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ニュースつぶやき:「富嶽三十六景、5億円超で落札される」

 葛飾北斎の手掛けた連作版画浮世絵、富嶽三十六景の46図全図が約5億3700万円で落札された話。


 46図ぜんぶ……?

 アメリカはニューヨークのオークションハウス、クリスティーズで競売にかけられた富嶽三十六景。全図が揃って競売にかけられたのは実に21年ぶりだとか。

 しかし、富嶽三十六景の全図まるごとということであれば5億円はだいぶ安上がりのような気もいたしますわね。まあ、版画浮世絵は版画であるがゆえに数が多く出回っておりますし、状態の良いものとそうでないものとの差が結構ございます。摺師の腕にもよるでしょうし、何度も版を重ねていれば版木の彫りがシャープさを失って、先が潰れたりぼやけたりすることもあるでしょう。また、どのような環境に置かれていたのかも大きな査定ポイントになると思います。
 よく、『日本の美術が海外に流出しているのは、当時の日本人が自国の美術を軽んじていたからだ』とする説を耳にいたしますけれども、こと浮世絵の場合は、あまりに普及しすぎて庶民にまで行き渡った結果、現在の新聞や雑誌のような扱いになっていったのでは……と思っておりますの。たとえば、荒木飛呂彦先生直筆の生原稿でしたら額装して神棚に飾りますけれども、漫画雑誌やコミックスに印刷されたものをありがたがるかといったらそうでもない……みたいな。
 浮世絵は絵師も彫師も摺師も超一流の場合がありますけれども、そうでない場合もあったはず。ここが浮世絵の分業体制の泣き所で、どこかひとつでも失敗したら、いい仕事とは言えなくなってしまいますわ。わたくしも各地の歴史博物館などでそれぞれが収蔵している浮世絵を拝見しておりますと、(見当が外れて色が重なっている……)とか(線刻が潰れて色がにじんでる……)などの品質のものに出会うことがよくあります。それを考えれば、全品優良な状態のままでいるコレクションというものは、相当な値打ちものなのです。

 今回のオークションに出品された富嶽三十六景はいったいどこの、誰が持ち込んだのか。いつか、全図が一堂に介するところを見てみたいですわね(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)




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