見出し画像

誰かの「やりたい!」が、人と人が繋がることで循環していく鎌倉という場所|ハルバル材木座 伊藤賢一さん

東京から電車で1時間の人気観光地である鎌倉は、国内外から多くの観光客が訪れます。そんな鎌倉の材木座エリアに「ハルバル材木座」というコワーキング・コミュニティスペースがあります。​​
人との交流が生まれる場として、ハルバル材木座では常に色々なワークショップやイベントが開かれており、筆者もハルバル材木座で自身のワークショップを開催したことがある利用者の一人です。今回はオーナーである伊藤賢一さんに、ハルバル材木座を通してみる鎌倉の魅力をお伺いしました。


早期退職して鎌倉に飛び込んだ

ハルバル材木座の看板

ーーハルバル材木座を始めたきっかけと、ハルバル材木座がどのような場所なのか教えてください。

32年間テレビ局で働きましたが54歳で早期退職し、2021年の3月31日に元自宅があった場所にハルバル材木座をオープンしました。30年以上テレビ局にいたので業界のネットワークしかなくて、住んでいるにも関わらず鎌倉には全くネットワークはありませんでした。例えば60歳で定年退職してから何かを始めようとすると、 定年されたんですねっていう枕言葉がつくだろうなと思って。そうではなくて、自分の意思で辞めて自分から鎌倉に飛び込むということをしたいと思っていました。その時に生まれた発想が、「人が集まる=コワーキング」しか思いつかなくて、それで始めました。

今はハルバル材木座という母体があって、コワーキングやワークショップを開催するコミュニティースペース運営として「ハルバルスペース」があります。国家資格キャリアコンサルタントの資格も持っているので「ハルバル人事部」としてキャリア相談をしています。来年の春からは鎌倉と地方のもの作りをする人を繋げる場所として「ハルバル商店」というお店をオープン予定です。

ーー私がハルバル材木座に初めてお邪魔させていただいたのはオープンしてすぐの頃で、柔らかいオーラを発する伊藤さんは鎌倉の人!という印象が最初からありましたが。

実家は長野県で、大学卒業まで埼玉に住んでいたのでどちらも海なし県。なんとなく海の近くっていいなと思って、鎌倉も逗子も葉山もよくわからない状況で物件を探していた時に、たまたま材木座エリアに出会ったんです。単純に海があるところの近くに住んでみたいという気持ちでした。
毎日の生活はというと、朝7時に家を出て帰宅するのは夜11時みたいな日々を送っていました。子供のサッカースクールの親同士の繋がりはあってもそれぐらいで、”◯◯君のお父さん”。という認識はあっても、地域コミュニティーとの繋がりは全然ありませんでしたね。

メインスペース
二灯の時間というイベントにて

人と人がどんどん繋がっていく不思議な場所。

ーーそのような日々から一転してハルバル材木座の運営に。ギャップなどはありませんでしたか?

​​よく鎌倉以外の人から言われるのですが、鎌倉は1人に繋がると次々に繋がってく感じがあります。それが普通だと思っていたのですが、「それ、鎌倉だからですよ」と何人もの人に言われますね。僕のように個人事業主とか会社をやってたり、本当にやりたいことをやってる人が多いから。 
そういう人たちは自然とやっぱり繋がりやすいのかもしれない。

ワークショップの様子

ーーこの土地に自分のやりたいことをやっている人が集まるのは、何かがあるのでしょうか・・

東京から1時間で自然も多いし、最初は環境的な興味から始まると思うのですが、1回地域に入ってみると、わけのわからない面白い人がたくさんいます。(笑)少し話すだけで、そんなことやってるんですか、じゃあ一緒になんかやりましょうか!みたいな会話がすごく起きやすくて、 そうするともうどっぷり浸かっていくのだと思います。

ーーわけのわからない面白い人、いっぱいいますね。(笑)
伊藤さん自身はハルバル材木座を始めて鎌倉への心境の変化はありましたか?

単純な言い方だけど、本当に鎌倉が好きになって、 鎌倉に引っ越してきてよかったなって、しみじみ思います。色々な人と知り合うことになって、普通に道を歩いていても誰かしらに会って挨拶したり。あとコミュニティーの中では僕は年齢的に多分上の方だと思うのですが、年齢とかあんま関係ないところが鎌倉のいいところでもあると思います。

自分のやりたいこと、ペースを大切に。

ワークショップの様子

ーー自分が「好き」な地域に住むということで、心も生活も何倍も豊かになりますね。さらに鎌倉が好きになった伊藤さんが思う、この土地の魅力って何でしょうか。

​​さっきの話にも繋がりますが、外から来た人でもどこか1つでも居場所を作ると心地いいと思うんです。 そこに行けば知り合いがいる、みたいな雰囲気を作ってくれる場がいくつも鎌倉にはあるから、そこが魅力だと思います。ハルバル材木座にも3、4ヶ月に1回来てくれる漫画家さんがいますが、たまにでもいいからふらっと行ける場所があると思ってくれるのは良いですよね。

あとは、普段バラバラに活動してる人たちが何かの趣旨に賛同するとばっと集まって、終わるとまた散ってく。 ずっと無理に繋がる必要はなくて、やめたくなったらやめていいという環境がここにはあるなと思っています。自分がやりたいことを大事にしていいよって言ってくれるような、自分のペースで暮らせるところにも魅力があると思っていて。自分の考えを持って暮らしている人が集まるところであり、そういう人って魅力的じゃないですか。近くにロールモデルがたくさんいるのは重要なことだと思います。

ワークショップの様子

ーー土地と人の懐の深さを感じます。伊藤さんご自身も、今後鎌倉で挑戦したいことはあるのですか?

鎌倉という場所と、日本のいろんな地域でもの作りをする人たちを繋げたいという思いがあって、4年目になる来年の春から、「ハルバル商店」というお店を一階のスペースを改装して始める予定です。

鎌倉といろんな地域が繋がって、そこから人も繋がってくことで何かに貢献できたらいいなと思っています。鎌倉と逗子と葉山の作り手の人と、沖縄の作り手の人から始める予定で、作品はもちろんですが、その人に実際に会いに行って話をするという過程を大事にしたいと思っています。人にフォーカスした商店です。

作品のコンセプトなども作り手の思いが伝わるように書いたり、私が代弁者となって伝えますが、買わなきゃいけないという風には思わなくていいんです。本当に雑談しに来るだけでいいので、20代30代の人にも来てほしいなと思っています。

和室を含む一階スペース全体がハルバル商店になります

リアルに足を運び人と会うこと。とりあえずやってみる。を伝えたい。

ーー日本各地の作り手さんとの出会いが楽しみです!ハルバル材木座を通してどんどん繋がりが生まれていると思いますが、さらに新しいことを始められる伊藤さんの、日々の活動の原動力はなんですか?

やってみたいことが前々からあったわけじゃなくて、やっぱりいろんな人と会うことによって急に降りてきますね。それをすぐにやれる環境に今いるということが原動力です。

キャリアの中でも、「計画的偶発性理論」という理論があって、 これからの世の中どうなるかわからないですよね、だから先のことを考えてもしょうがない。とにかくありたい姿を走りながら考えるという考え方で、その過程でいろんな偶然がやってきて、点と点が結びついて面になっていく、みたいな。
振り返ると、うまくいったなということの8割は偶然から来てると思います。 ただ、その偶然を得るためにはとにかく動かなきゃいけない。好奇心を持つとか、楽観的であるとか。それを日々実行しています。

ワークショップの様子

ーーなるほど!今何がしたいか明確にわからない人にとっても、好奇心を持って人と会うことでその先に何かを見つけられることがある。特に鎌倉では多くあり得るということですね。

今大学でキャリアの講義をしていますが、それをすごく伝えています。 大きなプランで大きく動こうとすると準備が大変だとかで結局動けなくなるから、好奇心を持ったら、少しで良いからまず動く。そうすると新しい気付きと出会いがある。そしてまた好奇心が生まれる循環になっていくから。

最近リスキリング(​​Reskilling)としきりに言われていますが、リスキリングにも事前にしっかり勉強して資格を取ったり、準備が整ったところで動き出すパターンと、とりあえずやってみることで自分ができないことがわかって、必要に応じて再度学ぶパターンの2つがあると思うんです。僕は後者の方がいいと思う。とりあえず、やってみることを学生に伝えています。

ーー最後に、ハルバル材木座の「ハルバル」と言う言葉が素敵ですが、伊藤さんのどんな思いが込められていますか?

とにかく、リアルに会いに行くっていうのをすごく大事にしています。ここを始める前も、沖縄の大宜味村という那覇から100キロぐらい離れたところにコーキングスペースがあって、そこの方にどうしてもお話を聞きたいなとずっと思っていたんです。スケジュールが取れず30分もいられなかったのですが、今もずっと繋がっています。

ハルバル出向いて実際にお会いする、目にする。そこに身を置いてみる。ということを大切にしたいからこそ「ハルバル材木座」と名付けました。

伊藤さんの集めるアート作品達がハルバル材木座にはたくさんあります

人と人の繋がりや、それぞれの「やりたいこと」を大切にしてくれる鎌倉。
伊藤さんご自身がそれを体現されていて、間違いなく鎌倉を魅力的にしている面白い人の一人です。

ハルバル足を運びリアルで人と繋がる。行動を起こせばそこで新たに出会う人がいて、もしかしたらその出会いがあなたの人生に何か素敵なきっかけや気づきをもたらしてくれるかもしれません。ぜひ鎌倉に足を運んでみてください。きっと誰かが迎えてくれます。

<取材・文:Mary>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?