柿のいのちは短い
桃栗3年柿8年という
長い年月をかけて実った柿はつやつやのまま
ダンボールに入ってことしも母から届いた
好きだというと一箱届く
1個目はありがたく、2個めはおいしくて
3個4個となるとうれしさは小さくなり
やがてなにかの業に思えてしまう
柿はキッチンの隅にきれいに一列になった
朝はいつもバタバタで剥く余裕がなく
夜は飲んで帰るから剥くのが面倒で
朝は食べないから見なくなり
夜はもらってきた土産の菓子を
柿をどけて置く
柿は柔らかくなっていた
完熟を過ぎた、赤い果実になっていた
スプーンですくって食べると甘い和菓子のようで
もうそれは私が知る柿ではなかった
2個めは体がNOといい
けれど捨てるには忍びなく
柿は流体になった
長い年月雨風にさらされ日照りにさらされた柿は
流体になった
スプーンを指すと皮はぱちんと弾けて
流体があふれた
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