Surround me music, Feel Good#5

時には直感的、時には背景にも目を向けつつの音楽クイックレビュー。

Jar of Flies/ALICE IN CHAINS

グランジの隆盛時代にニルヴァーナ/パール・ジャムと共に注目され(商業的な成功は一番早かったとか)、メンバーの麻薬問題による停滞、そしてレイン(Vo)のオーバードーズと共に一度終焉を迎えたアリス・イン・チェインズ(現在は別メンバーを迎え活動中)。

ジェリー・カントレルのギターと曲は、「グランジ」っていう括りから別のニュアンスにも踏み込んでいると思っていて、それがアンプラグドでなんとも映える。ニルヴァーナの「MTV Unplugged」と違うのは、「Jar Of Flies」というスタジオレコーディングのEP作品を作っていて、MTVに合わせた編成や作品ではないということ。

ニルヴァーナもそうですが、「グランジ」にまつわる退廃的なライフスタイルを社会反動の象徴としつつも、ある種の虚構として「物語消費」してしまった罪は重いんじゃないかなとも思う。

LOVE TRiCKY/大塚愛

大塚愛さんがクリエイター宣言をした一枚。ライヴ音源と共に良い。EDMを推すこと自体は時流でもあったけど、これまでの音源や、ライヴ毎のアレンジとその作風の広さからして、むしろ引き出しとしては昔からあり得たひとつの方法だったのだと思う。そしてサウンドクリエーターという位置付けで迎えたSTUDIO APARTMENT 阿部登の影響も大きかったのかなと。従来と違うやさぐれ感があるのが良さで、「ずっと『さくらんぼ』みたいな世界観は正直キツい。」っていう層にもブレイクスルーできる1枚ではないかと。これだけポピュラーなものを作れて弾けて歌えるのだから、後続には大きな目標であり大きな壁じゃん(笑)って思った。

REANIMATION/LINKIK PARK

LINKIN PARKのセルフリミックス集。1stアルバムが世界的にヒットした当時よりも今の方がこういうものをリリースする意欲をより好意的に受け入れられたのではないかと思う。3rdアルバム以降、シンプルなロック/ポップスへ舵を切ったこと、チェスターの自殺、あらゆることが早すぎたのだと思わずにはいられない。

ガムラン音楽

昔、浜松の楽器博物館を見学したとき、ガムランの音楽が一番好きだった。(楽器博物館、古今東西、色んな楽器が展示されてて、サンプル音源もあるので楽しいですよ。)そんなガムランは、インドネシアの民族楽器で主に寺院などで演奏される宗教音楽です。(確かに瞑想感ある。)

そして、さらにそれを西洋の体鳴楽器(カスタネット、ギロ、マラカス、トライアングル、グロッケンシュピール、日本の木魚などが分類される)チェレスタと合体させて(名付けて「ガムレスタ」)曲に使用したのがビョーク。時にあたたかく時に冷たい音色、そして複雑なリズムの明滅が美しいですね。

もちろん、このような使用楽器についての知識がなくともその美しさを楽しむことができますが、その独特な世界観のルーツを探ることで、よりいい感じに聞けるのではと思います。

angel in the street/Iliana Matos

キューバのギタリスト、イリアナ・マトスのソロ名義で手にはいる作品としては唯一これだけかと。2019年に名古屋に来日ということで(コンサートを聴きに行くことは叶わなかったものの)、この音源を知るきっかけになった。

2006年にリリースされた作品で、マトスと同郷のギタリスト・作曲家エドゥアルド・マルティンの曲集。収録曲のうち、大萩康司さんが取りあげたことで知名度のある『デ・ラ・ルンバ・ソン』くらいしか知らなかったけど、とても良いプログラムとマトスの演奏だと思う。『南国風ディベルティメント』のようなラテンの要素だけでなく「喜遊曲」としてクラシカルな手法を用いた作品や、組曲「5本の線」の3楽章『水と風の予言』では、ウィリアム・ウォルトンの名ギター曲「5つのバガテル」2楽章を思わせる響きに始まり、ブルース風に発展を見せていく。「12月のカレンダー」は、日本のような季節感のない国ではありながら、各月の印象が小品集のように納められており、いずれも親しみのある作風。技巧的な要素が強い曲も多い中で、演奏の精度はとても高くかつ瑞々しくもあり、今なお、新進気鋭のアルバムではないかと思う。

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