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社会に出てからの学歴逆転はどうやって起こるのか

「社会に出れば学歴は関係ない」といった話がある。実際、学歴の順位が就職活動などで逆転される機会はいくらでもある。今回はなぜ学歴と社会的成功度で逆転が起きるのか、その要因の全パターンを解説したいと思う。

①専門化

 実は最初に来るのはこの項目である。大学受験は全科目を穴なく揃えることが求められる。東大のような上位大学はなおさらだ。英語や数学といった特定の科目に関しては東大生と並ぶか上回るといった早慶旧帝の人間は多数存在する。大学に入ると専門化が進むため、意外にジェネラリスト的に全科目を極めるという能力は生きなかったりする。文系よりも理系の方がこの要素は強いだろう。

 理系といえば頭が良さそうな印象があるが、実際の天才的な業績を挙げている人物はMARCH駅弁クラスの人間がかなり多い。子供の頃は2000年代の天才プログラマーはきっと東大とかのすごい人がやっているに違いないと思っていたのだが、そんなことはなかった。

 文系であっても士業はそうだろう。東大法学部であっても司法浪人を繰り返す人間は大量にいたし、一方で中央大の人が一発で受かったりもする。公認会計士試験は東大卒であっても難しいが、一方で高卒でも受かっている人がいる。専門分野に学びが移行することで東大卒であっても簡単に逆転されてしまうのだ。

②働き蜂の原理

 超進学校には必ず落ちこぼれがいる。これらの学校に入るのは東大に入るよりも難しいと思われるが、それにもかかわらず東大に合格できるのは半分である。理由は色々あるが、一つは集団内で下位に入った人間がやる気を喪失してしまうことがある。

 東大卒であっても大学時代にやる気を失い、易きに流れる人間は大勢いる。こうして着実に努力する他大の人間にどんどん差を付けられていく。企業の側も東大の落ちこぼれ層よりも早慶旧帝の上位層の方が遥かに優秀であることを知っているので、就職で逆転してしまうのである。

③実務能力

 ①や②とも関係があるが、社会に出てからの能力は学歴とは大きく異なる。発達障害等の理由で仕事ができない高学歴は無数に存在するし、彼らは簡単に偏差値が下の大学の出身者に逆転されてしまう。学歴が役に立つのは第二新卒までとも言われる。それ移行は実務的な実績の方が大切だ。

 実務能力による逆転が起きやすいのはJTC内部の出世競争だろう。ここは学歴は全く関係がない。そもそも学歴が重視されるのは雑多な世界において相手に対する情報が限られているからであり、職場で普段の働きぶりを観測できる場合は学歴を問う意味がない。

 実務能力は多岐に渡るので、一概に言うことはできない。高度な知的能力を必要とする業務は①と被るだろう。それ以外の要素としては、コミュニケーション能力や体力、それに加えて組織人適性が存在する。また、自分の業界の内容や気風が合っているかという問題もある。実のところ、これが最大かもしれない。

④アクシデント

 人生には「まさかの坂」が存在するという。病気や事故でキャリアが絶たれてしまった場合だ。ここに学歴は関係ない。社会人は長期戦なので、その過程で色々な出来事が発生する。アクシデントを回避できれば自分よりも上の学歴の人間が脱落するのを待って上にのし上がることもできる。

 アクシデントまでは行かなくても、人生でキャリアを積み重ねられることも強みの一つだ。JTCは途中退場に厳しいので、東大に行ったとしても、うつ病になったり、子育てで離職したりすればそこで試合終了である。その分、相対的に他の大学の出身者が逆転できるわけである。 人生のマラソンにおいて、優秀なランナーであっても転倒すれば一気に順位は下がってしまう。

 なお、これは出世競争だけではなく、就職活動の段階でも発生する。東大の場合は地方出身の学生が多いので、一定の割合で学生時代に持ち崩してしまう人間がいる。筆者の周囲にも東大卒でありながらコールセンター等の進路を余儀なくされている人間もいる。東大卒であっても、一度新卒カードを失うと、せいぜい三流大学くらいの価値しか無くなってしまうのだ。

⑤レールを外れない

 学歴が経済的成功にダイレクトに関わるのは基本的にエリサラの世界の話だ。それ以外の業界の場合はそもそも学歴という参入障壁が存在しないことが多い。エリサラとは全く違う世界で経済的成功を遂げた人間は枚挙に暇がない。例えばZOZOの前澤友作は高卒である。

 基本的に高学歴ほどレールから外れた成功に対して心理的抵抗が大きい。高学歴は高確率でエリサラとして安定した収入が得られるため、チャレンジした時に失うものが多すぎるのだ。これは行動経済学でも実証されていることだ。人間は利得があると確定したくなり、損失があると一発逆転を狙いたくなる。一流大学卒はリスクを取らない人間が多いので、能力に比して大成功する人間も少なくなる。高学歴はなんだかんだ才能がある人が多いが、それを存分に発揮することよりも安定した人生を送ることを選ぶのである。

学歴を逆転するには

 これらの事情を踏まえると、学歴で付けられた差は頑張れば逆転可能である。

 まず最初に可能なのは専門化である。理系の場合はこれがかなり有効だ。地方旧帝大や駅弁大であっても理系院卒は引く手あまただし、学業や就職活動を頑張れば一流企業に入ることも夢ではないだろう。文系であっても、公認会計士などの資格試験を頑張ればやはり一流大卒には逆転することができる。士業には伝統的にこのような一発逆転カルチャーが存在すると思う。

 これ以外の一般就職市場においては学歴の存在が無視できない。学歴フィルターの存在も大きいだろう。ただ、これもなんとか頑張れば逆転は可能である。積極的にOB訪問を行ったり、語学のスコアなどを揃えればサボっている上位大学の人間を簡単に追い越すことができる。体育会系アピールも有効だろう。

 一度JTCに入ってしまえば、後は学歴はほとんど関係ない。あとは実力勝負である。職場の東大卒であっても、優秀層は学者や官僚などになっているはずだから、一般企業に就職している層は大したことがないという話もある。営業成績を挙げたり、上司にゴマを擦ったりすれば容易に逆転は可能である。

 これは努力してどうにかなる問題ではないが、上位の大学卒であっても一定数は必ずアクシデントで落ちこぼれていく。ある程度の年齢になると低リスク志向の方が重要かもしれない。不倫をせず、病気に気をつけて、高学歴が転ぶのを待っていれば良いのだ。

 そうしたルートを考えていない人間であっても、一発逆転でなんとか這い上がることは可能である。ハイリスクだし、失うものは多いが、それでもやりたいという人間はいる。

 社会に出てから学歴で付けられた差を逆転するにはこれらの要因に注目して戦略を練るのが最適だろう。

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