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車窓の夜は わたしだけのもの

わたしは大阪で生まれ、大阪で育ちました。
職場もずっと大阪で、つまり大阪から出て暮らしたことがありません。

大阪の中で前から憧れていたエリアがあったのですが、今回縁あってそのエリアに引っ越してくることができました。
(縁あって、というか、自分でそこを選んで引っ越したんだけど)

めちゃくちゃうれしい。
まさか住める日が来るとは思わなかったなあ。
家賃高いけど。でもうれしい。

毎日「わたしの家、最高にかっこいーーっ!」て一人で思いながら暮らしてます。

当たり前すぎて、言葉にすることも憚られるのですが。決して安くはない家賃を払い、光熱費を払い、税金を納め、日々を暮らしている自分ってすごいなあと思います。

ツガイであるパートナーを持たず、子孫を残すための子どもを持たないわたしは、某政治家の言葉を借りれば“生産性のない人間”なのだろうなと思う。

生物学的な意味で、生殖行為をし、繁栄するための生物としてのみ生きているという意味で言えばそれはきっと正しいので、特に反論もしない。

でもまあわたしは、生物としてのみ生きているわけではない。文化を楽しんだり、芸術や学問に触れたり、そういうことをするために生きている。感情を持ち、労働をし、思考したり怠けたり挫けたりして、こうして生きている。

【ツガイである性別の異なるパートナーを持ち、生殖行為を行い、子孫を持つ人】と【そうではない人】のみが相反する属性ではない。

それこそ、生きとし生ける人々それぞれの人の数だけ、生き方も捉え方も考え方もあるのだと思うよ。

性自認も、性指向も、パートナーについての考え方も、子どもについての考え方も。【当たり前】や【普通】なんてほんとうはない。

でもやっぱり、まだまだ、年齢の高い男性たちが仕切る社会では、その考え方は異端とされる。だからわたしもそれに迎合して生きている。きっとわたしも、風変わりな人だと思われてるんだろうなあ、会社で。

不倫してるだの、愛人だの、はたまた思想強めでフェミニズム拗らせてるだの………。

実際は早寝早起きで、好物おにぎりの地味な女なのに。早く帰っても大体バナナ食べてジムで筋トレして寝てますよ。

あなたが思う【普通】や【当たり前】を、わたしはいつだって褒めたい。

【大人だから】【母親だから】【男だから】【学生だから】と、あなたが当たり前に感じて行っているすべてのことは、ほんとうは当たり前ではない。

ほんとうは、あなたの積み重なった時間や思考や感情や努力の上に成り立ったとても素晴らしいことなんだと伝えて、褒め称えたい。

求められた属性の、求められたロールモデルをこなすあなたは、実はめちゃくちゃにがんばっているのだと、わかって欲しい。

だからわたしも、自分の好きなエリアに、自分が最高にかっこいい家だ、って思える家に、引っ越してきた自分をめちゃくちゃすごいと思ってる。


バスやタクシーに夜、乗るのが好き。
車窓が切り取る夜は、とてもとても綺麗だから。

わたしは都会しか知らないけど、都会が好き。

人工的な灯りも、煩雑な音も、匂いも、全部まとめて【生活】だと思う。

ひとりで寝起きし、ひとりで暮らす。
ひとりで食事をし、ひとりで夜を見る。

この夜の中には、
味方は一人もいないかもしれない。
だけどもしかしたら、いるかもしれない。

この夜の中には、
敵ばかりかもしれない。
だけどもしかしたら、思うほど敵は多くないかもしれない。

隣の誰かの、さみしさも幸福も、わたしは知る術がないし、別に知る必要性もないのだ。だって、車窓の夜はわたしだけのものなのだから。

誰に与えられるでもなく、誰に奪われるでもない。
わたしが、わたしのために手に入れた、
わたしだけのものなのだ。

同じように、ひとりぼっちで車窓の夜を見つめるどこかのあなたにもそれが届けばいいなと思う。

音楽や文学や芸術は、そういうことを伝えるためにわたしたちに与えられた大切なツールなのだとも思う。生物としてのみ生きるのではなく、ね。

だからわたしは、ずっとそういうことを言っていたい。伝えていきたい。誰にも届かなくとも。


車窓の夜は あなただけのもの
車窓の夜は わたしだけのもの

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