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<MBTI比較⑩>ESTJとENTJの違い

 今回はESTJとENTJの違いについて考察したいと思う。両者は共に非常に社会的成功度の高いタイプだ。社交的で、勤勉で、上昇志向が強く、社会的上昇それ自体への執着も強い。16タイプ界隈に多いINFPやINTPといった人々にはあまり好かれないタイプであり、両者に対する揶揄は鉄板ネタだ。

 ESTJとENTJの性質は似ているが、細かく観察すると異なる。雰囲気もしばしば異なるだろう。今回はそんな両者の比較について考えてみよう。

ESTJは主張がなく、ENTJは主張が強い

これは両者の違いとして比較的明確だろう。ESTJはS型であり、環境の順応する。自分の環境に疑問を持たないので、何かを主張しようという思考回路にならない。ESTJはエネルギッシュで声が大きいが、その割に以外にポリシーや意見と言ったものを思い出せない。ある意味で、発言に中身が無いのである。中身があることを言っているときもあるが、往々にして会社の公式見解や有名人の受け売りだったりする。ESTJは議論が嫌いであり、もっと生産性のあることをしたいと思っている。ESTJは権威主義傾向が強いが、それは主張がないからなのだ。「特にこだわりがないので一番売れている商品を買おう」という感覚なのである。

 ENTJは異なる。ENTJはN型なのでそれなりにアイデアマンだ。ENTJはある程度組織的な行動に適性があるものの、やっぱり黙っていられない。自分の主張を実現し、影響力を発揮しようとする。「これからの若手コンサルタントの成長を考える」といった趣旨のセミナーを開いたり、参加するのが好きだし、その中でイニシアチブを取りたがる。こうしたタイプは業界によっては好かれるが、業界によっては激しく嫌われることもある。ENTPとは違った意味で生意気だと思われるのである。

ESTJはガツガツしていて、ENTJは純粋な上昇志向

 ESTJもENTJも特徴として「出世」が挙げられる。確かに両者は出世志向が強いし、実際に出世しそうな人間も多い。ただし、ESTJの出世志向はかなり本能的で、出世に関するなにかしらのマインドがあるわけではない。ESTJは競争心が強く、しっかりしているため、部活のキャプテンなどを任せられるキャラだ。ただし、ESTJの出世志向はそれ以上のものではない。会社組織が出生を是とする環境であり、勝つことがいいことだと考えているため、脳筋で頑張るのだ。ESTJの本質とは勝ち気な頑張り屋であり、それがたまたま「会社」という環境と合致していたと考えればいい。

 ENTJは遥かに確信犯的だ。ENTJは出世それ自体が目的であり、最終目的は自分の人格や能力を評価されて称賛を浴びることだ。N型の特性として、ENTJは出世それ自体をメタ的に考えている。ESTJが「出世したいし、会社の言う通りに頑張る」なのに対し、ENTJは「会社の言う通りにしておけば、出世の可能性が広がる」と考える。INTJほどではないが、命令の実行までの間に1ステップ挟まるのがN型だ。

 両者の違いはタスクの違いにも発揮される。ESTJは環境で良しとされることを頑張り、それ以上の自意識はない。ENTJは色々な分野に手を出し、その度に自分のパワーと能力を認めたがられる。仕事にせよ、趣味にせよ、交友関係にせよ、ENTJはどことなく誇示しているような印象を受ける。

自己像のないESTJ、明確な自己像の存在するENTJ

 ESTJはこれといって自己像がない。ESTJが健全な一市民であり、一社員であるのは、そうしなければいけないと素朴に思っているからだ。それ以上の意味はない。

 ENTJはNJ型の例に漏れず、理想とする自己像がある。優秀な人間として賛美されたい等の内容だ。こうしたNJ型の振る舞いはしばしば反感を買うときがある。善行をやっていても偽善に思えるのだ。普段はにこやかな好青年であっても、どこか芝居がかっているのではないかと思わせるところがある。「やらない善よりやる偽善」というように、こうした態度は決して否定されるべきではないが、かすかな違和感を感じる者(INFPとか)は多いかも知れない。

 例えるならば、「好き嫌いはいけないから」食べ物を残さないESTJに対し、「好き嫌いのある人間と思われると人格まで疑われるから」食べ物を残さないENTJといったところか。

ESTJは声が大きい割に目立たない、ENTJは基本目立つ

 ESTJは意外に目立たない。声が大きいし、その場を取り仕切りたがるし、しばしば見た目もイカツイのにだ。スポーツ選手を見ていても、ESTJと思われる人はあまりメディアで爪痕を残していない。ESTJという人種は環境に染まるし、目立ったユーモアを言うこともないので、記憶に残りにくい。ESTJは典型的なソルジャーであり、外れた行動を一切しないのだ。「量産型」といえる。

 これに対してENTJは必ずと言っていいほど目立つ。ENTJは色々な分野に手を出して評価されたがるし、主張も激しい。それ以上に重要なのが、そもそもENTJは目立ちたがるという点だ。この点はENTPと全く同じである。ENTPほど奇妙な行動を取らないのでメディア向きではないが、職場のような場所ではかなりの存在感だろう。比較的自己主張が少ない出来杉君タイプのENTJですら、うるさいESTJと同じくらいには目立つ。

ESTJは保守的、ENTJは革新的

 これも一般にしばしば指摘されることである。ESTJは細々といた管理には向いているが、新しいアイデアには興味がない。ESTJは20歳すぎるとあまり新しいことに挑戦しなくなるように見える。もちろん趣味やレジャーに手を出す人間は多いのだが、かなり月次だったり、20歳以前の好みの延長であることが殆どだ。当然仕事面においても同様だ。ESTJは組織に忠実だが、それ以上の出し物はない。新規の企画や情報発信に関する分野は彼らが苦手とする数少ない分野となるだろう。

 ENTJは一定程度は革新的だ。ENTPには負けるが、それなりに想像力を働かせるタイプなので、会社組織ではバリューを発揮できる。ENTJは新しい考え方に批判することは多いが、ESTJのように全くの無関心ということではない。賛否はともかく、話自体は聞いている。本当の意味では保守的なのだが、一般社会ではENTJは革新的なタイプと考えられるだろう。

ESTJはどこにでもおり、ENTJは一部に集中する

 16タイプの界隈を見ているとにわかには信じられないが、世の中にSJ型は非常に多い。全人口の半分弱がSJ型という統計もあるようだ。ESTJはかなり頻繁に見られる性格タイプであり、世の中のあらゆるところに分布している。もちろん「社会的によろしくない」分野には少ないだろうが、普通に一般社会で働いている分にはあちこちに発見されるタイプである。

 ENTJはこれらと比べると少ない。INTJほどではないが、高学歴の業種に偏っているように見える。ENTJは学業成績が良いし、エリート志向も強いからだろう。また、高学歴エリートの要素が強まる環境ほど、ENTJは肯定されやすい。外資コンサルに内定するようなタイプはENTJばかりだ。伝統的な日本企業の受けは並みである。ENTJは一部の界隈に好んで生息しているように思えるだろう。

まとめ

 今回は何かと称賛されがちなESTJとENTJの差異について論じた。両者ともに出世度が高いが、ESTJはロボット的なのに対し、ENTJは芝居がかったところがある。ESTJは優等生だが、ENTJは優等生になりたいのだ。ESTJはしばしば体育会系に例えられ、ENTJは意識高い系に例えられる。ただしENTJの意識高い系はENFJやENFPとは異質な、非常にガツガツしたものだ。

 どちらも非常に優秀であることは間違いないが、ESTJはどこの環境にもいるのに対し、ENTJは高学歴エリートの印象が強い。ESTJのカミナリ親父は多いが、ENTJはちょっと想像付かない。

 ENTJが目立つという話を書いたが、1つ例外が存在する。それは政治家だ。政治家は目立つこと、自己主張することが当たり前なので、ENTJの特質は前提条件だ。ENTJはだいたい中道で月並みな政治路線を取りたがる。ENTPのように奇をてらって目立ちたがる素振りはないし、INTJのような思想家的なところもない。政治家として出世するのが目的であり、個人的なこだわりは強くないのだ。東大⇒官僚⇒あまり目立たない大臣、といった経歴の人物はENTJがかなり多いのではないかと思われる。

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