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撮りたいものはなんですか

「万福」では箸とか巾着、アクセサリーや服など、中高年の女性が喜びそうな品を、店長ご本人の手作りを中心に陳列している。
千葉にいる時からマルシェの主催もされていたそうで、第1回「清水いはらマルシェ」と時期が重なる偶然に、ご縁を感じずにはいられない。今後いろいろ、アドバイスをいただこうと思う。

僕はと言えば、まるでファッションとは縁のない人間で、たとえば現役の頃にネクタイを自分で買うなら、いつも100均で済ませていた。
会社役員の肩書にそれではあまりにみっともないと妻に怒られ、タイに住んでいる弟からは、定期的にネクタイが贈られてくる。彼は兄貴と逆で、オシャレなのだ。
ネクタイは小さな象さんの絵柄ばかりで、タイではこんな似たようなものしか売っとらんのか、くらいに思っていた。

それでなんの頓着とんちゃくもせずもらった順に締めていたら、ある日、取引先の社長さんから「いいのしてるじゃない」と言われる。
1本、日本で買うと数万円もする銘柄なんだそうで、ビビッてはみたものの100円との差がそれほどあると思えない。100均ネクタイと交互に締めたりして、現役時代を過ごしていた。

一事が万事そんな具合だから、アクセサリーなんてまったく、理解の外である。
明日の取材撮影を前に関連するお店でどんな動画が作られているか、予習の意味を兼ね、YouTubeに「ハンドメイド店」と検索をかけてみる。

表示された数は多くないが、再生回数を見れば、どれもそんなに悪くない数字だ。一定の需要があるのは分かった。
コアな層が、あがってくる動画をまんべんなく見ているからなのかもしれない。

動画の作り手は圧倒的に女性で、まず、フォントがどれも「かわいらしい」。
カギ括弧かっこつきにしたのはいかにも女の人のセンスと思ったからで、僕の感覚の中に「かわいい」はない。
自分とは無縁の商品を相手にするわけで、ちゃんとお話聞きながら進めんとな(いっそのこと、女装でもしてみようかしら。オエッ)。
なにしろ僕がこれまで使ってきた字体、オーソドックスなはずなのに一つもない。こういうところから気をつけなくてはいけないようだ。

顔出ししている動画も、あまりない。多くは音声のみで構成するか、文章の読み上げソフトを使っている。中には音楽とテロップだけのものもあり、それなのに視聴回数は5ケタに達していたりする。
作る側とみる側がともに女性だと、そういうスタイルが違和感なくうけいれられるということだろうか。見ているうち、自分の認識とのギャップに不安がよぎる。

露骨に「買って~!」みたいなアピールはご法度はっとらしい。
商品の見せ方で「かわいいでしょ」「素敵でしょ」「欲しくなるでしょ」とお客の心理をくすぐり、購買意欲を高めようというわけだ。高度だなぁ。
実用性のアピールというより、感性に訴えることの方が大切なようだ。

たいがいは作ったご本人かお店の人が撮影していて、いわゆる素人しろうとの人が撮った動画になる。それでも、ガサツな仕上がりのものは一つもない。
制作会社に依頼したと一目でわかる、完成度高い「作品」も中にはあるのだが、それが必ずしも視聴回数の多さに繋がっていなくて面白い。
見る人がほしいのは映像「作品」じゃなくて、「情報」ということだろう。

こういうのは自分も陥りやすい陥穽かんせいで、ちょっと腕に自信がつくと、顧客のニーズより自分の世界観を前面に押し出したくなる。それが契約者にとってもいい事だくらいに、思い違いをしてしまうわけだ。
間違った矜持プライドと言っていいだろう。

幸か不幸か、それなりに齢を重ねた僕などに、そういう勘違いはない。結局どういう動画にするか結論は出ないままだが、相手のご希望をしっかり受け止め、取り組んでみようと思う。

あえて言うと、相手も「どうしたい」「こうしたい」のない場合が、ほとんどなんだよなぁ😅

イラスト hanami🛸|ω・)و

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