続々・黄昏ぬビギン
2度目の「清水いはらフェス」を、同じ年度の2023年1月29日に実施した。
真冬とは思えない好天に恵まれ、近隣への周知も行き渡ってきたのかキャパを超える来場者を記録する。主催者としては、大成功といっていい。
事前の会議から、社会実験としての「清水いはらフェス」は、第2回での終了が決まっていた。
我々の報酬がゼロであっても、出ていく金は少なからずある。
チラシ・ポスター・各所プレスリリース。交通渋滞に対応するための警備員手配。ライブステージの組み立て(音響関係はすべてこちらのスタッフ)。各種資料作成・打ち上げ花火代・プレゼント用ラッピング等々、細かいものまで積み上げると、7桁近い支出になる。
出店料だけでは到底バランスが取れず、不足分は1年限定の市の助成金で埋めた。
実は今後、ここが一番の課題となってくる。地元の善意や熱意のみで、イベントの存続は不可能である。さりとて、公共の助成金を頼るにも限界がある。市の財政は年々逼迫の度合いを高めており、今回たまたま1年限定の、絶好の機会にあたったに過ぎないのだ。
常に生返事を繰り返すばかりで埒のあかない行政に対し、地元が総力をあげてイベントを企画・開催し、成功を収めたのだ。こちらで投げたボールをどう受け止め、どう返してくるか、見極めたいところではある。
僕は千葉のベッドタウンに生まれ、20代を神奈川で過ごした。田舎志向もあり、30を過ぎて静岡の山間に越してきたものの、根は都会っ子である。
性格的に群れるのを嫌い、限られた話の通じる仲間と過ごしてきた。意外とこの地においても、(以前のような仲間は別として)ベタベタしない静かな生活を続けられている。
庵原の特徴として、代々続く家系が多い。面白いのは血が濃いわりに、他人に対してあまり頓着しないのだ。
田舎というと抱かれやすい閉鎖性も、ないとは言えないが、むしろ普段は親密な関係を積極的に作ろうとはしない。それが、なにかがあると(ブツブツ言いながらも)一つにまとまるのだから感心する。
今回のフェスがいい例で、100人規模の人たちが、無償でスタッフとして参加している。
たとえば元公共放送勤務の人の場合、アナログ時代から現代のデジタル技術まで長けていて、自前のPA・ミキサーを駆使して当日の音響設備を一手に引き受けている。これ、イベント会社に依頼したら最低でン10万円の世界だろう。凄い能力だが、普段は淡々とみかん農家を営んでいるのだ。
たとえば出店者の中には、2年前に日本大会優勝・1年前に世界大会グランプリを獲得したマーマレードを出品している農家がある。
流通大手を経由すればそれなりの値段で売れそうなものだが、ご主人にその気はない。この機会に生産場所を取材したが、原料から加工までオール手作りの贅沢な逸品である。だから、大量には作れない。お客さんの目も節穴じゃないから、すぐに売り切れてしまう。
僕は自らよそ者を公言しているが、扱いは地元の人とまったく変わらない。
むしろ、違った視点から物事を捉える人材がここには必要なんだと、心底思っておられる節さえある。
ただし、第2回のフェスをもって広報としての役目は、ご免になるものだとばかり思っていた。
イラスト hanami AI魔術師の弟子
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