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【シャニマス】樋口円香は俺なんだ……!【円香WING感想】

シャニマスの過去シナリオを後追いして、その魅力を再発見するのがこのシリーズ、『ワンダリング・シナリオ・チェイサー』。

今回取り上げるシナリオはコチラ!


『樋口円香WING』!

幼なじみの透がアイドルのスカウトを受けたことを知った円香。透が騙されていないか、信頼できる事務所なのかを確かめに行ったところ、自分もスカウトを受けアイドル活動を始めることに。最初はアイドルにもプロデューサーにも懐疑的な円香だったが、活動を続ける内に少しずつ心境の変化が起きて……。

というのがあらすじです。

円香というと、シャニPへのクールな態度や、透への複雑な感情が注目されがちです。

しかし、今回は違った視点で円香について深掘りしていきたいと思います。

その視点とは、
「挫折を恐れて挑戦を避けてしまう」という臆病さです。

円香WINGを私なりにざっくりまとめると、
彼女がこの臆病さを乗り越えて羽ばたき始めるまでを描いた話です。

このような類いの臆病さは、私にとって非常に共感するところがありまして、

「樋口円香は俺なんだ……!」

という思いから円香WINGを取り上げようと思った次第であります。

それでは、円香WINGを振り返って参りましょう。


■挫折を恐れて、挑戦を避けてしまう臆病さ


 本シナリオの序盤~から中盤にかけて、彼女は冷めた視線と皮肉な態度をとり続けます。

アイドルという概念に対して、「笑っておけばなんとかなる楽な商売」。

ライブをしていたアイドルに対して、「安っぽい笑顔で踊っていた」。

シャニPに対して、「ミスター○○」をはじめとした皮肉まじりの発言。

 こうした冷めた態度の背景にある考えが、シナリオ終盤の『心臓を握る』から読み取ることができます。

私なりに解釈すると、それは、

「努力して何かに取り組んでも、必ずどこかで挫折を迎える。その挫折を迎えるのが怖いから挑戦をしたくない」

という臆病さです。

 人間が何かを成し遂げるには、努力をして取り組まなければなりません。

努力が実って、成し遂げられる人ももちろんいます。

ですが、それはごくわずかの人の話で、ほとんどの人はどこかで挫折を経験します。

そして、挫折した人間に残るのは、今までの努力が無駄になった徒労感。

自分は今まで何していたんだろうという虚無感。

自分は負けたんだという敗北感。

そういった負の感情だけ。

 こういった負の感情を伴う挫折のことを考えると、心が耐えられない。

だったら、最初から挑戦をしなければいい。

必死に何かに打ち込んだりしなければいい。
 
そうすれば挫折を味わうこともない。

挫折を避けるために挑戦をしない、という考えが彼女の中に大きな根を張っているのです。

■その臆病さ、よくわかるよ……by 俺


 ここまでお読みの方は、

「やけに力のこもった文章を書きますなぁ……」

「まるで自分のことのように書きますやん……」

とお思いのことでしょう笑

そうです。

樋口円香は俺なんです(バキバキの目)。

 彼女の抱える臆病さが、私には、

ものすごーーーーーく!!!

よくわかってしまうんです!!!

挑戦したところで、結局どこかで挫折を経験するのは目に見えているし、その挫折のことを考えると、だったら挑戦しない方がマシ。

一生懸命何かに打ち込むということに、冷めた態度をとる。
それは、自分を競争の外に置いて挫折から自分を守ることに他ならないんですね。

競争の外にいれば、負けることはないですから。

自分の場合は、

「面白いことをクリエイトする」ということに憧れを持ちながらも、自分に才能がないことや、自分の考える「面白い」が通用しないことを恐れて、自ら何かを発信することをしてきませんでした。

お笑い、YouTube、ブログ……。媒体はなんでもいいですけど。

この世にはたくさんの面白いことが既に存在していて、それをクリエイトするすごい人もたくさんいる。

自分がそんな面白いことを表現できる自信がなくて、そんなすごい人たちに立ち向かえる自信がなくて。

面白ぇことしてぇなぁ……と思いつつも、挑戦を避けてきました。

今でこそ、こうしてシャニマスのnoteを書いていますが、それまでは、全く表現することをしてきませんでした。
(とはいえ、noteを始めたのが今年の5月頃、しばらく書いてなかった時期もあるので、実質2ヶ月ほどしかやっていませんが……)

そんな私なので、円香の臆病さに共感せずにはいられないんです……!


  挫折を恐れ挑戦を避けるという臆病さを踏まえると、皮肉な態度、冷めた態度をとる彼女の心境が見えてきます。

 まずアイドルという概念に対して。

アイドルとは、スポットライトを浴びて華やかな成功を手にする存在です。

円香は、そんな成功に憧れを持っていたのだと思います。

しかし、華やかな成功の裏にある厳しい競争のことを考えると、そしてその競争に敗北したときのことを考えると、挑戦しようとは思えない。

アイドルが手にする成功や栄光は、彼女にとって「欲しいが手に入らない」という複雑なものなんですね。

欲しいけど手に入らないものを見るとき、人は冷めた態度をとって自分の心を守ります。

「こんなものくだらないでしょ」

と、突き放して。別に羨ましくなんかないと自分に言い聞かせるんです。

彼女がアイドルに対して冷めた態度をとる背景にはこんな考えがあったのだと思います。意識的か無意識的かはわかりませんが。

もちろんこれに加えて、思春期特有の大人の世界への懐疑的目線もあるとは思いますが。


 次に、イベントを行っていたアイドルの子に向けた感情を深掘りしてみましょう。

彼女に皮肉な目線を向けていたのは、「全力でアイドルに打ち込んでいる彼女」と「それなりに適当にアイドルをやっている自分」を比べて気後れを感じたからではないでしょうか。

 また、このアイドルの子とは同じオーディションを受けて彼女は不合格、円香は合格したというエピソードもありました。

円香はこのことに思うところがあったようでしたね。

オーディション終了後、不合格を悟り泣きじゃくるほど真剣に取り組んでいた彼女と、

合格しようがしまいがどちらでもいいという気持ちで取り組んだ自分。

彼女が不合格で自分が合格した。

この世界の理不尽さを実感させられたことでしょう。

もし自分が彼女の立場だったら……。

一生懸命取り組んでいたのにダメだった彼女の姿を見て、全力で頑張ることへの恐怖を強めたはず。


■挫折への恐怖を乗り越え羽ばたき始めた円香


これまで述べてきたような臆病さを抱える円香ですが、羽ばたくことを決めます。

挫折はあるかもしれないが、それでも挑む道を歩み始めたんですね。

ひょんなことから身を置くことになったアイドルの世界で、何かに打ち込み成し遂げることの楽しさを覚えてしまった。

こっそり練習をしている描写があるのですが、これは自分なりに努力を始めていることや、アイドルに充実感を感じていることの証といえるでしょう。

しかし、依然としていずれ迎える挫折や敗北への恐怖は消えることはありません。

むしろ増したとも言えますね。

一回一回仕事やオーディションをこなす度に、自分を試され続ける。

負けるのはいつだ。挫折はいつだ。と怯えながら過ごす今後のアイドル活動にしんどさを感じているわけですね。

円香にとって、アイドルとは楽しさとつらさが同居しているものだったと言えるでしょう。

相反する2つの感情を表しているのが、「アイドルなんて知らなければ良かった」という言葉ですね。

しかし!!

シャニPとの対話を経て、
挫折を恐れ挑戦を避ける臆病さを乗り越えます。

そして、
アイドルとして挑戦した気持ちと挫折を恐れる気持ちに折り合いをつけて、羽ばたくことを決めます。

流れで自分の中にある臆病さについて、シャニPに話した円香。

シャニPの返答は選択肢になっているので、3通りあります。

私が一番好きなのは、「高望みしよう」ですかね。

弱さに寄り添い、挫折が訪れたときは一緒に傷つこうという言葉は、円香にとって非常に心強かったはずです。

仕事の度に、オーディションの度に、自らの実力を試されるしんどさ。

いつか迎えるかもしれない、身の程を思い知らされる挫折。

それらを、俺も一緒に背負うから。だから、高望みしよう。
高く飛んでみよう。

そういう励ましですね。

シャニPナイスだぜ……!


■距離が縮まったことを示すナイスな描写が冴え渡る


円香WINGは、シャニPと円香の関係が深まっていく描写がすごく良くて私は大好きです。

円香⇒シャニPへのキツい言葉が、シナリオ前半と後半で違う意味になっていく演出がニクい。俺こういうの大好き。

序盤はただの皮肉な言葉だったのが、信頼を深めた終盤は気を許しているが故の軽口になっていくわけですね。

一番わかりやすいのが、決勝前のコミュ。

どう考えても「最低」と思っている表情じゃないんだよなぁ……。

それから!好きなシーンがありまして。
準決勝前後がすごく好きなんですよ!!

準決勝前、外でも歩いて落ち着ける場所で待機してなとシャニPに言われた円香。しかし、彼女はこのままシャニPの隣で待機することを選ぶ。

そうだよな、円香は既に落ち着けるところにいるんだもんな……!

準決勝に勝利後。いつも通りを装いながらも、水を飲んでるときにむせる円香。

これはいわゆるあれですね。

「リサリサ先生、タバコ逆さだぜ」ってやつですね。
平静を装いながらも実は動揺していたことがうかがえる描写。

そして!!!
WING優勝後のコミュの、最後の最後で、今まであえてしてこなかった呼び方でシャニPに呼びかけるわけです。

最高だぜ!!!うおーーー!!!
(タートルトークのクラッシュ)


■円香は俺なんだ……!だから俺も頑張るんだ……!


というわけで、臆病さを乗り越えて羽ばたき始めるまでを描いた円香WINGを振り返って参りました。

今回このシナリオを取り上げたのは、自分の現在の状況と心境がリンクするところがあったからでして。

このnoteともシャニマスとも関係ないところで、
自分なりに面白いことをやっていこうと覚悟を決めたタイミングだったんですね。

円香は臆病さを乗り越えた!
だから俺も頑張るんだ……!

という気持ちになっていたので、円香WINGを取り上げさせて頂きました。

努力は実らないかもしれない、挫折も経験するかもしれない。
それでも円香を手本にして、俺も高望みしたい。

中途半端に投げ出したりして、円香に、

「ミスター・デイドリームビリーバー」

「ミスター・三日坊主」

「ミスター・絵に描いた餅」

とか言われないように、私も頑張りたいと思います。

挑戦をしたいが、失敗を恐れて二の足を踏んでしまっている人の背中を押してくれる、素敵なシナリオですのでぜひ円香WING、読み返して見てください!

過去のシナリオ感想⬇