見出し画像

若返り(意味が分かると怖い話)

 祖父はもう85歳になる。いまだに元気で持病もなさそうに見えるが、それでも衰えは隠せない。足腰は弱くなったし、趣味のゴルフもしんどくなってきたみたいだ。何をやるのもスローペース。昔はあんなにアクティブだったのになあ。

 僕はバイオ研究者の友達に聞いて、最新のアンチエイジング物質を手に入れることができた。まだ実験段階だけど、これを服用すると肉体の細胞を活性化して20代や30代のように戻せるらしい。僕は友達が競馬で借金を作っていたことを知っていたので、借金の肩代わりと引き換えに物質を譲り受けることができた。

 僕は早速友達にもらった物質を祖父に飲ませてみた。祖父はどんどん若返る。数週間も服用を続けたら、なんと30歳のような見た目になった。これじゃお父さんよりも若くなってしまう。祖父の肌にはつやが戻り、元気いっぱいだ。

 それから二年が経った。祖父は末期ガンで苦しみながら死んでいった。本当に過酷な闘病生活だった。せっかく若返ったのに、こんなはずじゃなかった。いや、違う。僕が祖父を若返らせなければ、祖父は今でも元気で生きていたかもしれないのだ。














答え
 85歳の人間の体内にはだいたいガンがあるらしい。普通、高齢者のガン細胞の増殖のペースはゆっくりなので、ガンが進行する前に寿命が来て死ぬ。ところが祖父は若返ってしまったので、ガン細胞も活性化してしまい、末期ガンとなってしまったのだ。
 これは最近のアンチエイジング研究でも懸念されていることらしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?