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Surround me Music, Feel Good #18-井本響太ギターリサイタル-

京都の【サロット】という初めて行ったお店で、【井本響太ギターリサイタル】を聴きました。

いわゆる「サロンコンサート」のような形で、店内をコンサート用に貸し切って20名程度?のお客さんを入れての公演でしたが、規模感や(音響設備や客席が常設されたホールとは違うという意味で)きちんとした会場でないものの、演奏会として、とても素晴らしいと思いました。

井本響太さんについて、前々から知っていたわけではなく、単純にSNS告知から経歴や予告プログラムを見て聴いてみたいなと思い予約していました。…が、その期待通り、いや、それ以上の内容。

会場で配布されたプログラムをそのまま撮ってます。アンコールにR.ディアンス『タンゴ・アン・スカイ』もありました。
同じく、会場で配布されたプログラムに掲載されていた経歴をそのまま撮ってます。

プログラム全体として、実演がなかなかされない(録音はそれなり…?)な曲が中心だったように思います。けれど、説得力があり、特に音量のコントロールが冴えわたってた。

まず1曲目のN.コスト『グランド・セレナーデ』から、精度が高いだけでなく、「音楽」「ドラマ」「イメージ」がはっきり伝わる演奏で、それがプログラム全部終わりきるまで途切れることなく、ハイレベルなまま続いた。

中特に感銘を受けた演奏はトゥリーナの『ファンダンギーリョ』と、続けて演奏された同作曲家の『ソナタ』。

井本さん、フランスのパリ国立音楽院で研鑽していた時代に研究テーマがトゥリーナだったそうで、その研究の成果も演奏に反映されていると言うだけあり、新しいというか、自分は井本さんの演奏された解釈や表現がとてもしっくりきた。

トゥリーナが磨いたフランス的な教養(作曲手法)がベースにあり、むしろスペイン故郷(由来)のエッセンスが混じっているような印象のアウトプット。

背景にトゥリーナの生きた時代、印象派、国民楽派、新古典主義とかの史感が反映された響きだとすごく思った。(言うて筆者は音大出とかでないから、単なる思い込みかもだけど)

『ファンダンギーリョ』にせよ、『ソナタ』にせよ、わかりやすくラスゲアードといったテクニックや3/4、6/8の拍感はスペイン的だけど、和声はなんか不思議なとこがところどころある曲(それが魅力的)。

特に『ファンダンギーリョ』は、序盤は音楽としてはむしろフランス印象派のようなイメージから、スペイン的なテクニック、語感(国民楽派の呼び声)をきっかけにドラマチックに変容していく感じの印象を受けて、名演を聴くことができたと思いました!

また別の観点では、滅多に取り上げられないのでは?と思われるマイケル・ティペット「ザ・ブルー・ギター(ソナタ)」が表現主義的で、「伝統的なソナタ形式ではなく、概念としてソナタを副題にしてる感じ」みたいなコメントされてたけど、今回プログラム全体で、そういう(ギター)音楽の価値観の変遷みたいなのもかなり感じられた。

たぶんマニアックなセレクトになると思われるミケーレ・ジュリアーニ(マウロ・ジュリアーニの息子にあたる作曲家らしい)のロンドレットOp.4は、「滑らか」が井本さんの言う曲の特徴で、確かにM.ジュリアーニの大業でオケチックなニュアンスとは違った(でもテクニカルだし、演奏会映えはしそう)な曲にスポット当ててるところは新鮮。…だったし、クラシックギターの演奏者のレベルだけでなく、曲や史感のとらえられ方も新しいステージに変わってきてるんだろうなと改めて思った。

「ソナタ」が3つ演奏されたし、セレナーデ(ポプリ)やロンドといった形式がタイトルに示唆されているもの(つまり、ある程度「こういうものだよ」という通例や型があるはずの音楽)でありつつも、現代の、これからどんどん活躍されるであろうギタリストが目の前で弾いているのを聴くと、こう響くなんて…!

ギターに限らず、「クラシック音楽」っていう言葉から「過去の再現」をイメージする部分もあると思うけど、筆者の主観ではクラシック音楽は弾くのも聴くのもめちゃくちゃアクチュアルな行為。そういう自身の思いみたいなものも強まったな。

優れた演奏を聴くことができ、とても充実したコンサートでした。


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