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ドゥルツィアンのお話

2022-05-18 16:12:37


いろいろなヒストリカル楽器を吹いてきましたが、ドゥルツィアンは縁遠い楽器でした。しかしこの2年間に続けて演奏する機会があり(楽器はすべてお借りしたものですが・・・現在はフランスに注文した楽器待ちです)その魅力にすっかりハマってしまいました。


一番の理由はその音色です。楽器のイタリア名からくるように「dolce=甘い音色」といえばいいのでしょうか、このdolceという概念も時代と国によって異なるものですから、一概に甘い音=柔らかい音、とは言えないのです。

また、ファゴットよりも最低音が一音高く(C, ファゴットはB♭)楽器の全長が短い分、反応が良く鳴りが軽いのも魅力です、その結果この楽器が持つ機動力はかなりのもので、セルマ(スペイン)、べデッカー(ドイツ)、ベルトーリ(イタリア)などのヴィルトーゾがまさにこの楽器のため超絶技巧の曲を沢山書いています。

ファゴットのためにこんなに沢山の技巧的な曲が書かれた時代はないのでは?

19世紀にはウエーバーの協奏曲、またパリではヴィルトーゾとして有名なジャンコートの曲も本人の演奏で披露されてしいますが、今ひとつ地域が限定されています。

20世紀になるとパリ音楽院ではバソンの試験ために沢山の技巧的な曲がかかれましたが、音楽的内容に乏しい曲も多いのです。どうかなあ?という感じです。

それらと比較しても明らかなようにルネサンスから初期バロック、17世紀、ドゥルツィアンの時代はまちがいなくファゴットソロ曲の黄金時代でもあるわけです。


また、私にとってはパリからパパセルジオ仕込みのドゥルツィアンを引っさげて帰国した長谷川太郎さんとの出会いも衝撃的でした。彼からはリードや楽器に関する貴重なサジェスチョンを得、また私の楽器の注文も彼がやってくれました。

この時代の楽器を演奏する際に、世界中のヒストリカル奏者が直面する問題、それはどんな音で吹けばいいのか、ということですが、私は音量についてはできるだけ周囲の撥弦楽器(チェンバロ、リュートなどの鍵盤楽器)やポジティブオルガンの音を基準に考えています。それらの楽器とうまく調和することがまず大切でしょう。

つぎに音色ですが、前述のように「dolceと」いう単語だけを手がかりにするわけにもいかず、かといってオリジナルのドゥルツィアンや当時のリードでの再現はまず不可能。

では、どうするか。

私は周囲の楽器とのバランスを取りながら、ただシンプルに芯のある音で楽器を鳴らす。

ということだけを考えています。

その結果、会場や音域にもよりますが、ある人にはリーディに聴こえたり、甘い音に聴こえたり、するはずです。また低音域は意外とドスの利いた音も持っており、音色に関する魅力は尽きません。

さて、今後のドゥルツィアンのコンサートですが(いすれもSalon de ぷりんしぱる)5月21日にはソプラノの月岡さんとのコンサート、私はベルトーリのソナタ7番を演奏します。7月30日には名手 長谷川太郎さんのリサイタルで共演、10月30日にもコンサートを予定しています。このときには再度、ラモニカを演奏します。

というふうに、すっかりドゥルツィアンづいている近況の報告でした。

それぞれのコンサートの詳細・ご予約はサロンのホームページより御覧ください。
https://sites.google.com/view/salondeprincipal/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E6%83%85%E5%A0%B1


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