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逆さ富士七転八倒 毎週ショートショートnote

売れてない画家の清水ではあったが、初の個展の為に目玉の作品を描かなければならない。自称風景画家の清水は「逆さ富士」を選んでしまった。

河口湖畔にスケッチに来たが、湖面が波打ち逆さ富士が見てとれない。
清水は一計を案じた。湖面に映るはずの富士は逆さ。ならば己が逆さに見ればよい。股覗きで富士をスケッチしだした。

「うん、これはいい、これはいいぞ」調子よく描いていたその時、ぐぎっと変な音がし激痛が…うぐぅ、ぐわっ!清水は股の間から頭を出した新体操選手のような状態で激痛にもがく。まさに七転八倒。

しかし、清水は痛みを堪え固まったその状態で描く。痛みに筆が揺らいだおかげで信じられないがいい湖面上の逆さ富士が描けた。
作品名は「逆さ富士七転八倒」でいいだろう。

よし、これでアトリエに帰ろう。
しかし身体が固まり元に戻らない。
清水は股覗きの姿勢のまま、カニの横歩きでバス停まで出てきた。

妖怪カニ歩きが出たと近隣は七転八倒の大騒ぎとなった。

完410文字


たらはかにさんの毎週ショートショートの企画に参加させていただきました。今週の裏お題「逆さ富士七転八倒」
私自身は逆さ富士なるものを絵や写真でしか見たことはありませんので、その美しさを表現はできないしと思ってたら、やっぱりこういうのしか思い浮かばなかったです。七転八倒とはもがき苦しむ意のほかに大騒ぎする、上や下への大騒ぎと同義に使われるということで、まさに上が↓でということでこうなりました。ネタかぶりの作家様がいたらごめんなさい。

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