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優秀な同僚(意味が分かると怖い話)

 介護の仕事に就いてもう4年にもなろうとしている。ようやく仕事も板につき、もっと上を目指して自己研鑽に励みたくなる年頃だ。

 同僚にヤスダという奴がいる。こいつはなかなか優秀な奴だ。介護施設という場所柄、モノをなくしたり、排せつで失敗してしまう利用者さんが後を絶たない。でも、ヤスダがいるとどうにかなったりする。ヤスダは機転も効くし判断力だってピカイチだ。この前の火事の時だってヤスダは一目散に利用者さんを外に避難させていた。

 なんでお前はそんなに優秀なんだと聞いてみると、「避難訓練もそうだけど、何が起きるか事前にシミュレーションしていると、いざといった時に的確な対応ができるんだ」と言っていた。さすが、できる奴は違う。この前、利用者さんの手に引っかき傷ができた時も「ここの外装がはがれてトゲになっているからじゃないか」と指摘したのもヤスダだ。彼のようになりたいと俺は思うし、今度から模範にしてみたいと思う。













答え
 ヤスダは自分でトラブルを作り出し、自分で解決することによって周囲の評判を勝ち取っていた。利用者のモノを隠したのもヤスダだし、外装をはがしたのもヤスダだ。火事をおこしたのもヤスダだ。利用者が排せつに失敗するのもヤスダが下剤を混ぜているからだろう。「俺」もヤスダと同様に自作自演のトラブルを起こしていくのかもしれない。

 なお、こうした話は実際にも起こっている。川崎老人ホーム連続殺人事件では犠牲者三人の第一発見者となった介護士の男が犯人だった。こちらの場合は自作自演がエスカレートして殺人にまで至っている。

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