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競争社会(意味が分かると怖い話)

 俺は会社の出世競争に疲れ果ててしまった。競争、また競争。勝っても競争。負けたら地獄。いつまでこんなことをやればいいんだろう。中学受験、大学受験、就活、これまで嫌というほど競争に耐えてきたのに、まだ競争なのか。もうコリゴリだ。やってられない。

 俺はあるとき燃え尽きてしまって、自殺を決意した。近所のホームセンターでロープを買ってきて、首つり用の縄を作り、自分の首にかけた。すると、目の前に神が現れた。人生の最後だ。ちょっと聞いてみたいことがある。

「神様、人間は死んだら来世があるんでしょうか」
「ああ、ある」
「でも、死んだ後にカエルやイモムシになるのは嫌です。次人間になれるのはいつになるやら」
「そこは大丈夫だ。人間は人間にしか生まれ変わらんよ」
「なんだ、安心だ」
「でもせっかくの命、安易に手放さないほうがいいぞ」
「自殺者に対するペナルティはあるんですか」
「いや、フェアだ。どんな死に方でも死んだ仕切り直しだ」
「次も人間になれるんだから、来世も安泰です!次は美女に生まれ変わりたいな!」
俺は思い切って首を吊った。

 あれからどれくらいの月日がたっただろうか。俺は輪廻転生を繰り返している。競争に次ぐ競争。まさか来世の競争がこんな過酷とは思わなかった。安易に人生を手放すんじゃなかったと後悔している。せっかくゴールが見えかかった時も、ライバルのだれかが優勝してしまう。そもそもレースに参加できるだけでも何百分の一の確率だ。あと何回転生すれば昔のような学校に行って、うまいものを食って、くだらない世間話をできる身分になれるのか。あと一万回、一億回、いや、もっと多いだろう。平凡で月並みだと思い込んでいる日常も、実は勝ち組の贅沢だったのだ。













答え
 主人公は転生して精子になっている。確かに人間といえば人間だ。精子が受精に成功するには何億という精子の競争の中で一等賞を勝ち取らねばならない。あとは無残に野垂れ死んでいくだけである。あなたという存在は本当に奇跡の産物なのだ。

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