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【マンガ業界Newsまとめ】キャプテン翼ネーム連載開始へ、DLSiteでVisa/Master/Amex決済停止 など|4/7-148

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

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「キャプテン翼」新Webサイトにてネーム形式で連載 4月4日に第1話を公開

1981年に連載開始した『キャプテン翼』が、通常の漫画作品としての43年にわたる連載を終了し、4/4より新Webサイトにて、ネーム形式という珍しい形での連載を開始しました。

「今63歳で、80歳まで生きて描けたとしても、あと20年で今までどおりの作業をすると、連載しているオリンピックのシリーズの決勝まで描くのがやっとですし、その前に自分が死んでしまう可能性もあり、その後の翼が目指したワールドカップを描ききれずに終わってしまうことはすごく人生の中で悔いが残ると思いました。(以下略)

記事より、高橋さんのインタビューを抜粋
記事より引用した高橋さんのネームサンプル (c)高橋陽一/集英社
<通常、引用表記に©はいれませんが、記事からそのまま転記して引用>

画像を見る限り、ネームと言うよりは下書きに近い形でキャラの表情や動きも鉛筆で充分わかり、セリフにはフォントがしっかり入ってますね。要するに作品として鑑賞に堪える状態で、ストーリーを十分追えそうです。

これで、構想されているシリーズ完結に向けて描き切られることを考えてらっしゃるようですね。手ずから描かれる制作の進行は早まるでしょう。

また、ネームがあるということは、作画を何らかの形で代行する形もあるかと思います。以下のようなことが考えられるかもしれません。
・アシスタントや、他の漫画家が作画を代行
・作画代行企業が作画(例:インベスターZのアルトラE社など
・今後の技術確立で、AIによる作画代行 など

『キャプテン翼』は、ゲームなどでも現在展開中で、そのファン層の広さから世界中の多くの方が続きを待っていると思います。それを受けての、新しい取組となっていくかもしれません。

ネーム連載を読んでみると、脳が作画を勝手に補完して普通に読めてしまう面白い体験ができました。早田君の髪型とか。


DLSiteでVisa、Mastercardが利用停止に 過激表現の言い換え予告から一週間

先週、表現の伏せ字や言い換え等の対応で、クレジットカード会社の決済への対応をしていたエイシス社のDLSiteですが、今週のタイミングでVisa/Masterカードが停止、American Expressも一時利用停止と、厳しい状況になっています。現在は、カードではJCBのみ、他にPayPayやコンビニ決済ほかの支払い方法で対応中とのこと。

また、成人向けアニメコンテンツの制作・月額見放題サービスを提供している「ピンクパイナップル」も、4/12以降Visa/Masterの決済を行ってるユーザーの月額見放題が自動的に解約されるとのこと。

DLSiteやDMMに、今回のピンクパイナップルなど、成人向け作品を主眼にしている作品は、今後この面で一層厳しい対応を迫られそうです。

先週の当まとめでは同じニュースで「ニーメラー」の故事を引きましたが、性表現におおらかな日本のエンタメ作品全体にとって非常に重要な局面に入っていると言わざるを得ません。

ナチスが共産主義者を連れさったとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。
彼らが社会民主主義者を牢獄に入れたとき、私は声をあげなかった。社会民主主義者ではなかったから。
彼らが労働組合員らを連れさったとき、私は声をあげなかった。労働組合員ではなかったから。
彼らが私を連れさったとき、私のために声をあげる者は誰一人残っていなかった。

マルティン・ニーメラーの言葉に由来する詩、より

巨大なグローバル企業である海外決済企業との折衝や、代替決済手段の模索など、一企業で取り組むには大き過ぎる事案です。出版社、クリエイター、プラットフォームや流通企業など、関係者みなの問題と考える必要がある局面と思いました。

タイミングを同じくして、DLSiteを運営するエイシス社の親会社、viviON社の代表でもある明石耕作さんによるインタビューが記事なっていました。採用サイトのものですが、なかなか外に顔を出されない方なので珍しいです。
ただ、記事を制作する時間を考えると、偶然今回のタイミングになったまでと思われ、本件に言及するところはありません。

(注記:明石さんを創業者とかいてしまっていましたが、実際は青木信夫さんが創業者でしたので、修正させていただきました。大変失礼いたしました。)


国内News

Link-Uがホールディングス化で社内式典。
小学館マンガワン2代目編集長の、村山広氏が登壇。


小学館少女漫画誌公式通販メディア『ブルームアベニュー』が、小学館コミック誌総合通販メディア『COMMIXYZ(コミクシーズ)』に引っ越しとのこと。出版社からEC直販体制が整備される一環かなと思われます。


CCCグループのアース・スター エンターテイメントは、その媒体であるWEBコミック誌「コミック アース・スター」の中で、新連載や読み切りなど、オリジナル作品を多く発信へ、とのこと。近年は小説原作の異世界転生作品が映像化されるなどしていた同社ですが、新たにオリジナル作品を強化していくということなのでしょう。


過去、読切は紙雑誌の中に閉じて、買わないと読めないものでしたが、最近はどの会社でも積極的に読切をネットで公開し、なるべく沢山の方の目に触れるようにしていますね。このほうが反響もわかりますし、紙雑誌の部数減から、閉じておく意味がなくなってきたのでしょうね。


Skebが「二次創作公認プログラム」を4/30に終了とのこと。自動化された二次創作公認の仕組みが難しかったようですね。良い取組だとは思うのですが、残念です。


ビーグリーグループのぶんか社が、売上好調も減益とのこと。人材採用に投資したみたいですね。


ハイキュー劇場版、興収80億円突破とのことで、中山淳雄さんの分析記事です。

コロナで待ちわびていたファンに「今回の「ゴミ捨て場の決戦」は山王戦の後に湘北VS陵南で全国大会で戦うようなものなのだ、それだけで激アツ」という作品をぶつけて、大変なことになっということのようですね。わかりやすいです。そりゃ大変だw


良い記事だなと思いました。わけても、日本のエンタメ輸出が4.5兆円規模にのぼるという以下の図が良いです。

https://dot.asahi.com/articles/-/218607  記事より引用

Webtoonがマンガのライバルかどうかというのは、立ち位置的に食い合わないタイプの別ジャンルのエンタメ(アニメがマンガのライバルか?というくらい)として、相互作用の関係性となりつつあるので、経過観察の必要な視点かとは思います。

ただ、半導体産業とエンタメ産業が同規模と言うのは、えらいことですね。そう考えると、装置産業における設備投資のような巨大な原資がいらないのがエンタメの特徴なので、もっと国内産業として色々どうにかならないかなと思ったりしました。原資は新人作家や編集組織への投資ですね。


クリエイター向けの動きとしてどうにかならないかというのは、クリエイターの収入もそうですが、こういったこともですね。こういったことでの私の考えは以下の通りです。


【小学館・副編集長1日密着】「感情が描けてない!」後輩へ渡した㊙️アイテムとは?

2週連続の紹介ですが、今週も面白かったです。編集部が作家を育てるシーンは作品にも出てきますが、編集者を育てるシーンがここまで生っぽく見れるのは、この動画か『重版出来!』くらいでしか見れないすねw 

リアリティがあって面白いのと、これを見た作家さんたちは編集者への信頼感を上げてくれるように思います。どうなんでしょ。作家さんはどう思われますかね?


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

NetFlixで改めて映像化される『寄生獣』ですが、ShinePartnersで「フルカラー縦漫画」として、LINEマンガ上で連載開始とのこと。リリースそのものは、カラーマンガ版の新装がメインです。


DMM系CLLENNからは、テラーノベル原作などの新作2本です。RentaやシーモアなどのPFスタートのようですね。色々狙いがありそうです。


ドリコムの第4弾は、Contents Lab. Blue TOKYOとの共同制作とのこと。


学校の教室に机椅子が沢山あるのモデルは便利でしょうね。意外と学校って好きなように写真撮ったりできないんですよね。


俺レベがアニメ化される際、キャラを立てにくいWebtoon展開を危惧する声もありました。そう考えると、このキャラ投票は業界の人間的には注目かなとも思います。例えば、Webtoonでキャラ投票1位が主人公じゃなかったりしたら、面白いのかもしれませんね。


海外News

*: 外国語の記事紹介も入ります。自動翻訳など活用ください。

中東のエンタメブームですが、韓国Webtoonにも波及しているようです。


LINEマンガ上で『真なるオトコ』が月間販売金額が1億円超えとのこと、韓国でも話題になっています。面白いですよねこれ。不倫成分の低いシリアスシマコーみたいな。


タイトル訳:カカオエンターテインメントは再編とピッコマとのより緊密な関係を模索

韓国モバイルプラットフォームの大手、カカオですが、その中における日本ンおピッコマの重要性がますます高まっているようです。映像化に期待しているように読み取れますね。


タイトル訳:カカオ、ウェブトゥーン、エンターテインメント部門の知的財産小委員会を設置

これはIP展開活用タスクフォースなのでしょうかね。詳細はまだ言えないとあります。


タイトル訳:ICv2: 講談社が15万人以上のフォロワーを持つ女装ウェブトゥーンをライセンス

LINEマンガから映像化した『先輩は男の娘』を、講談社が北米で紙コミック化(国内は一迅社)ほか、『ブルーロック』『すずめの戸締り』など展開。ククルスドアン単行本は当然国内はKADOKAWAですけども、YEN PRESS展開じゃないんですね。


タイトル訳:ICv2: 鬼が送るビデオゲームにインスパイアされたコミック

ゲームファンに対して、コミカライズのクラファンやるのは盛り上がるやもですね。日本でこの例あったかな?


タイトル訳:電子書籍の収益は2023年に増加し、10億ドルを稼ぎ出した。

伸び悩んでいるという北米電子書籍市場ですが、10億$(≒1500億円)くらいになっているようです。日本が5000億円超とかですから、まだまだではありますが伸びてはいるみたいです。とはいえ、オーディオブックが強いみたいですね。進化の形が日本とだいぶ違います。


タイトル訳:コミコン 2024: ボゴタの「オタク」フェアの日程、料金、ゲスト、その他の詳細

タイトル訳:特別なものを用意しています、レッド・ドワーフは喜んでいます。プラハ・コミコンは素晴らしいスタートを切った

南アメリカのコロンビア・ボゴタと、東欧ルーマニア・プラハとでコミコン開催とのこと。それぞれお国柄が写真から見れますね。


AI・画像生成関連

Webtoonスタジオのエンドルフィン社と、韓国SUPERNGINE社が共同で、特定の漫画家の画像だけを学習して画像を生成する「ピュアモデルAI」というものを開始とのこと。冒頭のキャプテン翼のネームと過去作品に対して使用したらどうなるか、ちょっと興味があります。

マンガジャパン/デジタルマンガ協会(日本漫画家協会とは別の組織)の会合で発表されたとのことで、里中満智子先生や倉田よしみ先生がコメントを寄せています。『味いちもんめ』がAIで連載継続したらすごいことですね。見る限り、やっぱりトーン表現が課題かなぁとは思いますが。

ちなみに、このあと紹介する記事とも被りますが、話題のLoRAとは違いますと、珍しい同じニュースの2つ目のリリースで強調されています。リアクションが色々あったんだと思います。


弁護士さんによる、その「LoRA」の説明ですが、特定の絵柄をもとに画像生成するという点では先述のピュアモデルに近いですが、コアになる画像生成には、過去の版権絵を大量に学習しているという違いがあるようですね。

これについては、公開のされ方にも問題がありましたが。


今週というか、ここ数か月、森川ジョージ先生を巡って、x上でAI関連や漫画家さん周りで様々なことがありました。全容の説明は難しいのですが、一先ず私の考えは以下の通りです。ちょっと長いです。


この問いかけは、魔女裁判みたいですよね。定着しないで欲しい。


facebookが、前澤さんやホリエモンの画像を使っている詐欺広告を放置する件は、ホントにひどいという気の毒ですよね。作品とかに波及しないでほしい所。米国選挙には対応するみたいですが。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

マンガ大賞2024は『君と宇宙を歩くために』

リアルと電子の書店を横断する取組なんですね。

カップリングの設定だけの賞。BL特化のリブレらしさを感じます。


記事のみ紹介

「秋田書店」では無くて「秋田の書店」のお話


告知関連

鈴木伸一さんがトキワ荘に来て話すとなると、『まんが道』で、アニメーターになるために就職するため、鈴木さんがトキワ荘を離れていくシーンが思い出されますね。実際今は、杉並アニメーションミュージアムの館長をされてますしね。

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最近、わたしの仕事周りの環境が大きく変わったのですが、先週のまとめで報告をさせていただいております。まだ未見の方はぜひご覧ください。特に、3月まで従事していたコミチのお仕事でお世話になった方や、IMRAT関連の方に宛てて書いております。

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主に週末に週1更新ペースで書いています。原則日曜、月曜以降が休日の場合は、週初めの平日の全日公開にて。たまに番外編も書きます。
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今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


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