そういえばあんまり覚えていない夏

中学3年間ソフトテニス部に入っていて、中学1年の夏、部活内でいじめられてた。

夏休み前くらいから、みんなに話し掛けても素っ気なくされた。部活終わりは同学年のみんなで一緒に変えるんだけど、入部したての頃みんなの真ん中を歩いてたあたしは端を歩くようになり、いつの間にかそこに居場所はなくなっていた。それでもみんなの話に入りたくて、みんなのすぐ後ろを歩いていた。でも、先週の土曜の部活終わりに食べに行ったかき氷屋さんの話も、〇〇ちゃんの好きな人の話も、あたしは知らなかった。

夏休みに入るとみんなに話し掛けることも許されない空気があった。部活で手投げしてもらったボールを打つ練習では、あたしが打つ番になりコートのエンドライドに立つと投げ手はボールを地面に転がした。休憩中に何人かがあたしのところに来て「あんたのこと嫌いやけん」と宣戦布告をした。ラケットカバーにつけていた家族旅行で買ったご当地キティちゃんのキーホルダーは排水口に泥だらけになって落ちていた。部活が終わるとそそくさと一人で帰るようになったけど、後ろからは当時流行っていたJ-POPの曲であたしの悪口の替え歌をつくってみんな楽しそうに歌ってた。

一番つらかったのはお昼の時で、お母さんが作ってくれたお弁当をみんなから離れたところで一人で食べていた。お母さんはあたしがみんなと一緒にご飯食べてるのと思ってるんだろうなと思うとすごく申し訳なかった。せっかくお母さんが朝早起きして作ってくれたのに。あたしが好きなお母さん手作りのハンバーグなんかがお弁当に入っていた日には、いじめられるような娘でごめんねと死にたくなった。


夏休みはそんな感じで過ぎていったと思う。他に何かした記憶はない。ただ毎日部活に行っていた。

いじめられても毎日部活に行っていたのは、あたしの知らないところで悪口を言われるのが怖かったから。知らないところで言われるくらいなら直接聞きたいと思ったのと、単純にいじめられてつらくて部活を休んだと思われるのは嫌だったから。


2学期が始まればもしかしたら何か変わるかもしれないと何の根拠もない期待を2学期にしていた。

学校が始まればあたしのいじめは終わるかもしれない。みんなが新しいターゲットを見つけるかもしれない。クラスの友達は普通に話してくれるかもしれない。

でもクラスの友達からもシカトされるかもしれない。学校でもあたしの悪口の替え歌を大声で歌われるかもしれない。好きな男の子にいじめられてるって知られるかもしれない。

毎晩こんなことを考えてるもんだからよく眠れなかった。


夏休み、友達と遊んだこともなかったはずなのに夏休みの宿題は残っていた。

明日から学校だと思うと憂鬱だった。

宿題も終わってないし。学校ではどんな扱いを受けるんだろう。もっとひどいことになる可能性だってある。早くあたしの番が終わらないかなって。みんなの中で誰かが早くヘマをしていじめられないかな。 

そんなことを考えてるもんだからやっぱりすぐには寝付けなかっだことは覚えている。

#8月31日の夜に

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