲求は、至極真っ当で、そんなのちっとも責められるべきではない。

あなたがどれだけ誰かに責められたとしても、わたしはあなたの控えめな欲求のことを愛しく思う。そんなあなたの欲求を、責めたりしないよ、少なくともわたしは。

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