もしも無職に恋したら その1

事の発端

 こんなアンケートをとった。確か、職場恋愛ってしたことないな〜という話をした日だったと思う(*1)。

 総回答数578(*2)。ご回答くださったみなさま、ありがとうございました。今初めてご覧になった方、いかがですか? 私は「見たい」です。
 ところでアンケートをとる時はなるべく対象外の人が出ないようにしたくて、それではい / いいえの2択に「好きなひとが無職」を加えた。人生そういうこともありそうだから。ただ票が本当に入るかは半信半疑だった。
 が、無職票、結果は13%。人数に直すと75名。少数派ではあるが、そこには75組(*3)の "無職の人と、無職の人を好きな人" がいた。人生〜!

*1
職場恋愛の話は以降まったくどうでもよくなっている。

*2
私のTwitterアカウントのフォロワー数は実施当時300前後だったから、非フォロワーの方にもご回答いただいたはず。なのでこのアンケート結果は "ラブまっしぐらのフォロワー" に偏ったものではないとみなした。しかしまさかこんな数になるとは……。

*3
「好きなひと」が回答者同士で重複しているならこの限りではないが、さすがにそれはないものとさせていただいた。あったらすごいけど。

公園で散歩もいいけれども

 「好きなひとが無職」、恐縮ながら未知の領域である。真っ先にこう思った。
 「……デートどこ行こう」。
 デートできる前提なのがおこがましいが、でも実際どうしよう。 デートに限らず、生きていて遭遇するイベントやアイテムは有料のものも多いじゃないか。人生は長い。私は観覧車に乗りたい。 愛はお金で買えないが、観覧車には愛じゃ乗れない。交通費はどうする? 入園料は? 乗り物券は? 私が払っていいのか? でも毎回は無理だな? 完全な無職でなければ(*4)なんとかなるか? 考えれば考えるほど、不安だ。
 ということで、

疑問をまとめ、教えていただける方を募集した。すると、

なんとありがたいお申し出。びっくりした。とんとん拍子にインタビューの日取りまで決まり、めでたくお話を伺うことができた。

*4
フリーターなど、雇用や収入が不安定な有職者を想定している。

今回のお相手

 Aさん(30代前半・女性)は芸術大学出身の会社員。初対面にもかかわらず、かなり踏み込んだお話を聞かせてくださった。「好きなひと」は2歳上の男性、お笑いや舞台をやっている方だそう。
 それではAさんの恋、どんな感じですか?

Aさんと彼

ラブまっしぐら(以下、ラ) : ……というわけで、いきなりですがおふたりは遊園地デートってできそうですか?

Aさん(以下、A) : 彼は一応アルバイトをしていて完全な無職ではないので、遊園地には行けます。他でいうと、例えば旅行はしたことないです。あとは……そういうことよりは、基本的な生活水準がかなり違うので食事とか……私は、安くてにぎやかな居酒屋もいいけどたまにはちょっと高めのお店でおいしい物も食べたいんです。で、そういうお店に彼を誘うと、なんとなく静かというかウキウキはしてない感じというか。ただ彼なりに、私といる時はお金のことを気にしないようにしてくれてるみたいです。

 : 彼、まったく収入がないわけではないんですね。

A : はい。ずっとアルバイトはしてます。今まで定職についたことはないらしいですけど……。

 : 一度も? それはそれですごいですね……体を壊したりしなかったんでしょうか。

A : ですよね。彼、すごく生命力があって……無人島に流れ着いても生き延びそうな感じの人です。そういうところは好きですね。あとは趣味とか、物の見方とか。

 : いいですねえ。既にお付き合いされているとのことですが、なれそめは?

A : 1年くらい前にTinderで。連絡したその日に会って、お互いほぼ一目ぼれみたいな。

 : あら〜!

A : それまでも男性とお付き合いしたことは何度かあるんですけど、自分としてはそこまで積極的な感じではなくて。それが彼に対しては、すごく心が動いてしまって……ほんとに、生まれて初めて。フリーターだっていうのは後から知りました(笑) そういう人と付き合うのも初めてですね。

 : 初めての無職。 いや無職ではないですが。

A : はい(笑) でももし彼が完全な無職だったり無気力なフリーターだったりしたら、さすがに好きにならなかったと思います。私自身仕事が好きなタイプなので、そういう人はちょっと無理ですね。このアンケートも、私は回答してないんですけどするとしたら「見たい」です。

 : 無職票ではない(笑)

A : ないです(笑) 実際見に行ったこともあります……料理運んでました(笑)

 : えらい(笑) あ、彼の舞台も観に行くんですか?

A : はい。頑張ってる彼が見れるので嬉しいです。ただ本番前はいつも生活がめちゃめちゃになっているので、そういう意味では舞台が100%楽しみとは言えないですね……。

 : あっ、そういう……稽古終わりに毎晩飲み会とか?

A : そうですね。まあ本番前じゃなくても飲んでますけど……そういう、なんというか社会性がないなって感じるところは結構ありますね。

愛・お金・社会性

 : 社会性がない……。

A : さっき言ったような金銭的な部分って、私にとってはまだ "可能なら" レベルのことなんですよ。もし結婚とかを考えるなら不安ですけど、そうでなければ私自身は自分の生活をちゃんとできているし、いいんです。なのでそれよりも、社会性……そっちのほうが根深いですね。

 : 何か具体的にありますか?

A : 予定を立てられない、約束を守れない。定職についてない人が全員こうだとは言わないですけど、彼はおそらくそういう面で定職につけなくて、フリーターをしているところもあると思います。

 : 例えば毎日決まった時刻に決まったところへ行くのがまず無理、とか?

A : そうですね。バイトも、だいたいLINEで「この日いけます」みたいな感じでやってるみたいです。さすがに大まかなシフトはあると思いますけど……だから3か所くらいで働いてて、それぞれ入れる時に入る感じで。これバイトだけじゃなくて、私が「来週空いてる?」って聞いても無理なんですよ。今夜飲もうよとか明日会おうよとかが限界で。

 : え、来週でもだめですか。

A : だめですね。だから会いたい時は私が予定を調整するしかなくて……私ばっかり、って思うことは結構あります。彼は彼なりに私のことを好きらしいんですけど、私のために予定を合わせてくれるとかはあまりないですね。

 : え〜。

A : それはフリーターだからっていうのもあって……もし彼と一緒に旅行しようってなって、何日かまとめて休みをとるとしたら、私は仕事をやりくりして休めるんですよ。でもアルバイトだと出勤できなければそのまま収入も減るわけじゃないですか。やっぱりなかなかそういう休み方はできないですよね。

 : 確かに。

A : あ、最初に戻りますけど、前に「私が払うから旅行しよう」って言ったことはあります。 その時は「それはさすがにできない」みたいに言われて、そういう価値観はしっかりしてるんだな〜と思ったら最近は「払ってくれるなら行ってもいいな」とか言い始めてて……それはそれでムカつくなと思って結局行ってないです。まあ予定を立てられない限り無理なんですけど。

 : 根深い……でも彼Tinderはやってたんですよね。マッチングアプリって知らない人と約束して会うものじゃないですか、しんどくなかったんでしょうか?

A : 本気度が高いアプリだとまた違うんでしょうけど、Tinderはパッと連絡して即会うみたいなことが結構できる感じしますね。「今夜空いてる? じゃあ会う?」的な。だから大丈夫だったんじゃないかな。

 : ああ〜。

A : あと男性も無料で使えるし。

 : それは……有料だったら彼も登録してなかったかもしれないですね……。

A : (笑) そんな感じで会ったので、最初は社会性のなさにも気づかなかったです。

 : あっ、先の予定じゃないから。

よその常識はうちの非常識

A : もう彼の場合、遊園地の入園料より「来てくれるか」「そもそも予定を入れてくれるか」ですね。

 : 職、関係ない……。

A : この前「今夜家行っていい?」ってLINEがきて、いいよって返事して家で待ってたんですけど、そこから連絡がとだえて……私は翌日仕事だったから結局寝ちゃって、朝起きたら「友だちと飲んでて終電乗ったら寝過ごして高尾山に着いてた。知らないおじさんの案内で日の出見てきた」ってLINEがきてました……。

 : それは……いや確かに生き延びる力を感じるエピソードではありますけど。

A : あと、何回目かのデートの時、ちょっと遠出しようよって話になったことがあって。彼から「じゃあ○○駅に朝9時で」って言われて、私はその駅を通らないルートのほうが行きやすかったんですけど……そういう気遣いのあるなしとかも今思えば社会性の問題ですよね……まあ会って間もない頃だったしそれで約束して、当日その時間に行くじゃないですか。いなくて。LINEも既読つかないし、通話も出ず、そのまま2時間待ちました……。

 : うわーっ!

A : そういえば家知ってるなと思って直接行って、ピンポン鳴らしまくったら出てきました。朝まで飲んでて寝てたらしいです……。

 : つらい……。

A : 文化が全然違うんですよね……周りもフリーターとか無職の人が多いみたいで、そのコミュニティでは多分それでもなんとかなるんですよね。それこそ朝まで飲んでるのが普通だったり。「今夜中に連絡する」って言って朝9時くらいにやっと連絡くるんですよ。

 : 飲み終えるまでは夜だと。

A : どういうこと? って。むこうに悪気がない分、指摘したり話し合ったりするのにもすごく消耗して……。

 : 異文化コミュニケーション……。

A : はい……彼の友だちやお笑い仲間の集まりに一緒に行って、彼女ですって紹介してもらったこともあるんですけど……私が会社員だって言っただけで場が 「え?」って感じになりました。疎外感ありましたね……つらかったです。

 : 逆はたまに聞きますけど、そっちもあるんですね……。

A : 私の友だちとかは芸術系の人も多いので「えっ彼氏お笑いやってるんだ、へえ〜」くらいですけど、会社で言ったら「え? 大丈夫?」ってなるだろうなとは思います。とはいえびっくりしました……。

それでも好きなのは

 : そうですよねえ……よく1年もお付き合い続きましたね。

A : 友達に話すとみんな「なんで別れないの?」って言うんですけど……実は私、彼の顔がものすごく好きなんです。

 : 顔!

A : とにかく私のツボに突き刺さる顔で。誰が見てもってタイプではないんですけど、私にとっては例えば石原さとみさん・新垣結衣さんレベルで "顔がいい" んです……だから顔を見るとたいていのことは許せちゃうんです。あ、前に「俺の好きなところってどこ?」って聞かれた時に「顔」って答えたら怒られました。顔が好きって最上級の褒め言葉だと思うんですけど……。

 : そう思います……いいじゃないですか、「顔が好き」。

A : Tinderを始めた理由も、あまりにも自分の心が動かないので "心が動く相手は一体どのくらいの割合で存在するのか" が知りたかったからなんです。人の顔写真が次々に出てきて好きか嫌いか分けていくシステムになっているので、好きだなと思う人の出現率がどれくらいか測ろうと思って。

 : どうでした?

A : 0.03%くらいでした。

 : 少なっ!

A : (笑) だから会ってみて、付き合いたいと思ったし、1年続いたんだと思うんですよね。

 : 続く理由としては充分ですよね。

しかしまさかの

A : ……ここまでお話ししておいて何ですが……今日このあと別れ話をしようと思っていて

 : ええ!?

A : もう会う約束してるんです。そっちのほうが先に決まってました。

 : よくその状態でここまで、というかそもそもお声を掛けてくださいましたね……。

A : 「好きなひと」であることには変わりなかったので……好きは好きなんですけど、違う文化と1年間ぶつかり続けてズタボロになってしまったし、彼がそう簡単に変わらないこともわかったので。友だちに相談した時、「もう人間じゃなくて何かの動物だと思ったほうがいいよ」って言われたんですね、じゃあ動物として見るために一回距離をおいてみようかなと。

 : 動物……わかる気もします。

A : 顔もだし、好きなところはあるんですけど、どれも彼個人の性格や性質であって "私といる時の彼" じゃなかったんですよね……。

 : それは……一緒にいなくても、遠くから眺めているだけでも、ってなっちゃいますよね。

A : そうですね。あと今、彼がベストの状態でないというか、ちょっと太っていて(笑) 別に太ってても好きなんですけど、今なら切り出せるなって……ベストに戻っちゃったら、また顔見て許しちゃうから。

 : それは今しかないです。

A : (笑) もう、ちゃんと幸せになりたくて……穏やかな気持ちで過ごしたいです。いつかは結婚もしてみたいですし。

 : ぜひ幸せになっていただきたいです……。

A : ありがとうございます。頑張ります。まだ既読つかないから、今日も起きてないかもしれないですけど……。

 : ……絶対に幸せになってください!!

まとめ

 やはりデートできる前提はおこがましかった。しかし、まさかそんな理由の場合もあるとは……Aさんもおっしゃっていた通り、皆が皆そうとは限らないが。
 というわけで今回は、お金以外にも大切なものがあるということを痛感するインタビューとなってしまった。Aさんには本当に幸せになっていただきたい。

最後に

 ぜひ、他にも色々な方のお話を伺いたく思っている。
 好きなひとが無職またはそれに準ずる、かつインタビューをこのような記事にしても大丈夫という方、いらっしゃいましたらぜひご連絡ください(*5)。お待ちしています。

*5
Aさんから「無職系の人を渡り歩いちゃう人っているらしいじゃないですか。元彼全員バンドマンとか。そういう方のお話も聞いてみたいです……」というご意見も頂いた。私も聞いてみたいです。

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コメント1件

想像以上に面白かったです。やっぱり価値観て大事なんですね。笑
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