紅茶のミルクと融通。

「さゆり、バイトするんやったらチェーンのお店じゃなくて個人の店にしときや~!」

関西出身なのになぜか標準語で話すことが多いんだけど、こういうふとしたときとか本音を話す時にKがバリバリの関西弁になるのがすきだ。こちらのほうが素なんだろうなあ、と思う。

2人で旅行中、人気のあるカフェに行ってお茶をしに行った。

Kは外で試飲をしていたフレーバーティーが気に入って、「これミルクぜったいあうわ~!」とうきうきして、わたしはケーキを楽しみにお店に入って行ったんだけど、注文の時に店員さんに、彼女が、「ミルクをつけていただけますか」というとテーブルに置いてあるフレッシュを使ってください、と愛想のいい笑顔で、申し訳なさそうに言った。フレッシュではなくて、“フレッシュな”ミルクがいいのだ。(というかあのフレッシュって、そもそも白いだけであってあれはクリームではないんでしょ、実は。)牛乳をつけてもらえるか聞くと、店員さんは「確認してきます」といって離れ、すぐ戻ってきた。上の人に確認してきたのだろう、彼女は、「こちらの、別の紅茶にはミルクがついてきますが、こちらのフレーバーティーにはおつけできません」、または単品のミルクを別に注文するしかない、ということを告げた。

もちろん無理強いをするつもりはなく、純粋に疑問に思った彼女は(わたしだったらしょうがないとあきらめてひいてしまいそうだけど、海外暮らしが長いのもあってそれが自然なのだろう、)「料金多く払うのでそれでもだめですか?」なぜ、と聞いた。すると店員さんは、「今までそのようなことがなかったので」という。

結局、どうしてもそのフレーバーティーのほうがよかったので、仕方なくミルクなしで注文したのだけども、店員が(これ以上言われたらどうしようかと思った、)と顔に書いてあったような様子で、あちらに去ってから、わたしたちは「仕方ないね、チェーン店だし、他にも店舗あるから平等にしないといけないんだろうねえ、」とか「こういうところが日本的だよね」「彼女がわるいわけじゃないのにそこまであやまらなくてもいいのにね」っていう話をしていた。今Kが住んでいる国ではこういうときは、「あ、ミルク?いいよ~」と軽い感じでリクエストに答えてくれるらしい。

それはそれで海外のゆるくていいところでもあるし、いつでも同じ良いクオリティでサービスを受けられる日本の良さでもある。

ただ、ここは言い方によっては納得できたかもしれないっておもう。彼女は無理にリクエストを通したかったわけではない。納得したかっただけだ。わたしだったら「前例がないので」「メニューにないので」といわれるよりは、例えば「この紅茶とミルクは合わないのでおすすめできません」とか、本当じゃないとしてもそれらしい理由があったほうが納得できたな。レジに登録してないからややこしいとかそんな理由とかかもしれないけれど。ひとつ例外を通すと線引き難しいもんねえ。

もちろんおいしくいただいたのだけど、なんだかもやもやの残るカフェだった。

客のリクエストをすべて通すべきとは思わないけれど、少しの融通とか、納得できる理由を添えるだけでそのお店の印象とか思い出がかなりかわるんだけどな、とふと思った。

そんなわけで、冒頭のセリフなのだ。

さじ加減はむずかしいけどね。個人的にはちょっとくらいの融通はできるようなカフェで働きたい。ぜんぜん飲食業じゃないんだけど、ふと、こういうこと考えちゃう。

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