小話5

導入がさ、
うみねこのなく頃にを思い出しちゃった。
かがみの特殊少年更生施設、めちゃめちゃ楽しいです

※※※



その日、唐突に絶縁の手紙が届いた。



彼とは中学の友達の一人で、大人しい気質同士と漫画が好きな点で気が合った。
彼の描く世界観に魅了された一番の読者だった私と彼。
私たちは間違いなく、学校という小さな箱庭の中の数少ない同志だった。


あの事件が起こるまでは。


その日も夕闇が迫る頃だった。
陽があたる世界から隔離されるかのように忽然と居なくなった彼。誰もそれを咎めない。気にしない。
神隠しのように、彼は闇の世界に迷い込んでしまったのだ。

何処かに遠い施設に行ったと聞いた。
先生に聞いても答えてくれなかった。
家に向かっても会ってくれない。
誰も教えてくれない。誰も。誰も。


ねぇ、君はどこに行ってしまったの?
私のせいなの。
ごめん、ごめんなさい。
巻き込んでしまってごめんなさい。
探しても探しても探しても何処を探しても彼の痕跡が見つからない。



長い時間が経って諦めかけていた頃に連絡が来た。
彼の居場所を知ってるという人から。
だから会いに行ったの。
誕生日のプレゼントを抱えて。

そうして会った。
何かに怯えているように震える、全く別人みたいな彼に。


ねぇ、どうしてもう会ってくれないの?
何があったの?
何が貴方を変えたの。
わからない。何に怯えているの?


彼に何があったの。


きっと何かあったんだ。
何かが彼を変えてしまった。
私は知りたい。
彼に何があったのか。

必死になって手掛かりを探した。
探して探して縋るように手に入れた。
彼の作品の展示会の招待状を。


展示されている彼の漫画を探す。

『なに…これ。』
思わず声が出た。
震える口元を手で隠す。
そうしないともっと声が出てしまいそうだった。

一目見てすぐわかる違和感。
つぎはぎみたいな不自然な異質さ。

ありえない、知っている。
この漫画を知っている。
違う。こんな作品じゃなかった。

きっと書き換えられたんだ。
何を、何を隠そうとしているの。
誰が何の為に?


見つけなきゃ、真実を。
彼を今度こそ助けなきゃ。
でも一人では難しい。
残された時間ごくわずか。


何でも良いから手掛かりが欲しくて必死に動画を見続ける。
窓の外には沈む夕日。あの日と同じ、暗闇の手前。
急がないと。
真実が沈んでしまう。闇の中に。
時間が足りない。足りないの。

どうか誰か気づいて。

一縷の願いを込めてポストする。
ハッシュタグに懇願する。

#気づいて 、A君

誰か助けて。
お願い助けて。

彼を、どうか助けてほしい。
誰か、誰か私の代わりに真実に気がついて!!

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