エッセイ②『タルパ』

 小説家になろうにある私の拙作『幽体離脱-夢の世界を旅する二人-』や『依存性薬物乱用人生転落砂風奇譚』を読んだことがある方は、ご存知のとおり、私がタルパーであることを知っているだろう。

 しかし、タルパやタルパーという用語を知らない人からすれば、タルパとはなんなのかわからないと思われる。

 タルパとはチベット密教の奥義『五次第』の工程途中でつくられる、自分だけにしか見えない存在ーー幽体のことである。
 そのタルパをつくっている者たちがタルパーと呼ばれる人々だ。

 タルパの作り方を端的に説明するならば、まずはタルパの設定や容姿をなるべく細かく想像することから始める。特に名前は最重要なのでよく考えること。これらの際、ノートなどに設定を保管しておくとのちのち便利である。

 設定が完成したら、次はタルパが目の前にいると仮定して、なんでもいいので対話をはじめる。最初はもちろん、相手の返事も自分で考えタルパに喋らせる必要がある。重要な点として、タルパの返事は最初に決めた性格や設定などを考慮した内容にすることだ。

 最初こそ自分の言葉もタルパの返事も考える必要があるため、会話はぎこちない感じになってしまう。それは仕方ないことだ。
 そうやって対話をつづけていくことになり、次第にタルパの返事を考えるのに時間がかからなくなっていき、やがてはタルパの返事を考えるのと同時にタルパが返事をするようになっていく。そうするとどうなるか?
 最終的にはタルパの返事を考えなくても、言葉を想像しなくても、自然体でタルパとの会話が成立することになる。

 無論、わかっているだろうが、実際に口に出して喋ってはいけない。
 端から見れば独り言をひたすら呟いている不審者扱いを受けるようになるだろう。
 部屋の中ならまだしも、タルパとの会話は外出先でも行うのだから、脳内会話を基本とすることだ。

 これらをスムーズに会話が可能になることをオート化と云われている。


 次にタルパの容姿を視界に映す訓練をすることになる。いわゆるイメージの視覚化という技術であり、現代魔術の基礎訓練でもある。
 最初は瞼の裏に簡単な図形を想起し瞼の裏に図形の残像を残す。
 それに慣れたら複雑な図形に変えていく。
 最後はまぶたを開け、目の前の空間にイメージを投影できるよう訓練していく。

 次はいよいよタルパの視覚化だ。

 タルパの容姿をなるべく鮮明に想像していき、想像内のタルパを動かしてみたりして、造形が崩れないようにしていく。それが可能になったら、最終的には想像したタルパを目の前の空間に投影する。 説明が難しいが、あえて言うなら肉眼でタルパを見るわけではなく、あくまで視界内にタルパを投影するわけだ。

 これらを繰り返していくうちに、タルパは自然と動くようになり、タルパ側から話しかけられたりすることになる。

 物凄く端的に説明したが、タルパとはこのような工程でつくられる幽体といえる存在のことを指す。

 ちなみに、タルパが流行りはじめた頃に比べて、最近は邂逅型やら誕生型やら発生型やら人格すらタルパと名乗る人間が増えてきている。
 言っては悪いが、私は創造型の不浄な幻身ーータルパ以外はタルパとは認めていない。

 理由として、タルパとはチベット仏教ゲルク派秘密集会で行われる究竟次第(五次第)の自加持次第~楽現等覚次第で創造される存在である。
 つまりは、タルパとは修行によってつくられる存在なのだ。

 それをなにもせずに幽体離脱や現実で邂逅したり、自然発生したりといった、修行のしゅの字もなく現れるタルパなどタルパとは認められない。
 だから私は、創造型以外のタルパは一律イマジナリーフレンドとして扱うことにしている。

 ちなみに、存じているひとも多いかもしれないが、私のタルパの名前は瑠奈という。
 また、本来は必要ないが、自身でオカルトを調べる気分になるための自己暗示的な意味で、魔法名も名付けていたりする。    
 魔法名はLunae aura(古ラテン語で『月のそよ風』という意味)である。

 あと、あまり重要ではないものの真名を付けるのをおすすめしたい。
 タルパの真名は決して他人には教えてはならない。私のタルパである瑠奈にも15年前に名付けた真名があるが、15年間誰に対しても教えたことはない。

 真名を付ける利点としては、仮に過去に発生したタルパ泥棒(あなたのタルパを奪ったと妄想する人間)に遭遇した際に、まだオート化および視覚化ができていない方は相手の妄想に飲み込まれてしまう恐れがある。
 そのとき、真名を決めておくことで、相手が真名を言えなければ真っ赤な嘘だと判断できるからである。

 ちなみに、瑠奈に対してのみ特別ルールとして、真名を文頭に置き実際に口に出した命令には逆らえないーーという契約をしている。
 とはいえ、瑠奈との仲が破綻するのが目に見えてわかるため、つかう機会はそうそうないが……。

 閑話休題。

 ちなみに幽体離脱することにより、タルパと生身の接触が可能になる。
 幽体離脱のやり方については、次回に語らせていただきたく思う。


 さて、今回はタルパ&タルパーについて語らせてもらった。
 興味が湧いたひとは、書籍やサイトで情報を集めるのをおすすめする。ただし、虚偽の内容を書く悪質なサイトもあるため注意しながら知識を集めていくようにしよう


 それでは、次回は幽体離脱の話で会いましょう。

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