新機動戦記ガンダムWの感想

今回は新機動戦記ガンダムWを見終えたので、その感想を書くことにする。

あらすじ

公式サイトより引用。

A.C.195年――宇宙コロニーは、武力によって統治下に治めようする地球圏統一連合に対し、MSガンダムの降下作戦「オペレーション・メテオ」を決行する。ガンダムパイロットのひとり、ヒイロ・ユイの姿を目撃してしまったことから、リリーナ・ドーリアンは、運命の渦に巻き込まれることとなる。ヒイロと同じ目的である4機のガンダムパイロット――デュオ・マックスウェル、トロワ・バートン、カトル・ラバーバ・ウィナー、張五飛は、それぞれ引き寄せられるかのように接触する中、秘密結社OZの総帥トレーズ・クシュリナーダの罠によって、連合の和平派を一掃してしまう。この事件をきっかけにOZは、歴史の表舞台へと躍り出るのであった。

出典 : 「新機動戦記ガンダムW」公式サイト
http://www.gundam-w.jp/tv/staffcast/index.html

感想

水星の魔女以外で初めてのアナザーガンダムだったが、今まで見たガンダムシリーズ全体でもトップクラスに面白かった。キャラクターやモビルスーツは魅力的だし、ストーリーも面白い。これほど戦うことと平和について丁寧に扱った作品はなかなかなく、この手のアニメの終着点のひとつとして完成された作品のようにすら思えた。ここではもう少しいくつかの要素ごとに感想をまとめたい。


①世界観

基本的な地球と宇宙コロニーの構造は宇宙世紀と似ていて、宇宙側が地球にガンダムを送り出すという作戦から始まる。ガンダムがテロリストとして恐れられるのは新鮮だったが、その異質さや強さを敵視点のように感じることができて面白かった。

地球連合やOZ、ホワイトファングなどいろんな組織が出てくるのも特徴である。特に他の作品ではないがしろにされがちなコロニーの市民や代表者の主張や葛藤が描かれていた。

ガンダム側も基本的には組織に属さず、それぞれの考えに基づいて行動するため対立構造が作品を通して何回か変化する。ややこしいという意見もあるようだが、不自然さはなくむしろ作品に深みをもたらしていたように思える。


②キャラクター

5基のガンダムに1人ずつ少年のパイロットがいて、その5人みんなが主人公みたいな扱いである。無鉄砲だけど結果を出すヒイロ、社交的なデュオ、冷静で気が利くトロワ、優しく周りの見えるカトル、実は誰よりも平和を求めている五飛という感じでネットではやばいやつしかいないと言われがちだが、よく考えるとみんないい奴。個人的にはデュオが一番好き。真面目にとんでもないことを言う人が多い中、ちゃんとそれに常識人として突っ込んでくれる。まともなアニメとして成立しているのは彼の存在が大きいと思う。

周りの大人たちもそれぞれの中で軸となる考えをもっている。こう言うとできすぎた大人のように思えるが、実際はエゴも強くいい塩梅になっている。トレーズの戦いは生身の人間によって行われなくてはならないという考えには共感できるし、デルマイユ公の主張も間違ってはいない。かっこいい大人たちが戦っているのを見るのは楽しい。


③モビルスーツ

ガンダムは肩がとんがっていたり、コンセプトがはっきりしていたりと癖はあるがどれもかっこいい。武器もガトリング、バスターライフル、ショーテルなど変わったものが多く、戦闘シーンもワンパターンにならず見ごたえがある。一番好きだったのはサンドロックだが、ウイング、ウイングゼロ(EW)も捨てがたい。量産機のリーオーやトーラスはあまり好きではないが、目新しさはあった。

戦闘においては途中から出てくるモビルドールと呼ばれる、コンピューターが操るモビルスーツの存在や敵のエースパイロットが少ないことが特徴である。そのため宇宙世紀で見られた敵とのセリフの掛け合いが少なかったり、大量の量産機対少数精鋭のガンダムのようなワンパターンな構図が多いのは残念な点ではある。その代わり、ガンダム同士の戦闘や協力が数多く見られたのは良かった。

戦闘シーンは見ごたえがあり、ツインバスターライフルでリーブラの一部を破壊してネオバードモードで戻ってくるシーン、EWで2体のサーペントごと上昇しショーテルで倒すサンドロック、シェルターを打ちながら崩れていくウイングゼロなど印象に残る場面は多い。


④ストーリー

ストーリーは良く練られていると感じた。OZ対ガンダムから始まり、OZの脅威から政治的な判断でコロニーがガンダムを切り捨てる、そしてモビルドールに反発したトレーズ派によってOZ内で内乱が発生、コロニー側の武装勢力ホワイトファングが台頭するといったように戦いの構図が流れるように変化していく。組織に属さないガンダムがこのような混乱の中でどう戦うかといった点にもスポットが当てられている。

ロボットものでよくある、主人公がロボットに乗り戦うようになるまでの流れというのがなく、最初から躊躇なく戦っている点も珍しいと感じた。しかもけしてそれがないがしろにされるのではなく、中盤において戦う相手が分からなくなった主人公たちが自分がどうするべきか、なんのために戦うのかという問いを突き付けられ苦悩する様子が丁寧に描かれている。典型的な仲間を守るため、侵略してくる敵を倒すためといったやや受動的にも思える動機とは異なる、もっと大きく主体的なものを見出していたのは良かった。


⑤テーマ

最初から最後まで戦いと平和について問題提起されていた。それぞれの勢力は平和の障害になる脅威を排除するために戦うといった理念を掲げ、それに対しサンクキングダムは武器を完全に放棄する完全平和主義を掲げていてた。戦うことしかできなかったヒイロと理想を求め続けたリリーナを対比しつつ、二つの考えの落としどころを探っていく物語だったように思える。

TV版ではホワイトファングの要塞を破壊しつつ、OZは武装解除し、モビルスーツをすべて破壊するといった結末だった。EWでは蜂起した武装勢力に対し、処分する直前だったガンダムで対抗しパイロットを殺さずに機能停止させるといった離れ業をやってのけた。どちらもあくまで防御のためのみに戦い、最後には武器を手放すことで平和を実現しようとしていた。宇宙世紀で武力を維持し、残党を弾圧した連邦とは対照的である。どちらが正しいとは言えないが、敵を倒して終わりではなく戦争の後のための一つの選択肢を明確に示したという点で大好きな作品である。

主人公たちや周りの大人ができすぎている点は否めないが、これぐらいではないと平和は達成できないということなのだろう。だからこそ主人公たちを素直に応援できたし、好きなキャラクターも多い。


最後に

TWO-MIXの主題歌4つはどれも素晴らしかった。最後にリリーナが仕返しに手紙を破るシーンもいい。あんまり他のシリーズ物のアニメを見ていないのでわからないが、OVAや映画になると露骨に作画がよくなるのはお約束なのだろうか。ガンダムが最後にぼろぼろになったり、Vのように風化していく演出、好きなので水星でもやってほしい。

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