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ヨハン・ユスト・シューシャルト(Johann Just Schuchart :London. ca.1741-1753))破損したテナージョイントの修復記録 5

ソケットを修復しました

最小径はレプリカよりやや狭い9mmに決定して、ソケットを固定しました。

左:修復したソケット 右:レプリカ

見た目も損なわれずできたと思います。


上:レプリカのジョイント 下:修復したジョイント

内径のブラッシュアップの準備

オリジナルジョイントの内径は下端から4センチほど上のあたりにえぐれがあったので、樹脂で埋めて再度削り出すことにしました。

オリジナルのジョイント

さて、ここからが勝負、です。このままではおそらく第2オクターヴの音階が並ばないので、またまた試奏しながら最大径を広げていくという作業です。

どの運指を採用するかが重要

バロックファゴットの運指は、製造された地域や時代によって違います。例えば、パリとロンドン、ドレスデンでは楽器のデザインも違いますし、運指も違います。おそらく使われていたリードのタイプも違ったはずです。
19世紀になるとロンドンでもフランスの楽器(サヴァリー)が使われたりしていますがこの時代のファゴットはヨーロッパ大陸のものとはかなり違っています。手がかりは18世紀半ばまでのロンドンで出版された「運指表」です。
<参考文献>
アーリーファゴット運指表 著者:ポール・J・ホワイト
木管楽器とその歴史 著者;アンソニー・ベインズ

 ポール・J・ホワイト:「アーリーファゴット運指表」 より
アンソニー・ベインズ:「木管楽器とその歴史」より

バロックファゴットの運指に地域差が見られるのは、高音域のe'以上の運指でし。これはボーカルからテナージョイントにかけての内径設計が様々だったからです。(もちろん、それに適合するリードも違ってきます)

また、ファゴットの内径が限りなく円錐に近づいていったのは、トリエベール、ビュッフェなどの地道な改良の結果であり、19世紀パリのサヴァリーJr.の楽器なども直線的な円錐管ではありませんがそれ故に優れた音色と操作性を獲得していました。まして、この時代はもちろん完全な円錐ではありません。

リーマー跡の段差があったり、「えぐれ」や「膨らみ」はよく見られます。
リーマー跡はわかりますが、「えぐれ」「段差」は損傷や膨張の結果かもしれません。ともかくここからも試行錯誤は続きます。

一日にやる修正箇所は1箇所だけと決めて。
<試奏する、考える、仮説をたてて修正する、また試奏する、一日寝かしてまた考える(調べる)>
の繰り返しです。

以下は2024/1/22の試奏動画です。
必死でコントロールして吹いてこんな感じなので、まだまだ使い物にはなりません。

このような感じで進めていますが、解決方法が見つからず、1週間なにもできないときもあります。なのでそんな経過をいちいち書いても仕方ないので、次回はリードについて少し書きたいと思っています。


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