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#16 【戦況報告】TC第2クールは中止、プランBへ。今こそ、マインドフルに次へ進もう

本日(1月31日)予定されていた、パクリタキセル(タキソール)・カルボプラチン(パラプラチン)の第二クール投与は、急遽、中止となった。

以下、昨日起きたことのダイジェストである。

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東部戦線ヨリ(東武沿線、、、ならバッチリなのだが、入院中の病院は「東急沿線」である。関東人(*注)にしかわからない小ネタをはさんでしまった。失礼!)、戦況をご報告申し上げマス。
(注:無論、ワタシの根っこは関西人であり、決して、関東に魂を売ったわけではないことを申し上げておきます)

タキソール・カルボプラチン(TC療法)のミックス砲弾は、確実に敵基地を捉え、敵を包囲。
砲弾は見事的中。想定内の自陣地の尊い犠牲はありましたが、当月23日時点には、5.5センチから4.0センチへの縮小を認めマシタ。

初戦は、大いに善戦というのが、当初の見立てでしたが、
が、が、しかし。
本日、敵の再拡大を認めマシタ。

エー、造影CTの結果からは、敵は、6センチ超え。
SCC(腫瘍マーカー)も、24.5から49.4へと、倍増。
敵は、したたかに、TC砲弾の威力が鈍った隙を狙って、
この七日の間に、反転攻勢を開始していた模様でありマス。

エー、TC砲弾の第二回目については、明日31日に敵地ど真ん中への発射を予定しておりましたが、
ご案内の通り、この砲弾は、20日に1度しか発射できません。期間の短縮は自軍への負担が大きく、現状、リスクがベネフィットを上回りマス。

また、今回、仮に、前回同様、見事着弾、といたしましても、効果の鈍る後半期、第一回目同様、敵の反転攻勢が予想されマス。
エー、エー、
その場合、敵は一層戦力を増強し、他臓器も狙い、戦線が拡大する可能性が濃厚であり、敵殲滅の機会を永遠に失いかねないのでありマス。

従いまして、ここで、我が軍は、当初計画、すなわち、TC砲弾を、2回打ち込み、敵を縮小させてから、放射線攻撃を行い敵を撃滅、さらに、PDーL1免疫チェックポイントの最新兵器にて殲滅を企図するという、
当初の計画を放棄せざるを得ず、可及的速やかに、プランBを策定し、実行いたしマス。

以上、東急沿線ヨリ、ご報告でしたッ!!

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高熱と耐え難い痛みの原因は、腫瘍の拡大によるものだった。
SCCという腫瘍マーカーの値が跳ね上がっている。
CRP(身体の中で起きている炎症反応や組織の破壊が起きている時に血中に現れるタンパク質)、好中球も異常に高い。

TC療法の第二クールの投与は、明日なので、今日は明日に備えてのんびり過ごそうと思っていた矢先のことだった。
上記のような血液検査の結果から、にわかに慌ただしくなり、いろんな検査が入った。血液培養検査をして、すぐに造影CTに行くように言われる。
そうして、分かったことが、冒頭の「戦況報告」の内容である。

腫瘍は、骨盤壁にベッタリとくっつく形で、以前のそれより肥大し、神経や、輸尿管(腎臓から膀胱へと尿を送る管)を圧迫。右の腎臓は、再び水腎症を呈し(尿道が狭くなり、尿が出ていかないので、そら豆型の腎臓が半円のバームクーヘンを潰した格好で水ぶくれした感じ)、尿管が狭窄しないうちに、早急にステントを入れる必要があること。
また、癌性腹膜炎が疑われ、高熱の原因も、それら、がんによるものであろうということ。などなど。
画像を見た主治医の先生が、「これは本当に辛い痛みだったでしょう」と言ってくださった。それだけで、痛みが和らいだ気がした。

画像診断の結果、脳、肺、肝臓、脾臓、膵臓、、と、転移は認められない、ということも分かった。
癌性疼痛には、直ぐに緩和ケアを入れて、麻薬(モルヒネ)を処方をしていただけることにもなった。


造影CT検査が終わったのは17時。「戦況」が判明するや否や、主治医の先生が、腫瘍を専門とする先生や主任教授の先生方が、緊急カンファレンスで、次の治療方針を検討してくださったそうだ。18時からの夕食を終える頃には、プランBの詳細をお聞きすることができた。

その詳細は、また明日に譲ろう思うのだけど、先生からご説明をいただいている間じゅう、ワタシは、しみじみと、有り難さを噛み締めていた。なんて頼もしい医療チームだろう。
彼らは、「…かもしれないから、とりあえずやってみよう」という医療はしない。徹底的に、観察し、追究し、知識と経験と直観をもとに、判断を積み上げていく。
次の一手は、次の打ち手は、と、完治に導ける可能性がどこにあるのかを、必死で考えてくださっている。

それが可能なのは、ここが、医療資源に恵まれた都内の一流大学病院だからだ。
過疎地の公立病院などでは、こうはいかない、という現実がある。過疎地は常に医師不足だ。公立病院の支出のの7割が医師の人件費、ということもある(今の会社に勤める前に、医療の課題解決を図るベンチャーでお仕事させていただいた時に、実態を勉強させていただいた。本当に、貴重な時間だった)。
こんな手厚い医療を受けられるワタシは、本当に、恵まれているのだ。恵まれ過ぎているのだ。


先生は、真っ直ぐにこちらを見て、ご説明くださっている。
ワタシの目に、次の治療へと向かうにあたり、不安の色や翳りがないか、慎重に観察してくださっているのがわかる。ワタシも、真っ直ぐに、見つめ返して、お話を聞く。納得する。
全て、お任せいたします、との信頼を込めて。心からの敬意を込めて。
次、どんなに辛い治療でも、頑張り抜きます、と心に誓って。
ここまで恵まれすぎた境遇で、勇敢に立ち向かわないでどうする。


こんな一日にあっても、心が千々に乱れないのは、ケ・セラ・セラと歌いながら、どんなことでも受け止めてきた(敢えて、乗り越えた、と言わないところがポイントである)母の娘だから、ということが一つ。
もう一つは、キャリアの前半、周囲の支援があってこそのちょっとした成功に、ものすごく傲慢になってしまい、その後は、失敗と挫折の連続で、、、芯から腐り切った自分を根本から変えたくて、30歳半ば頃から、ヨガと瞑想(マインドフルネス)を実践し学んできたこと。
その思想の源流であるヨガ哲学(古代インド哲学。サンスクリット語で書かれたウパニシャッドなどの経典や、ガンジーが生涯の「生きる杖」としたバガヴァット・ギーターなど)とか、仏教哲学を少しばかり、それぞれちゃんと先生に付いて、手ほどきを頂き、勉強してきたおかげかもしれない。
脳科学の最新事情についても、ものすごく興味があって、話題の新刊があると片端から読んでいた。(マインドフルネスに関連する書籍を、文末に少しだけご紹介したい)。


今、ここにいる、という真実。
心は、常に揺れ動き、いつも、儚く脆く不安定な想念を創り出す。
まだ起きてもいないことについても、「もしも、もしも、、」と考え始め、不安に苛まれ、悲嘆に暮れたりする。
脳は、現実と、非現実の区別がつかないからだ。
だから、私たちは、フィクションの映画に手に汗握ったり、ハラハラと涙を流したりでき、仕事の納期を逸したしまったかもしれない!という気づき(思い、だけ)に、鼓動が乱れ、卒倒しそうになったりするのだ。


今ここに生きていること。確かなことは、今、という現実だけ。
頼りになるのは、今を、どう生きるか、だけなのだ。

無知無明の闇を照らすのは、知恵だ。先人は、もう、一生涯に学びきれないほどたくさんの知恵を、残してくれている。

チンパンジーは絶望しない、という話も紹介したかったのだけど、それも、また明日か、その先で。
読んでくださり、心より、お礼申しあげます。貴方のおかげで、頑張れます。


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マインドフルネスの書籍は沢山ありますが、科学的視点に立脚しつつ、内面の平和や世界の調和について、考えを深められるおすすめはこちらです。ひとまず、厳選3冊!手始めに③から(タイトルが怪しくない?と思われるかもしれませんが、とても良い本です。日本におけるマインドフルネスの第一人者の荻野淳也さんが、あとがきを書いておられます)、というのが良いかもしれません。
以下、リンク付きです。

①  ティック・ナット・ハン『沈黙:雑音まみれの世界のなかの静寂のちから』

ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェ『今、ここを生きる:新時代のチベット僧が説くマインドフルネスへの道』

ジェームズ・ドゥティ他1名『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』


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写真は、ヨガ修行と、そこでの心の旅を共にしたSAORIさんが、アンゴラで撮ったImbonderio(ポルトガル語らしい)=バオバブの木。彼女は写真を送ってくれたLINEに、こう書いてくれた。
「バオバブはセネガルの言葉で『一千年の木』という意味らしく、ゆみさんにもバオバブのように長生きして、たくさんの人に、ゆみの学んだことを伝えていってほしいなと」
ポロポロと涙がこぼれる。温かい涙。

今、ここに生きる、にしても、
人は、人によって生かされている。
ありがとう、SAORIさん。
貴女の純粋で澄みきった心が、ワタシに勇気をくれる。

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