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猫好きによる 猫好きのための 猫の話(感動編)

ミステリアス母さん猫

勤め先の電器店が閉店になって、何年か後の話。
私が30代前半の頃だったと思う。
4階建てのアパートの、2階の角部屋に住んでいた。玄関は北側、ベランダは南側。
ベランダ側に駐車場があった。
その駐車場を、子連れで歩く母さん猫を見かけるようになった。子猫は3匹。
ベランダから食べ物を落とすと、母さん猫は、顔を上げて私を見た。
猫たちを見かける度、食べ物をベランダから落としていると、そのうち駐車場の隅の方で、親子で私がベランダに現れるのを、待つようになった。
ペット禁止のアパートで、人目が気になるので、直接ではなくベランダから、食べ物を落とすだけにしていた。
子猫たちが一心不乱に食べている間、母さん猫は、確認するように私を見上げ、そして自分も食べ始めるのだった。

しばらく経った、ある日の朝、玄関側で猫の鳴き声がする。
結構大きい声で鳴いている。
慌てて玄関のドアを開けると、子猫が3匹。急に勢いよくドアが開いたせいで、びっくりしたらしく、転げるように3匹で逃げていった。
えええ?
ベランダに出て下を覗くと、母さん猫が、ちんまり座って私を見上げていた。
これはどういうこと?
2階だから、当然階段がある。あの小さな子猫たちが上ってきたのだろうか。
それとも、母さん猫が連れて来た?
どっちにしても、私の部屋がどうしてわかったのだろう。
匂い?
それとも、猫の目には磁場が見えるという説があるらしいが…。
駐車場から見上げて、あの小さな猫の体からすれば、かなり高い位置にある私の部屋を、どうして推測ったのか。しかもベランダとは真反対側にある、玄関先である。
そして、私がベランダに出てくるのを予測して待っていたかのような、あの母さん猫の佇まい。
不思議だった。

多分、私に子供達を託そうと試みたのに違いない。残念ながら、母さん猫の期待には、応えてあげられなかった。
母さん猫は、その後しばらく子猫と一緒に行動していた。最初は3匹いたはずの子猫たちは、2匹になり、1匹になり、いつしか母さん猫も見かけなくなった。

ずいぶん昔の話で、母さん猫の毛色などは薄ぼんやりとしか思い出せないのだが、じっと私を見上げていた母さん猫の眼差しは、未だに記憶に残っている。
子供たちを何とか生かしたいと願った、母さん猫のけなげさ。
忘れられない。

最近会えた子たち

最近、茶トラの大きな猫が、幹線道路を横切っているのを見かけた。
かなり幅の広い道路なのだが、信号で車が停止したタイミングを待って、ゆっくりと渡っていく。中央分離帯でいったん止まり、様子を確認して渡っていった。
気になって、付いていった私も酔狂なやつである。
道路に面した飲食店の裏側の駐車場に、ガスボンベや脚立、古い植木鉢など、がらくたが積み上がっていて、その辺りに、数匹の猫がいる。茶トラは少し高い位置にいて、他の猫たちを見回しているように見えた。
昼なのに猫の集会?それともファミリー?茶トラは、ゴッドファーザー?
ワクワクしてしまった。ふと気付くと、小さな白猫が座って私を見上げていた。
まだ子猫に近いような白猫の眼が、金目銀目(オッドアイという言い方より、この表現の方が私は好き)だ、と気づいた時は、ちょっと興奮した。勿論その存在は知っていたが、実際に目の当たりにするのは人生初めてである。
幸運を招くとか、縁起が良いとか言われる所以は、その希少さによるものであろう。
猫の目は宝石みたいだな、といつも公園の猫たちを撫でながら思っているのだが、色の違う宝石が二つ。やっぱり綺麗。感動ものであった。

白猫の隣にいたキジ猫
カメラを向けたら、
モデルポーズ?してくれた


またその子たちに会いたくて、その道を散歩コースに組み入れてしまった。
飲食店の人がご飯をあげているらしく、皆、おおかた飲食店の敷地内にいる。
なかなか触れ合えないのが少し寂しいけれど、元気な姿を見るだけでも嬉しい。
ご飯をもらえて、雨風防げる場所もあるようだが、お外の猫たちには変わりない。
その子たちのために、何かできることはないだろうかと、考えてはいるのだが…。

不思議なご縁で、色んな猫たちに出会えたな、と改めて思う。
悲しいけれど、今後、私が猫と一緒に暮らせる日は来ないだろう。
でも、いつか、ゆっくりできる日々が訪れたら、お外にいる猫たちのために、何か出来ることを見つけたいと思っている。
たくさんの笑顔と、癒しと、感動をくれたお外の猫たち。
あの小さな命のたとえ一つでも、救ってあげることが出来たら、と思っている。


猫好きによる、猫好きのための、猫の話、
今回は取り敢えず
おしまい。




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